「地方路線バスのあり方を考えるつどい」
以下の内容は、2001年8月2日に瀬戸市民会館で行われた、講演をもとに国労名古屋地方本部が土居先生のご協力をいただき加筆・編集したものを、転載したものです。
地方路線バス事業の展望と課題
−生き生きと移動できる社会を求めて−
立命館大学教授 土居靖範
私は、京都の立命館大学経済学部で交通論の授業を担当しています。経済学部には交通経済論、理工学部には交通工学というものがあります。私の方は交通経営の問題を授業でやっています。
交通というのは学問的にも大事で明治時代から交通論があり、以前は鉄道論とか海運論とか、倉庫論とかに別れていましたが、今は交通論に一本化しています。授業は「まちづくりと交通」というテーマでしています。学生諸君に自分の町をどういう形でうち立てていったらよいかということについて交通の面から考えてもらうものです。一方的に授業で地方のローカル線はどうかという事を説明するのではなくて、学生諸君に考えてもらう。危ない箇所はないかとか、どう変えていったらよいのとか、こういう公共交通のダイヤでよいのかといった点ですね、具体的に彼らの新鮮な目で問題を発見してうち立ててもらうということをやっています。
講演の焦点
今日は、路線バスということで1時間ほどお話ししたいと思います。お手元のレジメと新聞・雑誌の切り抜きの資料がありますので、この二点を使って話したいと思います。今日のポイントは三つあります。一つは現代社会、我々の社会において公共交通、とりわけ路線バスの重要性という点を認識していただきたいと言うこと。それから今回、「規制緩和」でバスの免許制度とか運賃などのいろいろな制度が、ガラッと自由化の方向に行きます。来年の2月に現実に法律として施行されますから、今は水面下でいろいろな動きがありますが、来年の2月には路線バスの廃止とか、参入と言いますか、新しく事業を興すということが出てくるだろう。二点目は改正「道路運送法」の施行で進む路線バスの廃止問題。三点目は、JR東海バスが大規模な廃止を目論んでいますが、この廃止を逆に押しとどめて、当然現状を維持させ、現行通り運行させる事も大事ですが、さらにこの機会に打って出るといいますか、まちづくりと路線バスの役割についてもう一度考えて行きたい。この三点を今日の焦点にしたいと思います。
路線バス事業に山積する課題
今、現在21世紀が始まったばかりですけれども、このバスの問題として様々な問題が出てきています。レジメに6点ほど上げていますが、現状のモータリゼーションの中で、バス離れということが進んでいます。そのバス離れというのは、バス自体が、モータリゼーションが原因の道路渋滞に巻き込まれて、十分確実に目的地まで行けないということによります。鉄道はそういうことはないです。時刻通り、事故がなければ、何時何分に乗れば定時につくわけです。道路は、トラックとかマイカーとか共有していますから、そういう点で渋滞問題からバスが定時性を失っています。現代人ですか5分でも10分でも遅れるとイライラして、バスよりも手っ取り早くタクシーに乗ろうかとか、マイカーで行こうとかになってしまいます。こういったバス離れ現象が、モータリゼーションと共に進んでいます。
二点目がですね、一家にマイカーが1台は当然あります。2台、3台も多い。自分の交通手段を自衛的に求めざるを得ない状況になっています。それから、週休二日制で毎日バスに乗らないとか、少子化で学生の数も減っているとか、バブル不況なども影響していますが、基本的にはモーターリーゼーションの中で、バスがお客を無くしていっているという点があります。これが一つバス離れの原因です。
さらに今回、「道路運送法」が改正されて、バスの免許制度の自由化によって廃止が促進さるだろうと予測されます。それから21世紀日本は、高齢社会、長寿社会と言う形で人生80歳、90歳の方がどんどん増えてゆくわけで、その中でバスの役割も変わっていくだろうと思われます。自分で運転している方も、元気な方は乗っていただいていいんですが、やはり反射神経とか、様々な点でマイカーに乗るよりも、人が運転する公共交通の方がいいという年齢になると思います。それから今、京都議定書の批准問題が出ていますけれども、環境問題があります。京都議定書の場合は、地球温暖化と言うことでCO2とかの排出により、地球全体が温室みたいになると言うことですが、環境問題としては、NOX、窒素酸化物とか、SPMという発ガン性物質をディーゼル車が出しているという問題があります。個人的な考えとしては、CO2問題も大事ですが、もっと密接に人体に肺ガンとか、ぜん息とかの影響を与えるNOXとかSPMの方が、深刻な問題と考えています。それを、排ガスの中にディーゼル車が出しているわけです。ディーゼルトラックとバスがディーゼルエンジンを積んでいます。ですからバスに乗れ乗れと言っても、本当はバスが、環境に優しいエンジンを積んでくれないと、100%進めることは出来ないわけです。公共的使命を帯びているバスを低公害のバスに早く替えることが必要です。東京都がこの度、「ディーゼル車NO作戦」というのをうち立てて、ディーゼルの排ガスフィルターを付けない車(トラック)は入らせないという条例を作りました。
それから地方分権、権限を地方におろすということが出ています。中央集中的ないろいろな制度を地方におろしていこうと。財源自体はあまり手当てしていませんから、「絵に描いた餅」になるかもしれません。それから、国土交通省が今年の1月から発足しています。
事業規制緩和=改正道路運送法がもたらすもの
