平成4年ワ第2936号(原告 第九準備書面)


第 九 準 備 書 面

平成四年(ワ)第二九三六号

          第 九 準 備 書 面

原  告翠松園道路対策組合
被  告株式会社さ い と う
 外七名

 右当事者間の道路整備工事同意請求事件につき、原告は左のとおり弁論を準備する。

    平成七年五月 八日
右原告訴訟代理人
弁護士   高   津   建   蔵

名 古 屋 地 方 裁 判 所
    民 事 第 六 部 御 中 


          記
第一、任意的訴訟担当の権利者本人たる地役権者について
  原告は、平成七年二月二四日付第八準備書面の第一項において、任意的訴訟担当の権利者本人たる地役権者は、具体的には原告提出の訴変更申請書(平成五年一〇月一五日付)添付の別表(一) ないし(六)に記載した袋地合計三六筆の所有者合計三二名が、右権利者本人たる地役権者である旨を陳述したが、右は訴状添付物件目録(一)、(三) ないし(七)の各土地(以下本件土地という)を「道路」として使用する必要のある地役権者をも除外して、右三二名の袋地所有者兼地役権者だけに限定する趣旨ではなく、袋地の所有者以外の地役権者であっても、本件土地を承役地(道路)として使用する必要のあるものは、右にいわゆる「権利者本人」たる地役権者に包含される、との趣旨で陳述したものである。
第二、前記第八準備書面中「権利者本人」の氏名訂正について
  右第八準備書面中、権利者本人の氏名等について誤記を発見したので、以下のように訂正する。
 すなわち、同準備書面の三枚目の表、前から二行目に「矢野勝彦」とあるを「矢野尚勝」と、また同準備書面三枚目の裏、十二行目に「鎌田芳雄」とあるを「鎌田芳雄(承継人鎌田登代)」と、それぞれ訂正する。
第三、被告有限会社◯◯◯◯所有土地について
(一)
  訴状添付物件目録(七)の土地 (以下本件(七)土地という)の所有者である被告有限会社◯◯◯◯は、本件(七)土地が道路用地であることを否認し、道路として使用する必要性もないし、勿論原告には上・下水道、ガス等についての導管工事をする権能(導管権)もない旨主張する。しかしながら、かかる主張は、名古屋地方裁判所昭和五一年(ワ)第五六三号上水道工事同意請求事件について昭和五三年一二月一九日に言渡された確定判決(以下、別訴確定判決という)、(後出甲第二十八号証、甲第二十九号証)の既判力に牴觸するから、これを主張することは許されないものである。
 すなわち、右別訴確定判決は、本件(七)土地を道路用地と認定したうえで、これに上水道の布設工事及び給水装置の工事(導管工事)をすることを肯認しており、この上水道についての導管工事肯認の理由は、本訴原告の訴求する下水道、ガス等の施設についても類推可能というべく、右別訴確定判決の原告のうち中村清藤は、本件(七)土地の近隣に居住し、本件 (七)土地が、その周辺土地のうち最低地であるところより、これに下水を流下せしむる必要があり、換言すれば本件(七)土地(道路用地)を承役地として使用する必要のある地役権者として、導管工事の施工を主張しうる本訴原告の任意的訴訟担当における、「権利者本人」に該当するものである。しかして、被告有限会社◯◯◯◯は、前記別訴確定判決の被告三洋工業株式会社が所有していた本件(七)土地を、該判決の弁論終結の日(弁論終結の日が昭和五三年一二月一九日の判決言渡の日の前であることは明白)の後である平成元年一〇月一六日に競売による売却によって、その所有権移転を受けたものであるから、右別訴確定判決の被告三洋工業株式会社の承継人に該当し、別訴確定判決の既判力の対抗を受けるものである。従って、被告有限会社◯◯◯◯は、別訴確定判決の肯認した本件 (七)土地が道路用地であること及び原告がこれにつき導管工事をする権能(導管権)を有することを否認できないものである。
 仮に、右原告の主張が理由なし、とするも、別訴確定判決によって、上水道につき「導管権」が肯認されている本件 (七)土地について、下水道、ガス等の「導管権」を否認することは、将に信義則に違背し、権利の濫用として許されない。
