アメリカの商工業

アメリカの工業化
 アメリカは19世紀において工場工業時代に突入する。熟練労働による小規模経営から脱皮する工場経営が現れる。蒸気力を使い、量産経営が採用される。とくに標準規格の製品や部品交換の製品が量産されるようになる。20世紀にはいると、科学管理法の強化、流れ作業の組み立ての量産体制が確立される。従来の日用品生産から生産財、耐久消費財、合成品などの生産が発達する。これによってアメリカは世界の工業大国として注目されるようになる。この間にアメリカの工業製品として自動車、洗濯機、掃除機、ラジオ、テレビ、電話、ミシン、缶詰、合成繊維などが出そろう。

アメリカの主要民生工業製品(代表メーカー)
耐久消費財洗濯機、クリーナー、冷蔵庫、空調機、照明器具(GE)、ミシン(Singer)
化学製品合成繊維(DuPont)、石油(Chevron)、医薬品
電子製品電話、ラジオ、TV(GE)、コンピュータ(IBM,Apple)
輸送手段鉄道車両(Pullman)、船舶、自動車(Ford,GM,Chrysler)、航空機(Boeing)

アメリカの巨大企業
19世紀スタンダード石油、アメリカンタバコ、アメリカン砂糖精製、モルガン商会
20世紀USスチール、GE、DuPont、フォードモーターズ、GM、クライスラー

 20世紀に入ると、鉄鋼を中心とする重工業が発達した。鉄鋼とともに自動車、航空機、機械などがアメリカを象徴する産業となる。巨大企業集団も結成され、資本、製品、市場などで優位を占めるにいたる。

 今日のアメリカ巨大企業は営業と持株の両方を運営するほか、多国籍企業としても活動する。巨大企業集団は19世紀末から結成されるようになった。企業結合は企業連合(pool)、持株会社、トラストの形態をとって現れたが、これを抑止する禁止法(Sherman Antitrust Act,1890)も制定されるにいたった。巨大企業を告発する案例も頻発した。初期の鉄道輸送会社の連合行為に対して独占禁止法(Interstate Commerce Act,1887)が発動された。また、スタンダード石油、コットン・オイル、ウイスキー、砂糖、鉛などのトラストにたいしてシャーマン法が適用された。とくに巨大化した持株会社であるUSスチールの解体(dissolution)やアメリカンタバコの再編(reorganization)を最高裁が1911年に支持した例が注目される。

アメリカ製造業生産指数
1860 1870 1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1967 1970
16 25 42 71 100 172 15 19 25 45 60 100 105
出所:『アメリカ歴史統計』U斎藤・鳥居監訳;説明:製造業による付加価値生産1899=$4,647m;1967=$261,984m

アメリカの上位製造業の主な業態
19世紀鉄道、食品、燃料、電灯、鉄鋼、繊維、機械
20世紀石油、鉄鋼、交通機材、食品、化学品、機械、電子機械、ゴム、合金、タバコ


産業別国民所得
年度 農業 鉱業 製造業 建築 輸送・公益 政府 商業・サービス 合計
1869-1879 20.5 1.8 13.9 5.3 11.9 4.4 42.1 100.0
1919-1929 15.2 3.3 22.2 3.0 11.0 7.9 37.0 100.0
時価、%

 チャンドラーの説によると1850年代から1880年代のインフラ整備により大量生産および大量流通に必要な条件が整うようになった。主な製造工業(機械的生産・精製蒸留・金属精錬)において工場制度の拡張が見られ、科学的管理法が導入された。
 大量生産の進展は機械の性能をよりよく発揮できる製造分野で特に顕著であった。製造工程において人間労働の代わりに機械を使用するだけでは一定の限界があった。進歩の目覚しい産業は新しい技術の導入による生産工程の変化が観察される。溶鉱・鋳造・精錬・蒸留などの業種は機械の採用で大量生産が容易となる。紡績工業と製糖工場を比べるとわかるように製造業間ではことなる技術が適用される。金属製造業のようなボリュームのある素材や製品を取り扱う業種ではとくに技術や組織のイノベーションを必要とする。
 大量生産は規模と速度の賜物であると見ることができる。

アメリカの鉄道敷設マイル数
1830 1840 1850 1860 1870 1875 1893 1900 1910 1916 1920 1925
40 491 1,261 1,500 5,658 1,606 3,024 4,894 4,122 1,098 314 644


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