台湾語の口語と文語
口語としての台湾語

 言語には口語と文語が併立する。台湾語の口語は話し言葉として共通語の役割を確立していが、文語は書き言葉としての共通性にかける。口語は社会発展や交通事情の改善で往来も容易となり、人々の交流が深まって、話し方の違いがなくなり、共通言語となっている。漳州訛りと泉州訛りを混ぜたいわゆる”漳泉濫“を使用する人口も多い。

 台湾語は独自の表現法があり、言い回しがある。日常生活や生活環境に対応する表現や社会活動に対応する言葉は豊富多彩である。ここでは若干の語彙を通して話し言葉のユニークな特徴を見るとしよう。

台湾語日本語中国語
呵咾(o-ló) 褒める讚美
水雞(tsuí-ke)カエル青蛙
胡蠅(hôo-sîn)蒼蠅
愛睏(ài-khùn)眠い想睡
啄龜(tok-ku)転寝打瞌睡
做夥(tsò-hué)一緒に一起
食菜(tsia̍h-tshài)素食吃素
淺拖仔(tshián-thua-á)スリッパ拖鞋
歕雞胿(pûn-ke-kui)ホラ吹き催牛

足好(tsiok-hó)•真好(tsin-hó)
 台湾人は真好も、足好も使う。私の若い頃は、足好が多用され、現在は、真好も使われるようになった。台湾語より、中国語の達者な人が増えたからにほかならない。
 真と足は同義ではない。岩波国語辞典によると、真はうそ・偽りでないこと、足は十分であるという。台湾語も両者には微妙な違いがあるが、人によって話す語感が異なることになる。昔の人間は足るを知る人が多い。だからではないが、足の好きな人が多いようである。
 tsiok-hó(足好)のほかにも、tsiok(足)+形容詞または名詞の台湾語が多く存在する。 足貴(kuì),足賢(gâu),足戇(gōng),足慢(bān),足擽(ngiau),足腥臊(tshenn-tshau),足愛睏(ài-khùn).........
 しかし、名詞の内容には要注意だ。例えば親戚や友人の前に足を付けてはいけない。足gâu(賢)tsò--lâng(做人)とは言っても、足朋友(pîng-iú)とは言わない、足親者(tshin-tsiá)または足親戚(tshin-tshik)とも言わない。この場合、十分という説明は無用である。足少朋友(tsiok-tsió pîng-iú)や足親親情(tsiok-tshin tshin-tsiânn)なら立派な台湾語だ。

認真(jīn-tsin)・頂真(tíng-tsin)
 ジンチンとは本気、真剣の意味であるが、テェンチンとは慎重、几帳面、丁寧を意味する。
 真偽のチンを認めるということはまともな賞賛対象や行為に適用する言葉である。
一方、真実の窮みを意味するテェンチンは慎重な性格や真摯な態度の表現に適用する言葉である。
この2語はとくに人間の性格や行動の評価に使用される。

次の比較表でこの二つの言葉の語感を確認して見るとよい。

真剣な性格 senn-keh jīn-tsin(センケェ・ジンチン) 慎重な性格 senn-keh tíng-tsin(センケェ・テェンチン)
真剣な態度 jīn-tsin--ê thāi-tōo(ジンチン・エ・タイトォ) 真摯な態度 tíng-tsin--ê thāi-tōo(テェンチン・エ・タイトォ)
まじめに書く jīn-tsin siá(ジンチン・シャー) 丁寧に書く tíng-tsin siá(テェンチン・シャー)
まじめに書く siá-jī jīn-tsin(シャージー・ジンチン){ 丁寧に書く siá-jī tíng-tsin(シャージー・テェンチン)

文語としての台湾語

 台湾語の書写は、漢字とローマ字のニ方式が存在する。前者は構文法に使われるが、後者は発音の標記に使用する。
 台湾語の漢字は、現代中国語と異なって古代漢字を使ったり、普通話の簡体字と異なって繁体字を使う。日本語のように漢字を訓読したりもする。台湾語の使用する漢字は、中国語と異なることもある。漢字のない台湾語の発音を表記するため非漢字の字を創作する者もある。教育部は700字の「臺灣台語推薦用字」を順次公表して使用規範を示した。さらに教育部は台湾語の常用詞辭典を刊行し、書写法の統一を推進している。

 台湾話と中国語(普通話・華語)が異なる漢字を使用する例を次に示す。
啥物(什麼) / 啥潲(什麼事) / 𨑨迌(遊玩) / 圓仔(湯團) / 路用(用處) / 空缺(工作) / 食頭路(就職)/ 秋凊(爽快) / 淺拖仔(拖鞋) / 塗跤(地上) / 腹肚(肚子) / 毋通(不要)  ()は華語または国語。普通話は簡体字を使うので、什么,汤团,用处などと書く。

   多くの人が漢字で台湾語の文章を書いている。しかし、私は台湾語の文章を読んだことがない。読める自信もなかった。私の台湾語は文字を使わない方式で身についた自然言語である。生活に何の支障もないこともあり、台湾語の書物も身近に存在しないこともあって台湾語の文書にはしたしみがない。この状況は私の同世代の共通事情であるが、もっと若い後の世代はもっと台湾語を知らない。若い世代の人々は中国語やその他の外国語に長けているが母語の台湾語を日常的に使用しない。台湾語の存亡が懸念される所以である。