 また仮に、原告の右主張が理由なしとするも、前記三洋工業株式会社は、名古屋高等裁判所昭和六一年(ネ)第五九五号道路舗装工事同意請求控訴事件において、昭和六三年一二月二〇日利害関係人として、裁判上の和解(甲第一〇号証参照)に参加し、同じく利害関係人として同和解に参加した原告組合及び同事件の当事者たる原告組合員らに対して、前記本件(七)土地を道路として使用せしめるため、名古屋市に寄付(所有権の無償譲渡)することを確約したものであるから、その約定の後である平成元年一〇月一六日に、右本件 (七)土地の所有権を競売による売却により取得した被告有限会社◯◯◯◯は、前主たる三洋工業株式会社の承継人であるから、前記の如く本件 (七)土地が道路用地であることを否認することも、信義則に違背し、権利の濫用として、許されないものである。
(二)
  また、被告有限会社◯◯◯◯は、本件(七)土地が道路でないことの証拠として、乙ハ第一ないし第一一号証を提出するが、これらの証拠によっては本件(七)土地が競売によって売却された事実は肯認できるとしても、本件(七)土地を「非道路用地」と確認し得るものではない。却って、原告提出の翠松園第三回分譲地区画図(甲第二十一号証)によれば、本件(七)土地が、土地分譲の当初より「道路用地」として指定されており、分譲の対象外の土地として取扱われていたことが明認できるのである。
 このことは、右翠松園第三回分譲地区画図(甲第二十一号証)中の一二九番の分譲地(二七五八番の二七一)、(現在の所有者近藤兼重)、(後出甲第三十号証参照)が、同区画図中の一三〇番の分譲地(二七五八番の七五四)、(所有者早川正俊)の西北側に所在して、本件(七)土地に隣接している事実によっても証明することができる。すなわち、若しも本件(七)土地が道路用地でないとすれば、右近藤兼重所有の二七五八番の二七一の土地は、道路に隣接しないこととなり、翠松園の土地分譲における基本形態たる総ての分譲土地は道路に隣接するように分割されて分譲された事実に反することとなり、かかる非現実的な結果は、到底納得できないからである。
(三)
  なお、本件(七)土地は、同所付近の土地のうち、最も低地に所在しており、同所付近の土地(前記別訴確定判決の原告中村清藤の所有土地を含む)から、下水道を自然流下させるためには、本件(七)土地の地下から北西方の翠松園の域外土地に排水する必要があり(名古屋市守山土木事務所作成の道路等整備に関する説明会資料(甲第十一号証)のうち排水系統図参照)、この点からも本件(七)土地を道路として使用する高度の必要性が存在するのである。
第四、被告株式会社一商の所有土地について
(一)
  原告は、前記第八準備書面中第二の(一)において、被告株式会社一商が本件(三)土地につき「囲繞地」であることを争うのは、前訴(イ)事件の確定判決の既判力に牴觸する旨主張したが、仮に右原告の主張が理由なしとするも、同被告は道路用地たる本件(三)土地上に駐車場(車庫)を建築して、右土地の通行を妨害したため、名古屋地方裁判所昭和五九年六月七日付仮処分決定により工作物たる同駐車場(車庫)の撤去、原状に復旧する工事を命ぜられたものである(甲第十六号証、同第十七号証並びに原告の第二準備書面の第一項参照)。しかして、右仮処分決定の拘束力は、現在においても被告株式会社一商に対して、引続き存続しているから、本件(三)土地の有する道路としての機能を妨害する行為は勿論、道路であることを否定するのも、信義則に違反し権利の濫用として、許されないものである。
(二)
  また、被告株式会社一商は、本件(三)土地が「道路」として存続する必要性がない旨主張するけれども、右本件(三)土地の道路は、翠松園地域内から同地域外の公道に通ずる西南方の出入口として、枢要の地位を占めているから、翠松園の住民が本件(三)土地の道路を通行することは勿論、本件 (三)土地を上、下水道の流水用路として使用するためにも、極めて高度の必要性が存在するのである。この事実は、本件(三)土地が翠松園土地分譲当時から存在する道路として、住宅分譲地区画明細図(甲第十九号証)にも、明白に位置づけられているところである。

註:当事者からの申し入れにより、当事者名の一部については匿名としました。


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