アメリカの農業

 アメリカ農業の地位は19世紀中ごろからその重要性を保ちながらも低落する方向で発展する。これは農業に従事する人口の減少として現れる。しかし、農家の数が減少するが、20世紀前半までの農耕地面積は拡張しつづける。農業は労働集約農業から資本集約農業へと移行し、ビジネスとしての農業が経営されるようになる。農企業として経営される農業は機械化および科学的栽培の手法が取り入れられる。土地保有や所有関係も変化して集積農業の進展をみる。主な農産物は、従来のトウモロコシや小麦のような穀物の栽培が引き続き拡大されるが、なかには、たとえば綿花とタバコが大豆の栽培に転換されるケースも見られる。これは市場価格の変動や人々の食習慣の変化が重要な原因と考えられる。

現代アメリカの主な農作物
  • 大麦(Barley)
  • トウモロコシ(Corn)
  • 綿花(Cotton)
  • ピーナッツ(Peanuts)
  • 米(Rice)
  • 亜麻(Flax)
  • ヒマワリ(Sunflower)
  • 牧乾草(Hay)
  • 燕麦(Oats)
  • ライ麦(Rye)
  • 小麦(Wheat,All)
  • デューラム小麦(Wheat,Durum)
  • その他小麦(Wheat, Other)
  • 冬小麦Wheat, Winter)
  • 大豆(Soybeans)
  • 食用乾燥豆(Dry Edible Beans)
  • ポテト(Potatoes)
  • スイートポテト(Sweet Potatoes)
  • タバコ(Tobacco)
  • サトウモロコシ(Sorghum)
  • 砂糖作物(Sugar Crops)
  • SOURCE:USDA - National Agricultural Statistics Service

    アメリカの農業人口
    項目 1900 1950 1960 1970 1980 1990
    農業人口 29,875 23,048 15,635 9,712 7,241 6.166
    農業人口/総人口(%) 41.9 15.3 8.7 4.8 3.3 2.5
    出所:米国商務省歴史統計;単位:1万人;1980年の数字は1969年定義

     大規模農業生産はプランテーションにおいて展開された。南部のプランターは所有地を直接経営した。白人の農場監督(1850年現在18,859人)が奴隷の管理に雇われた。「伝統的なツールで伝統的な仕事をこなす」ことで農業生産力の向上と農作物周期の加速は見られなかった。

     農業経営に新しい技術が適用されるのは1850年以後のことである。南北戦争後のアメリカ農業は自作農が新しい機械と技術を採用して経営する時代へと移っていった。(ADC)

    農業生産の機械化
     ヨーロッパにおいて早くから機械化農業が重要視されたが、その本格的展開はアメリカにおいて実現した。蒸気犂、播種機、中耕機、飼料裁断機、脱穀機などが利用された。1840年代からマコーミックのリーパー(機械刈り取り機)やプラウ・ドリル・スレッシャーなどが発明された。20世紀になると、蒸気エンジンに加えて、ガソリン・エンジンが農業用に開発され、1920年代において電力機の作業体系が完成した。その後の30年間に大半の農村が電化されるにいたった。

     マコーミックの収穫機は刈り取りの機械化による農業生産性の向上を可能にした。「マコーミックはリッチモンドで1847年までに数百台の収穫機を製造したが、地域を限定して特許実施権と製品販売権を譲渡したので、彼の収穫機は直営工場製と提携企業製の二系統が農民に提供された・・・・・1848年シカゴに新工場が建設され、彼の本拠となった。この工場では蒸気機関が採用され、互換性部品が製造された。コンベアの流れ作業で組み立て生産体制により、1848年のみで1.500台もの収穫機が製造された。自社での量産体制が確立されるとともに従来の特許実施権と地域専売権の譲渡を一切やめることにした」(大河内暁男『経営史講義』p.88)


    Source:nass.usda.gov

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