こういったバスを巡るいろいろな環境が変わりつつある中で進められています「規制緩和」問題に移ります。レジメの2ページにありますが、具体的にバスで「規制緩和」をどうするのかというと3つあります。まず事業の参入です。これまで免許制にしていたのは、無秩序に競争しますと安定した経営が出来ないと言うことで、路線権や既得権と言いますが、例えば名鉄バスはこのルートを走るとかの地域割りを歴史的にやってきたわけです。それが無秩序になると、バス会社は非常に経営が不安定になってしまって安定的な輸送ができないということで、事業をやる時に「免許制度」という制度で、一定の免許を持ったものしかできないということをやってきた。これを来年の2月からは、一定の資格さえあれば、あまり零細の企業とか、以前ダンピングなんかをやりまくっていた会社はダメですが、一定の条件をクリアいたら、国は許可を与えざるを得ないという「許可制」になります。
ですから、これまでよりも多くのバス会社が出てくるということです。予想としては、儲かるところはこれまでの既存のバス会社以外にもどんどん出てくるということです。それを新規参入と言っています。どういうところに出るかといえば、お客がたくさん乗るところに出てくる、儲かりそうなところに出てくるわけです。これをクリームスキミングといってますけれども、牛乳やアイスクリームなどの一番おいしい所だけをかっさらっていくというやり方です。一番儲かる地域とか、お客の多くいる地域とか、儲かる時間帯だけ運行する。それでも免許を与えざるを得ない。これまではあまり無秩序な競争はダメということで、儲からないところもやるからということで免許を与えていたわけですが、これからは、タクシー会社でも、トラック会社でもどんどん出ていけることになります。
それから事業の廃止ですが、儲からないところはこれまでは一定予告して、地元が納得しているかどうかとか、きめ細かく準備した上で「路線を休みます」とか「廃止します」とかをやっていたわけです。これからは特に地元が納得しようと反対があろうと、「明日から止めます」ということはできませんが、「あと6ヶ月後には止めます」と言っても、誰も止める事は出来ないわけです。運輸局も「仕方がない」という事になります。これまでは休廃止は許可制であったわけですが、これからは事前に届けたら認めざるを得ないということになっています。
運賃に関しても、これまでは「この路線は300円」と言うことが決まっていて、運輸審議会というような所にかけて、認められていたわけですけれども、運賃に関して各事業者が、あらかじめ上限はあるんですけれども、上限の範囲の中では自由に届けるだけでいいわけです。「3ヶ月後にはこの路線は300円にします」とか、あるいは「もっと安くします」とか届けるだけでいいわけです。こういったことが「規制緩和」のバスに関する内容です。
そういうことでバス事業に関して、どういう事が起こるか想定していただきたい。
来年2月の法の改正によって「規制緩和」が起こる。参入が増加するところがあります。先ほど言いました、お客の積み残しが起こっているようなところでは、新しいバス会社は「儲かるだろう」ということで、最初は安くしてでも乗り出してくることが考えられます。そういう形で儲かるところに、バス会社とかトラック会社とか、タクシー会社などが、てっとり早くバスの運転手を用意して入ってくるといわれます。その場合、やはり競争ですから、運賃の安いところに行きますよね。そういう形で進むわけですが、いつまでも安いだけでは出来ない。最初の内はスーパーの安売りみたいに、トイレットペーパーとか卵とかを88円で客寄せにやっていても、再生産するためには一定の収益が必要ですから、コストを下げていきます。競争に勝つためにバス会社がコストを下げる手法として大きく2つあります。
一つは、人件費の削減です。一台のバスには一人の運転手が必要です。鉄道みたいに長編成でも運転士一人と言うわけには行きません。どんなバスにも一人の運転手がいるわけです。運転手のコストが一番のウェートを占めています。それでやる事は、人員削減、出来るだけ安い人材を使う事です。運転手は減らすことは出来ませんから、減らせるところは検査、修繕の所です。ちょっとくらいバスが痛んでいても「事故が起こるまでいいわ」と修繕のカット、修繕を少なくする。それからアルバイトやパートというような不安定雇用といいますか正規運転手を雇わない。バスは朝夕にたくさんの人がどっといるわけです。昼間は少なくていいわけですよね。手っ取り早くアルバイトやパートの人を雇うという、そういう形になるわけです。それで正規の人を首切ったりすることが考えられます。
それからもう一つコスト削減の例としては、不採算路線廃止というのがあります。お客があまり少なく乗らないところよりも、ドル箱のところへどんどんシフトした方が良いということで、不採算路線を切っていこうとします。こういうことは、資本主義社会の中で、当然企業家がやろうとすることですよね。どんな影響があるかというと、まず安全の問題があります。
安全重視の公共交通と規制緩和の影響
公共交通の使命というのは、マイカーと違って安全です。マイカーをはじめとする自動車による事故では、日本全体で年間1万人近い人が、亡くなっています。ところが鉄道や路線バスが、ちょっとでも事故をしたり、死傷者が出た場合は、ものすごくマスコミから叩かれますね。マイカーなんか日常的に何十人の方が事故で亡くなっているので新聞なんかにいちいち載らないわけです。けれども鉄道とかバスが事故を起こすと、大きく取り上げられます。今回福井の京福電車の正面衝突という、あってはならない事故が起こりまして、どれだけマスコミが社会的問題として追求しているかお分かりでしょう。公共交通が安全だという国民の信頼を得ているから。そうでないとあれだけ騒がないわけです。
