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 1991年9月 新潟県釜川のイワナ釣り

                    (H19年10月8日)

  1978年の解禁日の記録に、同行したメンバーが記されています。初顔が2人いますが、こうした釣りを通じて友達になるのも楽しみなことです。
 一人はSさんと言い、もう一人は「どこそこの御仁」で名前は覚えていませんが、まあ多分シロウトさんとは思います !!」 ・・・などと一端の渓流釣り師になったような口ぶりで記してあります。28年前のこの日初めて一緒したこの“御仁”こそが何を隠そう、今も続く元祖渓流グループの一人Yさんです。この日以来永い永い釣りのお付き合いとなりました。


 そうそう、シロウトさんどころか、いまだにYさんには釣技で勝ったことがありません。それもそのはず、渓流釣りの本(高木  国保 著・ 我が山釣りと山菜への誘い)に出てくる新潟県は“ 秘境 釜川 ”が流れる“大場”の集落を古里とする人だったのですから。・・・・・・・・

 その釣友Yさんの郷里、大場部落を訪ねました。渓流でお付き合いするようになって13年目の頃です。

  実家に一人残って住んでいたお袋様が、いよいよ年をとったとのことで三重県に住むお兄さんのところへ身を寄せるのを機に、「大場」の家を処分することとした次第。私とKaの二人が同行し、跡片付けがてらの古里での釣りとなりました。

  さて、“秘境”のイワナ釣りの話をしましょう。
 メンバーは三人、Yさんが先導で出発します。集落は釜川の西側台地に位置しています。目指すイワナの谷は本流の東側の山並みの東を流れる板沢で、下流で釜川本流に合流します。裏日本ですので、川は南から北に流れています。その谷の中流部に行き着くためには釜川本流を横切り、迫る山並みを藪こぎしながら直登して尾根を越え、一気に谷筋まで降下します。えらいこってす。

「ヒー、、、Yさん、まだのぼるンかい ? 」・・・  なにしろ潅木やらクマザサやらの道無きを、しゃにむにかき分け上り続けています。昨夜のアルコールの残りも手伝って心臓はバクバク破裂しそうだ。
 Yさんが涼しげに言います、「Nさん、あそこに見える高圧線が走っているところが尾根だから、あそこを越えないかんのだわ、」「まだ相当あるナー、フェー」。

  こんなところで子供時代を過ごしたYさんに、釣技で勝とうと思うほうが間違っていました。今ごろ反省しても心臓は楽になってくれません。

  やっとこさ谷筋に降り立ちました。暫時休憩、谷の冷気がひんやりと汗を鎮めます。ただの食パンにハムがあんなに旨かったのは初めてでした。

  イワナを釣るのにミミズとか生きエサは使いません。毛鉤を一つ付けただけのテンカラ釣りでどんどん谷を上流に詰めていきます。かなり段々の落差のきつい谷で、竿を振るのが半分、よっとこしょ、よっとこしょと岩を越えるのが半分の釣りです。

  ポイントに、25センチはあるイワナが着いているとYさんが言います。「何処におるの?」「あの沈み石の陰ンとこ、」「何処におるー?・・・ あ、あそこかー」 Kaと私はやっとのことでイワナを確認しました。

  Yさんは体にしみこんだ経験から、こう言う流れのポイントには、このあたりの石のこんなところにイワナがいる筈だ、が先にきてすぐイワナの姿を見つけるのでしょう。私たち二人の場合は、イワナさんイワナさん何処にいるのですか?ばかりで、水の中のイワナをなかなか見つける事が出来ないようであることを理解しました。

 さっそくKaと私の二人が交互に竿を振りますが、飛びついてきません。 「あのイワナはもうダメだなー、」・・・ 「よし、代わるワ、」・・・いくらYさんでも、散々俺らが水面掻き回してしまったのでダメでしょう。見ているとラインが水面をパシャパシャ叩いています。そんなんはイカンと思うけどなー、テンカラ釣りの教科書には毛鉤がフワット静かに水面に落ちること、と書いてあるでしょ

  5回、6回、結構Yさんもしつこい性格しとるなー、 ジャバッ! 瞬間、バシッと合せてイワナが飛んできました。 「エー、そんなんありかー!」「案外、ラインで水面叩いて気を引いたりすると、飛び出ることもあるんだワ。」・・・なるほど、そういうものですか。ショボン。

   行く手に大堰堤がそびえています。高巻きのルートはついていますが、ちょっとでもバランスを崩したら一巻の終わりです。「コワイナー、こんなへずり。」体が硬直していました。かなりきつい場所と思われても、しっかりした雑木などの掴むものがあれば安心できるのですが、岩場だけとかガラ場なんかは本当に怖いです。 しばらく行って中段の所にロープが垂れていましたが、誰かが下る時に使ったものでしょうか。

  予定のコースを釣り終え、帰りは谷を下らず、尾根に上った所で電力会社の高圧線保守ルートに沿って山を下ります。既に膝は笑っており、ちょっと歩いてはズルズルどっ転コロリの連続でした。この日は減水していて数は出ませんでしたが、「これがイワナ釣りだ!」を堪能しました。

 夕方、近所のおやじさん宅から誘いがあり、クマ肉をご馳走になることになりました。こちらの話は次回に.


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