平成4年ワ第2936号(原告 訴変更申請書)


訴 変 更 申 請 書

訴 変 更 申 請 書

原  告翠松園道路対策組合
被  告株式会社さ い と う
 外七名

 右当事者間の平成四年(ワ)第二九三六号道路整備工事同意請求事件について、原告は訴状請求の趣旨第二項として次の一項を追加し、かつ左のとおり請求原因を追加陳述する。

   請 求 の 趣 旨 の 追 加

 被告株式会社一商は
(イ) 別紙物件目録(三)記載の土地上に柵を設け、花木を植栽するなど、原告の右土地の通行を妨害してはならない。
(ロ) 同土地上に設置した高さ約一・五メートル、長さ約二・五メートルの柵及び幹の直径約五センチメートルの樹木約五本を撤去せよ。

   請 求 原 因 の 追 加

一、  原告の本訴請求は、翠松園内土地の分譲を受けた同土地所有者から、その有する通行地役権に基づく妨害予防請求訴訟の提起を委託された原告組合が、いわゆる任意的訴訟担当として、被告らに対して提起したものであり、被告らが有する本件 (一)土地及び本件(三) ないし(七)土地(以下「本件土地」という)を、それぞれ承役地とし、翠松園内の分譲土地の購入者またはその承継人がそれぞれ所有する土地を、各要役地として、該土地分譲に際し、明示または黙示的に設定された無期限の無償通行地役権を保全するための訴訟であるところ、右地役権は分譲土地を近代都市における住宅土地として利用する目的で設定されたものであるから、単なる住民の通行権のみに止まらず、承役地たる本件土地を含む道路敷地を公衆用道路として使用することのできるように、何らの制約をもともなわない道路として、分譲土地取得者及びその承継人等のために、提供されたものである。したがって、右地役権の内容は、公道における道路の使用目的と同様に、上・下水道、ガス、電気等の導管設備工事をなし得る権利をも、当然に包含するものであるところ、被告らは該地役権の行使に対し反対の意向を表明しており、将来右道路工事が施工されるときは、これを拒絶して妨害の挙に出る虞があるから、原告は本訴において、将来における地役権に基づく本件土地の導管設備工事等に対する妨害を予防するため、予め被告らに対し、該工事等の承諾を求めるものであることは、原告提出の訴状及び第一ないし第四準備書面に記載のとおりである。
二、 (被告一商に対する妨害排除請求原因の追加)
 ところで、被告株式会社一商は前記第二準備書面第一項に記載のとおり、本件(三)土地内の道路部分に柵を設置して花木を植栽し、同地を自己の庭園として使用するなど原告組合員の通行地役権の行使を妨害しているので、原告は前記承諾請求と同様、原告組合の目的を達成し、かつ組合員たる地役権者の委託に基づき同被告に対し本件(三)土地についての妨害の排除を求めるものである。
三、 (被告ら全員に対する予備的請求原因の追加)
 しかして、仮に前記地役権に基づく原告の主張が認められないとしても、本件土地に隣接する別表記載の翠松園内分譲土地所有者またはその承継人は、本件土地について、それぞれ左記囲繞地通行権を有するので、原告はこの囲繞地通行権に基づく請求原因を予備的請求原因として追加するものであるが、その請求の趣旨は前記地役権に基づく従来の本訴請求の趣旨(訴状請求の趣旨第一項)と同一である。
 すなわち、訴外朝倉・谷口の両名は、翠松園内分譲土地を分割して、本件土地を含む道路敷地を道路として残置したほかは、その余の土地をそれぞれ譲渡した結果、分譲土地はすべて、公路に通ぜざる袋地となったので、分譲地の取得者及びその承継人は民法第二一三条第二項により囲繞地通行権者として、本件土地を含む同園内の道路を通行しうる権利を取得するに至ったものである。(甲第三号証参照)
もっとも、右袋地は、その後における翠松園内道路の約九〇パーセントが公道化された結果、その余の約一〇パーセントに該当する本件土地を囲繞地とする別表記載の袋地に減少した。
なお、この民法第二一三条所定の囲繞地通行権は、いわゆる無償袋地通行権であって、分割、分譲の当事者間にだけ発生するというものではなく、分譲当事者から袋地または囲繞地を譲り受けた特定の承継人との間においても、同様に適用のあるもの(いわゆる適用説・承継説)と解するのが公平の原則に適うものと思料する。したがって被告らが、翠松園土地の分譲者たる前記訴外朝倉・谷口の両名から本件土地を直接譲り受けたもの(被分譲者・特定承継人)ないしは、その者からさらに譲渡を受けた間接の承継人のいずれであったとしても、この無償袋地通行権は、別表記載のとおり、現在の袋地所有者と、その囲繞地たる本件土地所有者の被告らとの間においても適用されるものである。
 しかして、この囲繞地通行権についても、単なる住民の通行権のみに止まらず、下水排水設備または公共下水道に連結するための設備及び市道に埋設の上水道、都市ガスの基幹管からの導入管設備工事(導管工事)をなす権利をも包含するものである。このことは、これらの導管工事が現代生活に不可欠であり、かついわゆる袋地の所有者等は、民法の相隣関係に関する規定及び下水道法第一一条の類推適用により当然に該工事を施工することが肯認されているからである。
四、  よって、原告は、前記地役権に基づく主位的請求による提訴の場合と同様、原告組合の組合員であり、かつ前記袋地の所有権者として囲繞地通行権を有する別表記載の袋地所有者らの委託により、いわゆる任意的訴訟担当として、予備的請求を提起するものである。すなわち、被告らは、原告が本訴の主位的請求原因において主張するとおりの道路整備工事、下水排水設備工事及び都市ガス供給設備工事並びにその保持管理につき、反対の意向を表明しており、将来における該工事の施工に際しては、これに反対して工事妨害の挙に出る虞があるので、これを予防するため、右各工事の施工について、予め被告らの承諾を求める必要がある。よって、原告は被告らに対し、予備的請求の趣旨として、本訴の主位的請求の趣旨(訴状請求の趣旨第一項)と同一の判決を求める次第である。
五、 (被告一商に対する予備的請求原因の追加)
 なお、被告株式会社一商に対する妨害排除の請求原因として、前記第二項において主張した通行地役権に基づく請求が、仮に、理由無しとされたときは、原告は予備的請求原因として、同被告が前記第三項記載の袋地通行権の行使を妨害するものと主張する。
しかして、その場合の予備的請求の趣旨は、本件(三)土地について訴状請求の趣旨第二項として追加したものと同一の妨害排除を予備的に請求するものである。

    平成五年一〇月一五日
右原告訴訟代理人
弁護士    大 和 田 安 春
同      高   津   建   蔵

名 古 屋 地 方 裁 判 所
    民 事 第 六 部 御 中 

 別  表

本件土地につき囲繞地通行権を有する袋地
 
( 略 )



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