平成4年ワ第2936号(被告さいとう 第二準備書面)


第二準備書面

平成四年(ワ)第二九三六号

          第 二 準 備 書 面

原  告翠松園道路対策組合
被  告株式会社さ い と う
 外八名


 平成五年六月二五日

右被告株式会社さいとう訴訟代理人     
弁護士  加 藤 洪 太 郎
弁護士  田   原   裕   之


名 古 屋 地 方 裁 判 所 民 事 第 六 部(合議係) 御 中


  被告株式会社さいとうは、この準備書面により、原告の本訴請求の法的根拠について反論する。
一、地役権は存在しない
 原告は、「昭和二年ころ、朝倉、谷口の両名が翠松園分譲土地購入者のために道路敷地に無期限の無償通行地役権を明示または黙示的に設定した」旨主張する(訴状請求原因三)。
 しかし、地役権設定契約は、要役地所有者と承役地所有者との間で締結されるべきところ、要役権者は、当時の個別要役地所有者であったと解さざるを得ないのであるから、被告株式会社さいとう所有地について、誰と誰との間で、それぞれ何時、原告主張にかかる地役権設定契約が締結されたのかの主張が不可欠である。しかし、原告はこの点についての主張をしておらず、これを裏付ける証拠もない。
二、通行地役権の内容に「下水排水設備設置」等は含まれない
また、原告は、「通行地役権の内容には、下水排水設備または公共下水道に連結するための設備、市道に埋設の上水道、都市ガスの基幹管からの導入管設備をすることをも含む」と主張する。(訴状請求原因三)。
 しかし、原告の主張によれば、本件地役権が設定されたのは「昭和二年ころ」というのであり、昭和二年当時に「下水排水設備または公共下水道に連結するための設備、市道に埋設の上水道、都市ガスの基幹管からの導入管設備」は存在しなかったのであるから、当時設定された通行地役権に、原告主張のような内容が含まれるはずがない。
三、対抗要件がない
 通行地役権を被告株式会社さいとうに対して主張するには、要役地の所有権についての対抗要件の具備が必要である。原告は、対抗要件の主張をしていないので、被告株式会社さいとうに対して通行地役権を主張しえない。
四、妨害予防請求権は成立しない
 さらに、原告は、本訴請求の性質が、地役権の妨害予防請求権であるとする(平成五年四月二八日付け第二準備書面、一)。
 しかし、妨害予防請求権として、例えば、原告の地役権行使を妨害すべき被告の一定の行為の排除を求めることはなし得ても、被告に「承諾」の意思表示を求めることまでは妨害予防請求権の内容に含まれない。
五、原告は原告適格を欠く
 原告も右準備書面で認めているように、「通行地役権」なるものの権利主体は個々の要役地所有者でしかありえない。そこで、原告は、原告が任意的訴訟担当した旨主張している。
 しかし、任意的訴訟担当は、例えば組合の業務執行組合員が自己の名で組合財産に関する訴訟を遂行する場合(最判昭和四五年一一月一一日)などを指すのであり、本件のように、個々の組合員が個別に保有する個々の権利を原告組合が包括して訴訟担当する場合をも含むものではない。



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