「交通戦争」という言葉が以前使われましたが、交通労働者は日常的に渋滞の中で働いているわけですから、心身のストレスがあるわけです。さらにこの規制緩和の中で競争のためにコストを削減しなければならないということで、労働強化がされています。これまで7時間労働のところを9時間とか、「日曜も出てこい」とかの形で出てきます。事故は心身の疲れ、注意力の欠如、こういうことが大きな原因となったりしていますけれども、職場の雰囲気も悪くなりますね。リストラがあったりしてですね。自分は首切られるか、相手はどうか、そうした疑心暗鬼になってですね、コミニヶーションが図れないとかですね。職場の雰囲気が悪くなったら、家に帰っても奥さんにあたったりしてですね、家庭の雰囲気も悪くなったり、様々な相乗効果が起こります。日常的に小さな事故が発生して、ある時大きなアクシデントになります。こういった安全問題というのは、規制緩和の中で心配されるところです。安全は公共交通機関の使命で、国民の生命・財産を運ぶ点で重要です。他に快適性とかも必要でしょうが、安全無くして公共交通の使命はないわけですから、今回の規制緩和がいかにして安全問題を脅かすものになるかということを指摘したいと思います。
路線バス廃止は家計を圧迫
二点目の路線廃止問題、今回の大きなテーマです。コスト一辺倒になりますから、コストを十分償わないところは切り捨てていく。100円の収入を上げるのに70円とかの安いコストのところのみを残すということになってきます。ですけれども、こういった路線廃止によってどういった影響が表れるかということです。バスの一番多い利用者は通学生です。日常的に近くの学校だけでなく、受験戦争なんかがあったりして通学圏が広がっています。遠距離の学校へ電車やバスを使っていくことがありますので、そのバスを廃止してしまったら通学できなくなってしまう。やむを得ずバイクに乗る、学校としてはバスが廃止になったら通学手段が無いわけですから、安全上問題があるけれども、「3ない運動」があってもやむを得ずバイクを許可する。そして通学ができなかったら、仕方がないからその学校の近くに下宿をせざるを得ないと、これは過疎地域で大勢出ています。バスの定期代なんかも月額5万円とか、ものすごい額ですけれども、それよりも下宿した方が安いということで下宿に替えた家族もあります。輸送手段がなかったら下宿をせざるを得なく親の負担が多くなるわけです。一人の子供だったらなんとかなるかもしれませんが、2人、3人を下宿させたら、とうてい生活がやっていけない。あるいはマイカーで送り迎えをせざるを得ないといいますか、こういうことも出てきています。そのため自分の仕事を辞めてでも通学を保障せざるを得ない状況になってきています。
バスに高齢者の方も利用が多いですよね。病院に行くとか、買い物に使うとか。身近なところの商店街が空洞化して買い物ができなくて、バスで買い物に行くことも多いですね。後は、一般的家庭の主婦層や子供なんかも利用しています。
先が見えてきた車社会…ガソリンが無くなる
今どんどんバスを切り捨てたり、公共鉄道を切り捨てたりしていますが、モータリゼーション自体がいつまで続くかということを考えていただきたいのです。日常的にマイカーに乗っている一般の方は、マイカーというのは永遠に運転できるといいますか、永遠に存続すると思われていることでしょう。我々はどっぷりと車社会の中に浸っています。車社会が永遠に続くと思っています。
しかし日本の自動車会社は、ガソリンを使う自動車がいつまで続くかということで、一番深刻に考えています。ガソリンが無かったら動けないわけです。それで莫大な金をかけて、世界的な調査会社に委託料を払って「ガソリンがいつまで掘れるか」、ガソリンの元は原油なんですが、原油がいつまで採掘できるかということを調査しました。それで今までの予測では2030年位まではガソリンが安定的に安いコストで、1Lあたり90円とか100円位、それ位で提供できるだろうから、自動車は2030年位までは、安泰だろうと見てたわけです。一般的には2030年位までと見てたわけですが、これが違ってきた。2010年位に早まってきたわけです。ガソリンはアラビアの砂漠とか海底の深いところから掘ればあるそうですが、コストが増えて一般の庶民は買えなくなってしまいますから、そういうことで安定した安い値段では、2010年頃と言われています。『ガソリン車が消える日』という本が宝島新書から、昨年の11月24日に出ています。何故それだけ早まったかということです。どうでしょうか。採掘はでき2030年にパタっと無くなるわけではありませんが、どんな原因でそれが早まったのでしょうか。
それはガソリンをものすごく使うところが出てくるということです。お隣の中国です。中国とか、インドとかが発展してきたらモータリゼーションに突入してくるであろうと。調べていますけれども、これほど所得が上がるだろうとは見ていなかったわけです。それで一つ考えていただき点は、日本の人口は1億2千万人。1億2千万人の人が、自動車は軽自動車を含めて現在7千万台持っています。これは40年間位かかって、高度経済成長の中で、「国民所得倍増計画」とか自動車のコストダウンとかあって、1億2千万人の人が7千万台の車を持ったんですね。中国の人口はだいたい12億人です。そして40年もかからずに、後10年間位で日本と同じようなマイカー保有率を示すだろうと。ものすごく急速に発展していますから。12億の人が日本と同じような保有率、単純にいえば7億台の車を持つだろうということです。その燃料の石油は中国で自給はしていません。掘れたんですけども、工業生産が著しく、今は日本と同じ中近東から石油を輸入しています。今後中国が経済発展したら、金にあかして石油を輸入してくるわけです。そして、7億台の車にガソリンを供給していかなければならないわけです。世界中の少ない石油を使って行くわけですから、日本などと取り合いになって10年後にはガソリン自動車は走れなくなるという予測が出てくるわけです。
