平成4年ワ第2936号(原告 第十準備書面)


第 十 準 備 書 面

平成四年(ワ)第二九三六号

          第 十 準 備 書 面

原  告翠松園道路対策組合
被  告株式会社さ い と う
 外七名

 右当事者間の道路整備工事同意請求事件につき、原告は左のとおり弁論を準備する。

    平成七年十月 三日
右原告訴訟代理人
弁護士   高   津   建   蔵

名 古 屋 地 方 裁 判 所
    民 事 第 六 部 御 中 


第一、本件(六)土地及び本件(七)土地発生の経緯
  訴状添付物件目録 (六)の土地(以下本件(六)土地という)の共有者被告三光住宅株式会社(持分六分の一)及び同目録 (七)の土地(以下本件(七)土地という)の所有者被告有限会社◯◯◯◯(合併前有限会社◯◯◯◯)、(以下単に被告◯◯◯◯と略称する)は、右各所有土地が道路敷地である旨の原告の主張事実を否認するので、原告は従来の主張事実に加え、次のとおり陳述する。
(一)
  翠松園土地分譲開始時における翠松園土地のうち、翠松園第三回分譲時における翠松園内道路敷地の大半は、
 (1) 守山区大字小幡字北山二七七三番四二
 (2) 守山区大字小幡字北山二七五八番二八二
 (3) 守山区大字小幡字北山二七五八番二八三
の三筆であった。(末尾添付の翠松園第三回分譲時道路敷地区分図その一、その二、参照)
(二)
  本件 (六)土地及び本件(七)土地の発生の経緯は、以下のとおりである。すなわち昭和一四年八月二八日前記 (一)の (2)記載の二七五八番二八二(後出甲第三十二号証)、(後出甲第三十七号証)の道路敷地から、
 二七五八番三八一(本件(六)土地)、(甲第三十一号証)
 二七五八番三八二(本件(七)土地)、(甲第六号証の六)、(後出甲第三十三号証)
 二七五八番三八三(後出甲第三十四号証)
 二七五八番三八四(後出甲第三十五号証)
 二七五八番三八五(後出甲第三十六号証)
 二七五八番三八六
の各土地が分筆され、さらに昭和四二年四月二四日
二七五八番三八一の道路敷地から
 二七五八番七六〇の土地(後出甲第四十一号証)
が分筆された。(末尾添付の名古屋市守山区大字小幡字北山二七五八番二八二分筆前、分筆後の対比図及び同所同番二八二分筆表、参照)
(三)
  上記のとおり、本件 (六)土地及び本件 (七)土地の発生の経緯に照し、右両土地がいずれも、その発生当初より道路敷地であることは明白である。
第二、本件(七)土地に関する被告◯◯◯◯の主張について
(一)
  被告◯◯◯◯は、一九九五年七月二四日付の準備書面において、原告が、その第九準備書面の第三において陳述した名古屋地方裁判所昭和五一年(ワ)第五六三号上水道工事同意請求事件の昭和五三年一二月一九日言渡判決(以下、別訴確定判決という)の既判力に関する主張に対し、これを失当とする理由の第一点として、「原告は右事件の当事者ではないし、これの承継人でもない。」と反論する。
 しかしながら、斯る反論は、もとよりその理由がない。すなわち、任意的訴訟担当によって原告の提起する本訴請求の「権利者本人」たる例えば中村清藤が右別訴確定判決(甲第二十八号証)の当事者本人であることによって、既判力の主観的範囲に関する要件は充足されるからである。
 つぎに同被告は、既判力の及ばない理由の第二、第三点として、既判力の及ぶ客観的範囲を「水道工事に対する同意請求権についてだけである」旨限定し、かつ「その水道工事も終了している」旨主張するが、右被告の主張も理由がないというべきである。すなわち、原告は既判力の及ぶ客観的範囲を、水道工事のみならず下水道工事をも包含する「導管権」について肯認すべきであると主張するものである。しかのみならず、本件(七)土地の水道管敷設工事及び給水装置工事は未了であって、その理由は、原告が第九準備書面第三の(二)において指摘した土地、即ち本件(七)土地に隣接する二七五八番二七一(近藤兼重所有)が、未だ未建築であることによるものである。
