平成4年ワ第2936号(被告破産会社一商 準備書面)


準 備 書 面

平成四年(ワ)第二九三六号

          準  備  書  面

原  告翠松園道路対策組合
被  告株式会社さ い と う
 外八名

 右当事者間の頭書事件につき、被告破産会社一商は、左記のとおり弁論を準備する。

    平成六年四月十一日

被告破産会社一商破産管財人
       弁護士白   濱   重   人

名古屋地方裁判所
   民事第六部 御中 


               記

一 原告は、第一に、本訴請求が通行地役権に基づく妨害排除請求権によるものだと主張する。
1 しかし、既に反論したとおり、通行地役権は、あくまでも要役地所有者に通行の便益に供するため承役地の所有権に一定の制限を加える物権である。
 したがって、通行地役権による承役地の所有権に対する制限は最小限度に止められるべきものであって、通行地役権があくまでも「通行」地役権である以上、承役地に対する制限は通行に必要な範囲、限度においてのみ認められるべきである。したがって、通行地役権には、原告が主張するような下水道設置工事やガス供給設備工事などを行うことを承役地所有者において受忍すべき内容が本来含まれるものではないし、まして当該道路アスファルトやコンクリート舗装工事を行うことまでも受忍すべき義務を負うものではない。もちろん、地役権設定当事者間において別段の定めがなされれば、その約定に従いその内容が決定されることは当然であるが、本件原告主張にかかるところには当事者間において右約定がなされたとの主張は見当たらない。
2 ところで、原告は、本件通行地役権が、「近代都市における住宅土地として利用する目的のもとに設定されたものである」、「近代都市の住宅土地に不可欠とされる」などといった理由により、下水道給排水設備、都市ガス配管工事を行うことも本件通行地役権の内容に含まれる旨主張する(なおアスファルト、コンクリート舗装工事を行うことが含まれるとの根拠は示されていない)。
 しかし、被告破産会社一商所有土地については、同土地につき原告主張の工事を施工しなくても、原告には何ら不利益はないはずであり、しかも同土地に居住している生活者が「近代都市としての住宅土地」を望んでいない以上、承役地である同土地に対して原告主張のような制限を設けることは苛酷に過ぎ、通行地役権の本来の趣旨にも反する。
3 なお、原告は、本訴請求が通行地役権に基づく「妨害排除請求権」によるものだと主張するが、妨害排除請求に基づき「承諾」請求がなされ得ないことは言うまでもない。
二 第二に、原告は、本訴訴訟物を「囲繞地通行権」に求める。
1 しかし、前記通行地役権について述べたところは囲繞地通行権についても同様であり、原告の請求が囲繞地通行権に基づき理由付けられるところではない。
2 また、原告は、被告破産会社一商所有土地との関係においては、二七七三番五〇の土地(所有者松本正則)が囲繞地通行権を有する袋地だとする。
 しかし、右袋地とされる土地については、その南側が公道に接しており、右土地はそもそも袋地ではない。
第二 求釈明
1 原告は、本件被告破産会社一商所有土地を通行することによってどこの道路に通じようとしているのか。
2 本件被告破産会社一商所有土地につき、下水道、ガス供給設備等を施せないとした場合、どのような不利益を被るのか。



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