平成4年ワ第2936号(原告 第四準備書面)


第 四 準 備 書 面

平成四年(ワ)第二九三六号

          第 四 準 備 書 面

原  告翠松園道路対策組合
被  告株式会社さ い と う
 外八名

 右当事者間の道路整備工事同意請求事件につき、原告は左記のとおり弁論を準備する。

    平成五年 六月二八日
右原告訴訟代理人
弁護士    大 和 田 安 春
同      高   津   建   蔵


名 古 屋 地 方 裁 判 所
    民 事 第 六 部 御 中 


       記

一、  黙示の地役権設定契約について
原告の地役権が、黙示的に設定されたものと推認される主たる事情は、左記の諸点に存する。すなわち、
1   訴外朝倉、谷口の両名は、通称「翠松園」と称する分譲予定地を、郊外住宅地として分譲する計画を立て、昭和元年頃これをいずれの土地も、幅員四メートルないし六・五メートルの道路に沿設するようにして、数百筆の土地に分割し、昭和二年頃から右分譲地を順次分譲したのであるが、本件(一) ないし(七)土地を含む翠松園内の道路敷地部分は、右分譲の当初から道路敷地として予定されており、これを他人に譲渡することは、全くなく、完全なる道路の形態に整備されたまま、右朝倉、谷口の両名の共有に残置されていたこと。
2   右朝倉、谷口の両名は、「翠松園」の土地分譲に際し発行したパンフレットに、本件(一) ないし(七)土地を含む道路敷地部分を「道路」と明示し、分譲土地の購入者がこれを「道路」として自由に使用できることを明らかにしたこと。
3   一般に住宅用の分譲土地に「道路」が不可欠であることは、当然の事理に属するところであるが、「翠松園」分譲土地の場合においても、例外ではなく、これを購入する者が、「道路」と表示された土地部分を、通行その他道路としての使用が可能なものと信頼したが故に、右「翠松園」分譲土地の譲渡を受けたものであること。
以上の諸点にかんがみれば、朝倉、谷口の両名は、前記分譲土地を売り渡すにあたり、購入者のために、前記道路敷地に無期限の通行権を含む無償地役権を明示又は黙示的に設定したものというべきである。
二、  本訴地役権の内容について
前記のとおり地役権が設定された結果、「翠松園」分譲土地を購入して、翠松園に居住する者及びその承継人は、いずれも各自の所有土地を要役地とし、本件(一)土地 ないし(七)土地を含む翠松園内の道路敷地部分を承役地とする無償、無期限の通行権を含む地役権を取得したものであるが、右地役権の内容は、要役地たる分譲土地を、近代都市における住宅土地として利用するための設定であるから、右地役権は単なる通行地役権たるに止まらず、近代都市の住宅土地に必要不可欠とされる上、下水道給排水設備、都市ガスの導入設備等を施工することも、当然に包含するものというべきである。
 このことは、前記朝倉、谷口の両名が、翠松園の土地分譲をなすに際し、同園内の道路敷地部分を、将来公道となすべく、当時の守山町(その後、守山市、守山区として現在に至る)に寄附する旨の約定をしていた事実によっても裏付け得るところである。
 すなわち、翠松園内道路敷地部分の寄附による公道化は、諸般の支障により実現しなかったけれども、朝倉、谷口の両名が前記地役権の内容として、通行権のほかに、近代都市の住宅土地に必要不可欠な上、下水道の給排水設備、都市ガスの導入設備の施工を含む「公道」と同一内容のものを考慮していたことは、容易に肯認できるのである。

註: 『第四準備書面』は、『第三準備書面』第一項3の脱落部を補充し、
『第三準備書面』改正版として、平成5年6月28日に提出された

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