 つぎに同被告は、既判力に関する原告の主張を失当とする理由の第四点として、「別訴確定判決は擬制自白によるものであること」等を挙げるが、擬制自白による判決と雖も既判力を否定することはできないから、この点についても同被告の右主張は理由がないものと思料される。
(二)
  つぎに同被告は、その右(一)記載準備書面において、本件 (七)土地を道路として使用する必要性がないとし、本件(七)土地が最低地であるのは、その左右土地に土盛した人為的行為によるものである旨を主張するが、斯る主張も全く理由がないのである。すなわち、原告提出第九準備書面の第三の(三)における「本件(七)土地は、同所付近の土地のうち、最も低地に所在しており」との趣旨は、同被告が強調するような隣接地との高低差を意味するものではなく、守山土木事務所作成「道路等整備に関する説明会資料」(甲第十一号証)の示すとおり、本件(七)土地がA流域の中で最低地であるとの趣旨であり、同所及びその付近の土地から、下水道による自然流下方式により、その北西方の翠松園域外土地に排水する必要性が高度に存するとの趣旨である。
 また、本件(七)土地が左右隣接地より低地にある理由は、本件 (七)土地が当初より左右の隣接地即ち早川正俊所有二七五八番七五四及び坂井正之所有二七五八番五一五より低地であったため、建築に際し右両名が土留めを目的として擁壁を設けたことによるものであり、同被告主張の『本件(七)土地の左右の土地を、その後土盛りしたという人為的な行為による』との単なる土盛りのみによるものではないのである。
 また、同被告は「仮に下水道敷設が必要としても、地中埋設の方法で原告らのいずれかの土地を利用すればよいのであり、これをしようとせず、本件(七)土地に下水道管を埋設しようとすることは不当に自己の利益を擁護するものである」旨主張する。しかし、原告が敷設を求めているのは、私設下水道ではなく、前記甲第十一号証の資料にいわゆるA流域に居住する原告組合員たる住民全員が利用する公共下水道であって、原告は本件(七)土地に「私道における公共下水道設置要綱」(甲第十四号証)に基づいて、公共下水道の設置を求めるものであり、不当に自己の利益を擁護するものではない。
(三)
  つぎに同被告は、本件(七)土地について、「道路敷地でなく雑種地」との、執行官の現況調査報告書(乙ハ第三号証)の記載を信頼したうえ、六二八万円で本件(七)土地を競落した旨主張するが、右乙ハ第三号証には、執行官の意見の第一項中に、本件 (七)土地が前記(一)に記載の「別訴確定判決」の対象地となっている事実の記載があり、同意見の第二項には「本件土地の地形は、南側が更地状態で帯状の為道路敷地とも認められる状況になっている」旨の記載があり、また同意見の第四項には「本件土地はもともと道路予定地であったところ、永年通行の用に供せられる通路又は道路として使用されず、雑木が生えたままの状態であった」との記載もあり、結局、乙ハ第三号証は、昭和六二年当時の現況に基づいた執行官の現況調査報告書に過ぎず、もとより本件(七)土地について、その道路敷地であることを否定する効力を有するものではない。
(四)
  つぎに同被告は、原告がその第九準備書面中第三の (一)の末項において引用する和解(甲第十号証参照)について、該和解は本件 (七)土地に関しては無効である旨の主張をするが、原告が右和解を引用したのは、和解の有効を主張する趣旨ではなく、同被告の前主たる三洋工業株式会社が利害関係人として和解に参加し、本件(七)土地を道路用地として名古屋市に寄附する旨確約したのに拘わらず、その承継人たる同被告が、本訴において右道路用地であることを否認する行為を、信義則違反、権利濫用に該当する旨主張するものであり、もとより該和解の効力には関係がないのである。




2758番282分筆表


註:当事者からの申し入れにより、当事者名の一部については匿名としました。


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