 教会関係者はローマ字の聖書や文書を利用するが、ローマはもともと漢字の読めない読者のために開発したものである。教会ローマ字は長い間台湾語の書写ツールの地位を占めしてきたが、台湾の教育部は基準化のためローマ字による台湾語の発音表記法を施行した。台湾閩南語羅馬字拼音方案が制定され、ローマ字による発音表記の手段を提供している。目下、ローマ字は漢字の代替や補足に利用されている。台羅の拼音の表記は、台湾語の話し方や発音によって綴らなければならない。

 台湾語の書き方は全漢字、全ローマ字で書写する原則がある。次にそれぞれの用例を示す。

*全漢字の書写例

 阮兜佮厝邊周圍的人攏講台灣話. 我嘛按呢學會曉講佮聽台灣話. 無人咧寫台灣話, 按呢我嘛幾若十年毋捌寫台灣話,袂曉寫台灣字. 阮的學生時代是國民黨執政時期, 實施中國教育. 佇學校禁止學生講台灣話. 摻台灣話嘛袂使講,就免想欲看啥物台灣字寫的冊啦.
 學校教育呼我會曉講佮聽中國話,嘛會曉讀佮寫中文. 嘛捌一寡中國的人情世事佮中國人想代誌的方式. 一藜時陣, 我捌佇中國烏白走. 捌去中國東西南北袂少所在. 佇北京接受普通話的考驗. 佇廈門我會得有通發揮台灣話的才能,但是無緣接觸台灣字佮台灣冊.
 我愛學習語言. 對學外國語有這款特殊的感情. 佇小學時代我捌讀幾年日本學校. 初中時陣開始學英語. 大學時陣學的第一外語是英語,第二外語是德語. 家己嘛學韓國語佮別款語言. 我會曉看佮寫規路款外國話佮外國文字. 偏偏毋捌寫蔸台灣話. 我袂曉看佮寫台灣話, 嘛毋捌偌濟台灣字.
 檢討過去幾若十年學外國話的經驗. 無管佇學校猶是家己學刀脊款語言, 攏愛用釣文字. 敢若學台灣話毋捌用台灣字的教本猶是台灣字的教材. 我捌去教會做禮拜知影有羅馬字聖經.我袂曉讀羅馬字聖經,我看毋捌羅馬字聖經. 嘛毋捌拄著有關心我這款狀態的人.
 現實生活佮世間風俗予我會當按呢安穩過日子. 台灣人逐工講台灣話, 但是無視台灣文字. 無關心台灣文字的存在.無人管你捌猶毋捌台灣字, 就毋免講捌毋捌毋是漢字的羅馬字啦. 莫怪就按呢我猶是阮毋捌台灣字, 猶袂曉讀佮寫台灣話. 有一句台灣歌詞寫較有夠好:這是環境來造成.
 台灣政府的教育部最近公佈閩南語羅馬字拼音方案,推行文字改革. 今仔日台灣話有一套新規範通遵循利用. 欲學台灣話足利便. 佇網路上有真濟紹介佮宣傳•鼓勵使用台灣話的影片, 鬧熱滾滾. 我嘛想欲鬥鬧熱.

*全ローマ字の書写例

講(kóng) kah寫(siá)
 Kóng kah siá si nng khuán bô-kāng--ê piáu-hian hong-huat. Tī Tâi-uân ta-pōo-hūn lâng ē-hiáu kóng Tâi-uân-uē bē-hiáu siá Tâi-uân-ji. Guân-in tsin kán-tan. Tuā-pōo-hūn--ê lâng to m̄ sī lī-iōng bûn-jī o̍h ē-hiáu Tâi-uân-uē e. Pîng-sî kuè jı̍t-tsí ē-hiáu kóng pī ē-hiáu siá ke-kah tiōng-iàu. Kah-lâng kinn-bīn ā-sī kau-tsè bô sı̍p-kuàn sú-iōng bûn-jī. Bé-ka lî-khui tsin-hn̄g--ê lâng kóng-uē-e sî-tsūn iā iōng thuân-uē ah tiō sī tshiánn lâng tuà-uē tsin-tsió sú-iōng bûn-jī. Nà-bē mn̄g an-tsuánn-ē ah-ne, tiō-ài siūnn-khí Tâi-uân-uē--ê tīng-uī būn-tê. Tâi-uân tsìng-hú sui-jiân kóo-lē sú-iōng bó-gí, m̄-kò Tâi-uân--ê tsìng-sik gí-gân sī Tâi-uân kok-gí iā-tiō sī Tâi-uân huâ-gí, m̄-sī bîn-kan sú-iōng--ê Tâi-uân-uē. Tâi-uân-uē tsuè tiō sī ê sî-tsūn sī suán-kí--ê kî-kan, bîn-tsú Tâi-uân--ê tsìng-tī-ka kiû-sîn pài-hut long-kóng Tâi-uân-uē, pài-phiò tong-jiân iá-tiō kóng Tâi-uân-uē, ḿ-koh bûn-suan long iōng tiong-bûn.

*漢字とローマ字の混合用例も見てみよう。

 用漢字寫台語ê時陣,有時也用tiò羅馬字.因為台語有家己ê講法.這種講法著愛用家己ê表現方式. 日文嘛用漢字,日本話嘛有日本話的講法,寫日文著愛用漢字kah假若(カナ)來表達. 漢字ê表達力實在ū-kàu"神通廣大". tsham日本話嘛袂使無用tiò伊.