長期的な視点で
それで自動車メーカーは何をやっているかというと、必死になってガソリンに変わる代替エネルギー、これを必死に開発を進めているわけです。燃料電池の開発や天然ガスの開発、天然ガスは原油とは違って2030年位まではあると予想されています。この開発にしのぎを削っているわけです。ガソリン車に変わるものを安く提供できたら、その会社は生き残れるということです。そういった燃料電池の技術を持っている会社は、世界的に合併したりするわけです。日産はルノーに乗っ取られていますし、三菱はクライスラーに
支配されています。世界的に代替エネルギーをどこが開発できるか、エンジンを開発できるかが今大きな争点となっています。 ですから自動車メーカーは、代替エンジンを開発すると共に、ガソリン自動車が走れなくなった場合は、やはり公共交通を見直さざるを得ないわけで、新型路面電車の開発をしたりいしています。LRTといっていますが、ダイムラークライスラーとかベンツなどいろいろな自動車会社は、路面電車とか、新信号システムとか、運賃自動払い、入場システムのようなものの開発にどんどん力を注いでいるわけです。いろいろな研究機関を持っていますし、子会社としてLRTの車両メーカーを吸収しています。一つの代替エネルギーがうまく行くかもしれないが、ガソリンエンジンはもうダメですということですね。こういった状況をきっちり押さえる押えていただきたいわけです。長期的視点でバス問題とか、鉄道問題を見ないとですね、2010年になってバスもなかった、鉄道も非常に不便だ、そういう時に人々の移動の足を誰が守るかということです。是非、長期的視点から見ていただきたいと思います。
民間バスの多くが赤字
ちょっと横道にそれましたけれども、レジメの3ページにいきます。全国的なバス事業をみた場合、バス離れの影響を受けまして、お客は減っています。そして経営は一般的に赤字基調で推移しています。いろいろな兼業ということで、バス会社も不動産業をやったり、スーパーをやったり、旅行会社をやったりしています。観光バスもやっています。一般的にはバス会社で今行われていることは分社化ということです。別会社を作って非常に悪い労働条件とかで働かせて、コストを削減しています。
打って出るやり方も見られます。皆さん方「100円バス」とか、聞かれたことはありますか。運賃が高いこともあって、お客が減ってきているわけですね。ちょっと位近いところは歩いていこうとか、自転車で行こうとかとなりますから。大都市の近郊に多いんですけれども、100円でやろうとかしています。また通勤契約バスとか、深夜バスとか、買い物バスとか、環境定期券を導入するとかやっています。
コミニティバスの台頭
そしてもう一つは、地方自治体が主ですが、先ほども長久手町の話がありましたけれども、コミニティバスですね。これが増えています。基本的には運賃100円です。いろいろな公共施設、図書館とか、市役所とか、文化ホールとか、医者とか、人々が基本的に利用しているところを循環していく「公共循環型バス」もあります。利用者の原点にたったコミニティバスが、今、現在流行です。バス会社が、赤字路線を運行できなく、撤退してしまうのでやむを得ず、市町村がやるという時に、今までのやり方では、やはり利用者も少ないだろうから、運賃を安くして、利用者が行きたいところに行こうというやり方でやっています。これの一番のルーツは武蔵野市の「ムーバス」です。大都市の近郊ですけれども100円で、15分間隔で、停留所も200m間隔です。高齢者の方は300m、500m歩けないんで、200m間隔ですから遠い人でも100m歩けばいいわけです。このバスは低床式ではなくて、車内に入るのにステップが入りますけれども、補助のステップが出てきまして補助ステップで車内まで行けます。
ミニバスといっていますけれども、立ち席含めて29人の小さなバスです。そういうバスで成功して全国発信して長久手町とかいろいろなところでやっているわけです。
地域に根ざした運行を
これをどの地域でも、武蔵野市がやって成功いるから、やっていこうということで「ムーバス」方式のコミニティバスをやり始めていますけれども、だいたいのところは失敗しています。お客の乗らないところを走らせてはダメなわけです。15分間隔で走らせても、需要の少ないところを走らせてはダメなわけです。やっぱり利用者がどんなところに行きたいのか。いろんなことを研究し、どのルートが良いのかとか。ほんとにそこに必要なのかどうかとか。おしきせではなく、地域の住民の参画を得ながらやることが必要だと思います。
公共施設にアクセスできる権利
