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    第3話
  

      1983年6月   渓流釣りと酒の話

 釣りにもいろいろありますが、酒が一番似合う釣りと言えば渓流釣りではないでしょうか。2月、3月の解禁の頃、雪が残る河原で、芽吹き出したネコヤナギの脇に腰を降ろして飲む酒はウイスキーとかウォッカなんてのがいいですね。日本酒の燗なら身も心も温ったまります。石灰が仕込まれていて燗がつく便利なものもありますし、手間を掛けるならガスバーナー持参もオツなものです。
  盛期の渓流釣りはどんどん川を釣り上り、かなり体力を使います。チョット一休み、汗をかいた体には何と言ってもビールがうまいです。

  釣友の一人に、まだそれ程酒は強くないMさんがいました。自分では“アルコールは発展途上国”で、などといつも言っていました。今から20数年昔の話です。
  そのMさんが、雨の中、傘を真横に差して用を足していた事を思い出します。

 1983年6月15日に気象庁はやっとのことで梅雨入り宣言しました。本日20日は前夜より降り続いている二度目の雨模様である。本日は月曜日なり !!  午前9時半、メンバーのM、Ka、Yと私Nの4人が緊急連絡を取り合い話は直ぐにまとまりました。即断即決、明日火曜日は休暇をいただく事にしましょう。全員了解!
  昼前には大雨注意報が、午後8時半には警報に切り替わっています。勤務終了間際に上司が、「本当に行くのか?」 『行きます。』「ほとんど病気だなー」・・・上司、止むなく休暇承認。アマゴアメゴとも呼ばれ、雨子と書きます。コンディションは上々だ。

 車は雨の中を3時間、目的地の郡上吉田川支谷の奥長尾には午後11時前に着き、12時を廻るまで車中でいつものアルコール宴会です。正気のうちに明日の釣り場の取り決めをしたら後は飲み放題だ。

  宴もたけなわ、Mさんが小用で私の傘を持って車外に出て行きました。外は降りしきる雨、車中の3人は地ウィスキーなど飲みながら話に夢中です。ところが、ふと窓越しに外を見ると、ルームライトの明かりでぼんやりとMさん、ナ、ナント雨の中、傘を真横に差して用を足しているではありませんか。おかしいなー、何をしとるのかなー。よーく見ると私の大事な傘が途中から90度折れ曲がっています。なんでや?「オーイ  Mさーん、何してくれるんだー 俺の大事な傘ァー!!」 後で総括するには、どうも車を出てから一度ズッコケているらしいのです。アルコール耐性度では発展途上国のMさん、最近よく半分気を失っては、ちょくちょく転がるそうです

  傘を差しながらもぞもぞと、ズボンのチャックを下ろす前なのか後なのか、フラフラッと草むらに転がったのでしょう。このときに傘の柄が折れ曲がったに違いありませんが、大事なものも曲がってしまったと言うことはないのでしょうね。気が付いて起き上がり一連の動作をやり直したのでしょうが、酩酊した脳みそは傘が曲がったことには気が付かず、ただ傘の柄だけはしっかり握って、雨に濡れながらも本能で用を足していたのでした。

  Mさんはもともと常習的にアルコールを嗜む方ではなかったのですが、メンバーに滅茶矢鱈に酒が強く、且つこよなく愛するKaさんが加わってからと言うもの、皆さんもつられて酒量がグッとあがりました。さほど強くもないMさんのアルコール修行が続いた頃のお話です。

  今では立派に先進国の仲間入りをし、酒なしでは生きられないMさんが存在します。

  このところ寄る年波のせいか、比較的釣り場が近いアユ釣りなどにも良く出掛けます。炎天下の河原で飲む“冷たいビール”は最高ですねー!  20年もかけてやっと分かってきました。アマゴだろうがアユだろが、はたまた乗合船のアジ、メバル、どんな釣りにも酒は似合うと言う事です。
 自戒を込めて、皆さん、飲みすぎには注意しましょう。

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