都市化と経済生活

経済の変容

アメリカの総人口に対する都市と農村の人口比率
地域 1790 1850 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960
都市 5.1 15.4 39.6 45.6 51.2 56.1 56.5 59.6 63.1
農村 94.9 84.6 60.4 54.4 48.8 43.9 43.5 40.4 36.9
出所:U.S. Census Bureau


人口の都市集中

 1790年に行われた最初の人口調査によると、都市人口は総人口のわずか5%しか占めなかったが、この数字は50年後の1840年において10%台に上昇した。しかし産業の発展を見たにもかかわらず1900年にいたっても総人口の6割は農村居住者であった。都市人口は1920年ごろに農村人口を凌駕する。これより都市生活はアメリカ経済の重要な部分を構成する。さらに農村部に居住するアメリカ人はすべて農民であるわけではない。農業と非農業の従事者に分けられる。また、メガ都市のほか郊外に住居を構える人たちも増大するが、彼らはスモールタウンの住民とされる。

 アメリカの大都市は5大湖南岸都市、大西洋岸都市、太平洋岸都市、南部都市の顕著な発展が注目される。1910年頃から人口50万以上の都市が5大湖南岸にも形成するようになり、20世に入ると100万の人口を有する都市の数が増える。ニューヨーク、フィラデルフィアそれにシカゴなど早く発展した都市のほかに西部のサンフランシスコ、ロサンジェルスや南部のヒューストンなど知られている。

アメリカ多人口上位都市
都市名 1750 1860 1900 2000
ニューヨーク 13,300 1,080,330 3,437,202 8,008,278
フィラデルフィア 13,400 565,529 1,293,697 1,517,550
ボルチモア c.100 212,418 - -
ボストン 15,731 177,840 560,892 -
シカゴ - - 1,698,575 2,896,016
チャールストン 8,000 -- -- -
ニューオーリンズ -- 168,675 -- -
セントルイス - -- 575,238 --
ヒューストン -- -- -- 1,959,631
ロサンジェルス -- -- -- 3,694,820
出所:R.B.Morris and J.B.Morris ed.,Encyclopedia of American History, Harper & Row, 7th edition, 1996;2000:Bureau of the Census
説明:単位(人)

人口から見る現代アメリカの10大都市(順序は人口数による)
ニューヨーク、ロサンジェルス、シカゴ、ヒューストン、フィラデルフィア、フェニックス、サンディエゴ、ダラス、サンアントニオ、デトロイト (U.S. Census Bureau, Census 2000)


産業都市の発展

 20世紀に入るとアメリカでは、農業の発展は人口の顕著な減少を伴うが、都市への人口集中は産業都市の発展をともなったことが観察される。繊維業のニューイングランド、鉄鉱業のペンシルバニアなど東部の工業ベルト都市では産業の衰退を見たが、5大湖周辺とオハイオ川沿いの工業ベルト都市は産業の繁栄を謳歌する。シカゴ、デトロイト、クリーヴランドの発展がとくに顕著である。南部ではセントルイスやカンサスなどにおいて人口が減少するが、代わってアトランタ・フェニックスそれにツーソンなどが急速に発展する。西部ではソルトレークやデンバーなど遅いベースで発展する都市もあるが、リノ・ラスベガスはギャンブル産業で急成長する。太平洋岸のサンフランシスコ湾岸都市や南カリフォルニア諸都市が発展する。とくにロサンジェルスは東部のニューヨークに対抗できるほどに成長する。

 ニューヨークは、その衛星都市ニューアークとともに東部沿岸の唯一の港湾都市として20世紀に入って急速に発展した。1890から1910年の間に都市の規模はほぼ2倍になった。主に商業、金融が結合した複合港湾都市として機能するが、製造業も発達し、被服業やタバコ加工業、それに印刷業、製靴業、ガラス製造業などが栄えた。

 アメリカのデトロイトやクリーヴランド、シカゴといった都市が発展し、国内市場の中心地から産業集合都市へとその機能を変容させていった。その背景には、オハイオ州、インディアナ州、イリノイ州、ミシガン州、ウィスコンシン州などでの工業技術の発展があった。ロサンゼルスのように比較的小さな町が1910年頃までに大都市へと急成長する例もあったが、これはアメリカ西部、とくにカリフォルニア州の人口の全般的な急増を反映したものである。

 クリーヴランドとデトロイトは、1825年のエリー運河開通以後、流通の中心地として大きく発展した5大湖沿岸の港町であり、その発展ぶりは確固たる基盤に裏打ちされていた。デトロイトの成長を支えたのは自動車産業の発展である。クリーブランドは国内流通の拠点の一つだが、鉄道の結節点であるにもかかわらず、後背地がもともと狭く、アメリカ随一の石油精製地として名をはせるにとどまった。

 シカゴはアメリカの中でもずばぬけた商工業の中心地として発展した。1880年までのシカゴには全米の主要な精肉業者、缶詰業者、穀物販売業者、材木商が集中した。また、スペリオル湖の資源を基盤にした鉄鋼産業により中心都市として発達し始め、製造業の成長を基盤に多様な産業が育っていった。ニューイングランドから移転してきた製靴業、ドイツ系移民の醸造業やユダヤ人の仕立て屋、電話工場などが続々と集まる場所ともなった。


都市経済の発展

 都市生活は産業、技術、交通、通信の発展を集約する。国内総生産の増大と生活様式の変化それに生活の機械化で都市住民の生活改善がみられ、これが経済発展の支えともなった。生活の安定と向上により高度な生活が求められるようになった。これを保証する公共施設やインフラが整備されるようになった。都市内の交通は遠距離交通とともに整備され、上下水路やガス、電気設備が整うようになった。家庭内の電化生活が始まり、家電製品、健康器具など耐久消費財が普及するようになった。マイホームとマイカーの所有率も上昇した。

 流通システムも発展した。1850年代に入り、都市において専業小売商が登場し、現金販売や定価販売が営まれた。60年代では都市においてデパートおよびチェーンストアが経営されるようになる。加工製造の発達で多くの産業都市が栄えるが、20世紀に入ってアメリカの都市化が一層進展すると都市は1大消費市場を形成するにいたる。

アメリカの消費者物価指数
年間変化率1ドル 1990 1995 1999 2000 2001
全項目 5.4 2.8 2.2 3.4 2.8
食品 5.8 2.8 2.1 2.3 3.2
住居 5.4 3.2 2.9 3.3 3.7
医療 9.0 4.5 3.5 4.1 4.6
燃料 22.8 -0.9 2.1 50.5 -3.5
電気 2.4 2.3 -0.7 1.6 7.2
data from BEBA,US Dep. of State; CPI (1982-84=100)


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