この地域でも非常に多いですね。統計によりますと、愛知県下の24市町村でコミニティバスを運行していて全く無料もあります。地域が広がっていますから、保健所での検診とか、公共施設を巡るのが多いです。これまでは歩いて図書館とか、その他の施設に行けたところが、今では歩いて行けなくなっているんですね。地域の住民が、日常的に公共施設にアクセスできる権利を持っているわけですから、無料であってもおかしくないということが考えられるわけです。なかなか皆さん方信じられないかも知れないので、一つこういう例を考えていただきたい。この近くに大きなスーパーとか百貨店とかありますね。例えば名鉄百貨店、高層の8階建てとか10階建てとかありますよね。そういうところに買い物に行かれてエレベーターやエスカレーターを利用されますよね。エレベーターやエスカレーターに乗るとき100円とか取られたことがありますか。そういうこと無いですよね。その施設を利用するために、上の階に本屋があって、そこに行くために、使っているわけですよね。同じことなんです。市役所とか、市の図書館とか、市民会館とか、本来小さな町であれば歩いて家から行けたわけですが、それが行けないわけですから、そこに行くのにバスが通っててですよ、そのバスが無料であっても現実におかしくないということです。配布資料の「住民と自治」の記事で、アメリカのシアトルでは都市内のバスは無料であると紹介されています。シアトル以外でもポートランド、デンバーとかいうところに無料のバス、無料のLRTというのが走っています。郊外から来るときや郊外に行くときは少しのお金を払うんですが、中心市街地の中で乗って降りたりは、無料にしています。これは一つの都市の装置であるという理由からです。
路線切り捨てで寝たきり老人が増える
市内がマイカーの渋滞でひどくなります。その町自体が魅力が無くなって、その町に人が住まないとか、人が来なくなってくるというのがありますね。無料にしてもトータルバランスでは、十分町の財政としてはバランスが取れる、儲かるということでやっています。ですから路線バスに関しても、もしJRバスが廃止されてしまって老人の方が、これまでのように病院にも行けないとか、中心地の商店街にも行けなくなって、家でジトーっとテレビを見るしかなくなると、どうなるでしょうか。今までは気晴らしに町中まで出たり、いろいろな文化施設に行こうとか、こういうところに話を聞きに行こうとか、できたわけですね。そうして社会的活動ができたわけですね。生涯学習センターとかですね。ところがバスがないことによって家の中にジトーっとしてしまうと、寝たきり老人になるということです。そうすると、国民健康保健や介護保険のお世話になるとかして、市町村の負担が増えるわけです。それよりもJRバスは今ままで通り動いてもらって、病院にも行ける、商店街にも行ける、いろいろな文化センターにも行けるという方が、国民的な意味からも、あるいは市町村の財政的な意味からも、トータルでは儲かるわけです。ですから、狭い採算第一主義ではなく、全体的な長い目といいますか、大きな視野で見るべきことが必要ではないかということを指摘したいと思います。
交通権と交通基本法
それでは最後の結論にいきたいと思います。今までバスの重要性とか、バスの路線廃止によってこんな影響が出るといいました。そこで廃止反対運動が重要です。一般に通学生とか高齢者の方は、あまり声に出しません。そういう人々の移動の権利を守るというのは大事なことです。若い人は、いつまでも車に乗れると思って、こんな問題はあまり身近に考えられないかも知れませんが、人間は高齢化していくわけです。いつまでもマイカーに乗れないわけです。それから子供さんが大きくなって中学や高校に行く時に、切実に通学の足をどうするのかということも出てきます。ですから皆さん方の問題、我われ全員の問題なわけです。
そういうことで、このバスの問題は二つの側面が考えられるわけです。
一つは、マイカー社会の中で移動できない人の「移動の権利」を守るということがあります。「移動の権利」は「交通権」といっています。もう一つは、公共交通を運行している交通労働者の雇用や労働条件の問題です。バスの運転手の労働条件が、バランスよく動かないと公共交通は、安全の問題とか、事故を起こしたりするわけです。その二つが絡んでいるわけです。「交通権」を守るということは、現実に交通労働者の雇用を守ることを裏付けているわけです。交通労働者が闘うことによって、「交通権」、いわゆる公共交通を維持することによって移動制約者の人の「交通権」を保障することになり、この二つが重要になってくるわけです。
「交通権」という考えは、今日初めて聞く方も多いと思います。あまり馴染みがないですけれども、日本国憲法で「学習権」とか、幸福になる権利とか、さまざま国民の基本的人権ということがうたわれているわけです。ですけれども「学習権」を持っているといっても、現実にバスがなくて高校に行けないとか、幸せに健康に生きる権利といってもバスがないことによって医者にも行けないことになってくるわけです。現実にバスが我々が持っている基本的人権の実施を裏付けているわけです。バスが無かったら「絵に描いた餅」になるわけですから、病院に行く権利とか、学校に行く権利とか、勤労権にしてもですね。これらの基本的人権を実質的に裏付けるために「交通権」というのは大事です。
日本では残念なことにまだ認知はされていませんが、フランスでは、既に「フランス国内交通基本法」が、1982年に制定されて、第1条に「すべての国民が、自己の意志に従って自由に移動し、財貨を移動させるための適切な交通手段を平等に補償される権利がある」とされています。そして国は、それを保障することを、基本法の第1条でうたっているわけです。ですから我々も、国鉄の分割・民営化法の時に、いろいろな附帯決議ができましたけれども、それを国にちゃんと認めさせることが大事なわけです。そういう意味では、フランスの国内基本法と同じように日本でも交通基本法を制定していくことが必要だと思います。そうでないと、いつまでも国鉄の分割・民営化の附帯条項だけでしばるわけに行かないわけですね。国が国民を守る、具体的にはそういった国民の移動の足を守るということは国の責務です。防衛とか、警察とかと同じで、現代社会において、いかに移動ということが大事かということですね。国内交通基本法の制定が必要だと思います。
