中国の香港

 「一国二制度」をもじって「一票二制度」という言い方がある。中国では乗車券や入場券に独自の料金課徴法を採用している。中国人と外国人は同じ飛行機を利用しても異なる料金が徴収される。これは高額の料金を支払わされる方に不平不満を感じさせる。二重価格の差別料金課徴は、解放中国にふさわしくない制度である。中国のWTO加盟希望や中国の国際化にしたがって急速に是正されつつある。

 乗車券、航空券、乗船券は97年夏までに同一料金制が採用されるようになった。しかし、故宮博物館はじめ多くの観光地において「一票二制度」は依然存続している。中国はしだいに内外の利用客に対する異なる料金の徴収を廃止する方針であるが、これが完全に実現するまで、名所旧跡を訪れる外国人および海外中国人は、現地中国人より高い料金を徴収されつづけるのである。

 1997年7月に香港は祖国中国に返還された。香港は特別行政区となり、、50年間の自治を認められた。そこで、香港の住民は香港特別行政区の身分で中国を訪問することになるが、各種の施設や交通機関を利用する場合、中国人料金が適用されるようになった。どこでも一般中国人と同一料金所で入場券や搭乗券を求める資格ができ、高い料金を支払う必要がなくなった。目下、香港人が利用しなくなった料金所では料金表の「改造」が進められている。すべての料金表を一度に換えるのはもちろん困難なことである。数多くの臨時料金表は応急措置が取られる程度でそのまま引き続き利用されている。

 しかし、このような臨時料金表は、見栄えは別として、きわめて効果的な働きを発揮している。中国観光に訪れる香港の住民にとって、香港が中国に返還された事実はこのような遊楽活動によっても確実に再認識させられる。また、一般中国人は、外国からの観光客用料金所の出札窓口から香港の標示が消されているのを目にする度に中国の香港という現実を再確認することになろう。

林善義、8 January 1998


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