路線バスは動く公共施設
路線バスにしても、単に廃止とかいうのではなくして、まち作りと福祉とかの中で、中核的な公共施設として路線バスを位置づけることが必要なわけです。市は、市民会館とか、図書館とか、何とかセンターとかを作りますよね。そういうことをワンセットでやっています。その時にこの市民会館が赤字だとか、図書館が赤字だとか議論しないでしょ。警察が赤字だとか言わないことと同じことです。当然必要な施設として考えているわけです。同じように路線バスも考えて下さい。バスは動きますけれども、その路線バスが学校に行くとか、市民会館に行くとか、いろんな公共施設に行くわけですから、動く公共施設です。そういうものは赤字とかを言うのは間違っていてるわけです。こういうのは残念ながら、日本だけみたいです。公共交通が収支を償なわなければいけない。赤字は切り捨てなさいというところは、発展途上国は知りませんが、先進国では日本だけです。
公共交通の復権
ヨーロッパも、いろいろな試行錯誤をして、鉄道を廃止してきたり、路面電車を廃止してきたりしてきました。車社会の中で渋滞に巻き込まれてバスも走らないから、バスを廃止したところもあります。しかし、今では、ヨーロッパでは鉄道の復権とか、路面電車がものすごく増えています。アメリカでもそうです。ポートランド、シアトルとかの西海岸においては路面電車が増えています。環境問題とか、中心市街地がさびれてきたとか、高齢社会とか、いろんなことを総合的に考えて、その解決のために公共交通を位置づけているわけです。大都市が非常に治安が悪くなっていまして、都心がさびれることによってですね、そういうところも反省点なんですけれど、夜遅くまで路面電車が走り回って、「動くショーウインドウ」って言われていますけれども、そういうところも増えています。ですから国際的な視点、環境問題も言いましたけれども、路線バスの役割についても、長期的な視点が必要です。一時的に採算が取れないとか、そんな面でみてはダメだと思うんです。先ほどガソリン自動車がいつまで続くかということも言いましたし、地球温暖化の問題も言いました。
採算が採れる方がいいんですよ。ヨーロッパでも路面電車とか鉄道経営では、ランニングコストでは採算を取ってくださいと。それが理想ですと。ですけども、線路を造ったり、新しい駅を作るのは無理でしょうから、レールを引くための新しい路線なんかは、国と自治体が100%出すわけです。これは道路が100%国の税金、自動車税とか、ガソリン税で建設されるのと同じことです。ヨーロッパではガソリン税を使って新しい鉄道や路面電車、自転車道なんかをどんどん造っています。その方が車にとってもいいんです。新しい自転車道を造るとか、鉄道を造るとか、路面電車を作ったらそちらの方に移る人もいますから道路は空くんです。ですから道路を造ったと同じような効果があるのです。公害も少なくなります。高齢者でも利用できます。
廃止反対運動からさらに一歩先を見て
狭い考えでなくて、長期的視点でこの問題をみていただきたいと思います。そういう点では、このバス問題は、通学問題でもありますから、是非、高校の先生とかの共闘をはじめ、幅広い市民の結集をしないとダメだと思います。単なるJRバスの廃止問題ではなくて、もっとこの町を、どういった町にしていくのか、そのためにはどういう路線が良いのか、どういうところに寄った方がよいのか、運賃はこのままで良いのかどうかを、もっと市民をあげて考える必要があると思います。市民合意ができたら、100円とか無料にしても良いんですよ。それをちゃんとJRバスに補てんすれば良いんです。そういう運行もできます。長久手町では名鉄バスにコスト、一定の利潤も含めて払っているわけです。バス会社も安定した経営ができるわけです。運行委託で経費を払って、一定の利潤も払ってやっているわけです。いろんな選択肢があるわけですから、あまりバスの廃止問題、維持することに止まらず、もっと打って出ることも重要と思います。
以上です。
質疑応答
(司会者)
せっかくの機会でありますので、今日は労働組合だけではなく、地域の参加していただいています。質問したいことがあれば発言していただきたいと思います。
民主団体の方や新婦人の方も参加していただいていると思いますが、今のコミティバスの話につては、特に瀬戸の中でも作れという運動をされていると思います。バスが走っていないふれあい会館とか建物はできているんですが、そこに行く手段がない。そういった瀬戸市の実態があります。そういった中でも運動されている方もたくさんおられますので、この機会に是非質問してください。
(質問者)
みなさん大変お忙しいところご苦労さんです。JRの運転手です。うちの父もずいぶん年をとって免許もどうかなという状況になってきまして、高齢化社会に向けたときに、バス復活という話を聞きました。JRはかたくなに「まず廃止ありき」との姿勢を崩していませんので、先生の話をぶつけてみたいと思います。補助金と規制緩和の関係についてお尋ねしたいと思います。どんどんと新規参入していったときに当然脱落していく会社と競争に打ち勝って伸びていく会社が出てくると思うんです。その中での補助金のあり方についてお尋ねしたいのと、もう一つは、議員にお尋ねしますが、愛知県バス対策協議会等でのバス廃止の動きについてわかればお願いしたいと思います。
(質問者)
先ほど先生の方から、JRバスが廃止になっても市がコミニティバスを走らせれば。その考え方もあるよ、という話だと思うんですが、その中でコミニティバスを運行している市町村は過疎のあり方をどう考えているのか。今、JRバスが廃止される路線は、過疎の方ですからコミニティバスを走らせても、過疎まで行くのかどうかと思うんですよね。瀬戸市内の公共施設を回るコミニティバスは走らせるけれども、過疎の方へミニティバスは走らせるかどうかは、市の考え方だと思うんですが。運行委託するんだろと言っていますが、市の考え方だと入札制度を取ると思うんですよ。そうするとうちの会社(JRバス)は、高いコストですから絶対負けると思います。その辺のことはどうでしょうか。
(質問者)
瀬戸市内で教員をやっています。先ほどの方の話と重なるのですが、廃止されようとしている路線は、子供たちの通学の路線になっているんですね。確かに朝の時間帯は今動いているんですけれども、昼間は距離的に2km位歩かないとバスに乗れない。もう一カ所の方ですと瀬戸の学校じゃなくて、多治見市の学校へ通っているんですね。中学になると、小学校は市内ですが、こういう地域もあります。先ほどの話の中に「交通基本法」「交通権」、これは瀬戸市内に住んでいるんだから瀬戸市内で結ばれるべきではないのか。ある程度、交通の移動が自由にできるという考え方からすると、この地域のことはどのように考えていけばよいのか。「交通権」が国内でも1998年度に「交通権憲章」が提案されたとなっているんですが、今国会では、話し合われているのか、全国的に進めていこうとする動きがあるのか教えていただきたい。
(土居)
補助金と入札制について
難しい問題なんで、うまくお答えできるかどうか分かりませんが、まず補助金の問題です。これまでは廃止に対して、国は補助制度で、それも3年間は出すけれども4年目からはうち切っていますが、国も地方の路線バスが大事だからということで、補助制度をやってきています。国も出し、県も出し、沿線の自治体も出す。3者で赤字の部分は100%補てんしましょうと。こういう助成をやっていました。儲かるところには補助金は出ないわけです。儲からないところをどうするかということで、先ほど入札制の話も出ましたけれども、イギリスでバスの民営化でやっています。おっしゃる通り誰もやり手が無いところが出てくるわけですよ。儲かるところへはどんどん行きますけれども、どうしてもバス会社はそんなところはやらない。そうすると、これまでは補助金で、国は出さないが愛知県が県単補助という形でやっていましたけれども、イギリスでは入札制をとっています。そこの路線、地域のバスを「どれだけの補助金をもらってやりますか」と、その少ないところに認める方式です。少ないというのは、補助金はもらうんだけれども、たくさん補助金を求めるところにはやらせないわけです。そういう意味ではコストを非常に削減したところだけに落札させます。そこでは安全面の危険性が指摘されています。一時的にその路線をとるために、一般のコストではとうてい考えられないような値段でやると。その競争に勝つためにやっていますから、安全問題などが不安になっています。 ただ、その時に、こういうダイヤで、こういう時間帯で運行して欲しいとか、自治体が注文をつけ、そしたら当然こうしたコストはいるだろうとか、間隔とか頻度では、これだけのコストがかかるだろうかというようなことを地方自治体も勉強し、異常に安くやるところは排除するところが必要になります。一定の応募条件といいますか、ちゃんとした事業をやっているとか、一定のちゃんとしたコストを考えているとか、現実に大事になってくると思います。これも我々の方も研究が必要だと思います。
コミニティバスの問題点と工夫
それからコミニティバス自体は、ここでやれと言っているわけではないんですが、問題もあります。どうしても市町村が運行しますから、その地域しか走っていないんです。富山県の八尾町だったら、八尾町の管内だけしか走らなくて、奥の利賀村からは乗れないんです。ですから市町村の壁を破ったようなコミニティバスをどういう形でできるか、大事だと思います。人々の移動は、町村域を超えて違うところへ通学とかがありますから。これをどういう風に解決できるか、市町村合併の話も出ていますがこれが良いかどうか。
それから過疎地域でもコミニティバスを走らせています。過疎地域も非常に困っているわけですね、路線バスがどんどん撤退していって。過疎地域でいろいろな形で「福祉バス」とか、それはデイケアーセンターに行くとか、「通院バス」とか、「通学バス」とか、全部国の縦割りの補助体系ごとにあってですね、予算が限定されているわけです。施設では白バスを持っています。それではまずいということで「通学バス」にもお金を払って一般の人が乗るとか、統合されたコミニティバスとしてやろうとする動きはあります。ですから一般的には採算はとれませんが、それがなかったら、その地域は崩壊していくわけです。だから市町村がやむを得ずやらざるを得ないわけです。先ほど介護保険の話をしましたけれども、その地域に路線バスがなかったら、その地域からどんどん人が出ていってしまって、地域の崩壊がくるわけですから、何とか最後の一線としてコミニティバスをやらざるを得ない。過疎地域では採算を度外視してでもやると思いますし、その時にいかに少ないパイを統合できるかというのがポイントだと思います。いろいろな工夫が必要です。
交通権
「交通権」に関わって、私が事務局長をしていますが、「交通権学会」という学会があります。会員には交通の研究者以外に弁護士とか交通に関わる第1線の労働者とか、住民運動の人とかが入って、1年に1回全国から集まって研究報告会をやっています。そこでとりまとめたのが「交通権憲章」という本なんです。我々フランスの教訓に学んで、平等性とか、文化性とかを入れて、11項目について提案しています。それを認知していただいて、国にも要求していこうと言うことですけれども、現実に民主党がこの交通権に関して法案を準備しています。それは世界的な流れもあります。アメリカでは、既に障害を持ったアメリカ人法が作られ、ドイツも各州で憲章をつくっています。いろいろなところで世界的に「交通権」を、法的に整備していく流れがあるわけです。その一環として民主党が法案を準備しています。議員立法でやろうとしていますけれども、その法案も交通権学会の「交通権憲章」とか、フランスの教訓を学んでいます。
武蔵野市の「ムーババス」
もう一点、最後にJRバス廃止問題の全体的な位置づけの問題ですね。ここで、これだけ大規模な路線廃止が認められた場合、日本に与える悪影響というのは計り知れないものがあります。先ほど良い例として紹介してのは、武蔵野市の「ムーバス」の例です。「ムーバス」は6年ほど前に、武蔵野市長が武蔵市に住んでいる高齢者の婦人から受け取とった手紙に感動して、バスを走らせようとしたわけです。その高齢者の方の一通手紙が、70歳位の人でしょうか、市長に手紙を書いたんですね。市長さん、私は以前若いときは、元気でしたから、吉祥寺の駅まで歩いてとか自転車で通って、都心に出たり、映画館に行ったり、いろいろなことができました。高齢になって、今では自転車にも乗れませんし、歩くのも困難です。そこはバスが走っていません。何とか考えていただきたいという手紙を市長に送ったんです。市長は、考えなくてはいかんと。そこは駅から歩いて10分位のところなんです。健康な人は、歩いているんです。昔からの住宅街で狭い道なもんで、路線バスは走っていないところなんです。それで市長が考えて、それでも直ぐにやらないんですね。本当に必要かどうか、それをやるのにはどういう条件がいるのか、海外に行ったり、バスの車両メーカーはどうしているのか、車両メーカーを調べたり、どういう形でできるか。老人の行動現象といいますか行動を、どんなところへ日常行っているとか、ビデオを取ったり、さまざまなことをして、そして当然学者の意見を聞く委員会を作ったりして、満を持して走らせたわけです。走らせてからも、いろいろアンケート調査をやっているんです。具体的に乗った人に、このバスをどうしたらよいのかとか、どういうルートが良いのか聞いています。武蔵野市には「交通空白地帯」が4つあったんです。近くのバス停や駅から500m離れているとかですね。鉄道の駅からだと500mで円を描くんですね。バスの場合は300mで円を描くわけです。その円の外側は交通手段が無いわけです。そういうところを「交通空白地帯」と言っています。大都会でもそういうところは沢山あるわけです。手紙の老人の人はそこに住んでいたわけです。4カ所「交通空白地帯」があるということで、武蔵野市では現在までに、3つまでつぶしました。それはいい形の全国発信です。武蔵野市の交通対策課では、その開業で他の自治体からの視察で対応に追われてきました。そのためにいろいろなことを工夫するわけですね。これは一つのいい例です。
路面電車
以上はバスの例ですが、新型路面電車(LRT)というものがありまして、ヨーロッパで走っている完全低床式といいますか、乳母車でも、車イスでもそのまま横にスライドして乗れる路面電車を熊本市交通局がコップスリー(COP3)の開かれた1997年7月に導入しました。車両は日本で作っていませんから、ドイツの自動車メーカーの関連会社から輸入したわけです。COP3に向けて人と環境に優しい低床路面電車です。それで我々は「熊本効果」と言っていますが、ものすごく評判になって、全国から視察が押し寄せて、熊本市交通局も元気になったわけです。また、広島には「グリーンムーバ」という車両を、ドイツから空輸しました、現在は何両かで走っています。
みんなの力で廃止を!
今は情報社会ですから、いったん良いことをすると非常に広がるわけです。熊本効果、広島効果、武蔵野効果、全国発信ですよね。逆な意味で、こちらの地元でJRバスがこれだけ大規模に路線廃止を認めた場合ですよ、どれだけ日本全体に与える悪影響は計り知れないかということです。先例になりますよね。是非、ここで押し戻して、一筋縄で行きませんが、いろんな手だて、国会議員にも活躍してもらわなきゃいかんでしょうし、先ほど高校の先生の発言もありましたように、通学生が学校に通えないわけでしょ。それをどう守るのかということは大切です。そういう意味では幅広い共闘運動が必要でしょうね。JR可部線という三段峡にいく広島の鉄道の廃止反対では、地元の旅館業者とか、地元の高校生とかが行進して、沿線を朝から歩いていって炊き出しなんかをして、それが大々的にマスコミに紹介されたりして勝ち取っています。参加することによって意識を変えると言いますから、いろいろな手段が使えると思うんですよ。やっぱりこれだけ大規模な廃止をするわけですから、やはりここで全面的な運動展開をして、勝ち取っていただいて、愛知でこれだけ頑張ったんだと言うことを全国発信をお願いしたいと思います。
以 上