公 判 記 録 No.44

 

第一四回準備手続調書
 
事件 の 表示  平 成 四 年 ワ 第 二 九 三 六 号
 
期    日  平成七年一〇月三〇日午後一時一五分
 
場    所  名古屋地方裁判所民事六部準備手続室
 
裁  判  官  作  原  れい子
 
裁判所書記官  山  田  高 久 
 
 
 
当事者の出頭状況等(民訴法第一四三条第一項第四号の
 
事項)
 
原 告 代 理 人     高   津   建   蔵
 
被告株さいとう代理人  田   原   裕   之
 
同           加   藤   洪 太 郎
 
 
 
被告株一商破産管財人  白   濱   重   人
 
被告三光住宅株代理人  水   野   弘   章
 
被 告 丹 羽 代 理 人  中   山   敬   規
 
被告有○○○○代理人  伊   神   喜   弘
 
被        告  小   川   智 慧 子
 
                     各 出 頭
 
被        告  亀   澤   大 八 郎
 
                     不 出 頭
 
被        告  竹   下   一   男
 
                     不 出 頭
 
                     (公示送達)
 
 
当  事  者  の  陳  述  等
 
 原   告
 
      準 備 書 面(一 〇 月 三 日 受 付)陳 述
 
 証 拠 関 係 別 紙 の と お り
 
 裁 判 官
 
      別 紙 の と お り 準 備 手 続 の 結 果 を 要 約
 
 原告及び被告ら(但し、被告亀澤、同竹下を除く)
 
      右 準 備 手 続 の 要 約 に 異 議 は な い。
 
 裁 判 官
 
      準 備 手 続 を 終 結 す る 旨 告 知
 
裁判所書記官  山  田  高 久
 
 
要 約 調 書
 
(平成七年一〇月三〇日作成)
 
平成四年(ワ)第二九三六号 公共下水道設備工事同意等請求事件
 
            原       告   翠 松 園 道 路 対 策 組 合
 
            被       告   株 式 会 社 さ い と う
 
            同           破産者株式会社一商
 
                         破産管財人 白 濱 重 人
 
                       (以下「株式会社一商」という。)
 
            同           小   川   智  慧  子
 
            同           丹   羽   誠
 
   同         亀 澤   大  八  郎
 
   同         竹   下   一 男
 
   同         三 光 住 宅 株 式 会 社
 
   同         有 限 会 社  ○ ○ ○ ○
 

     要  約  調  書

 
 原 告
 
(請求の趣旨)
 
1 原告に対し、被告株式会社さいとうは、別紙物件目録記載一の土地につき、被告株式会社一商は、同目録記載の
 
 二土地につき、被告小川智慧子は、同目録記載三の土地につき、被告丹羽誠は、同目録記載四の土地につき、被告
 
 亀澤大八郎、同竹下一男、同三光住宅株式会社は、同目録記載五の土地につき、被告有限会社○○○○は、同目録
 
 記載六の土地につき、
 
(一) 原告が、名古屋市に対し、名古屋市私道整備要綱(昭和四九年三月一三日制定)による整備工事施行申請及び
 
  私道における公共下水道設置要綱(昭和六一年四月一日施行)による公共下水道設置申請をし、これに基づき、
 
  別紙図面記載の道路整備工事及び下水排水設備工事をし、その保持、管理すること
 
(二) 原告が、東邦ガス株式会社に対し、都市ガスの供給設備工事の申込みをし、かつこれに基づき、別紙図面記載
 
  のガス供給設備工事をし、その保持、管理をすること
 
 をそれぞれ承諾せよ。
 
2 被告株式会社一商は、原告に対し、
 
(一) 別紙物件目録記載二の土地上に柵を設け、花木を植栽するなどして、原告組合員である付近住民の右土地の通
 
  行を妨害してはならない。
 
(二) 同土地上に設置した高さ約一・五メートル、長さ約二・五メートルの柵及び幹の直径約五センチメートルの樹
 
  木約五本を撤去せよ。
 
3 訴訟費用は被告らの負担とする。
 
 との判決を求める。
 
 
 
(請求原因)
 
【請求の趣旨1につき】
 
一(原告の当事者適格)
 
 1(原告の訴訟能力について)
 
  (一) 原告は、昭和三五年一二月、名古屋市守山区(当時は守山市)大字小幡字北山二七七三番地、二七五八番地、
 
   二七五七番地、二七六一番地(通称翠松園)内に居住する者(約四四〇世帯)を正組合員、同地内に財産を有
 
   するのみで居住しない者を準組合員として発足した団体であり、翠松園地内道路の使用利権の保持及び右に付
 
   随する一切の業務を行う団体である。
 
  (二) 原告は、規約をもって、目的、構成員を定めているほか、理事長、副理事長、常任理事、理事等の役員をお
 
   き、前三者の役員決定は、他の議決事項同様、組合員三分の二以上出席の総会において、二分の一以上の賛成
 
   で選任されることとし、通常総会は毎年四月に開催し、組合の予算は組合費、寄付金等をもってまかない、組
 
   合費の徴収方法は理事会が決定し、組合員の資格喪失事由等の定めもある(甲第一号証)。
 
  (三) 以上によれば、原告は、団体としての組織を備え、多数決の原則が行われ、構成員の変更にかかわらず団体
 
   が存続し、その組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理等団体としての主要な点が確定しているこ
 
   とから、権利能力なき社団に該当する。
 
 2(任意的訴訟担当について)
 
  (一) 本訴は、道路に関する使用利権の保持をその設立目的とする原告に対し、地役権者又囲繞地通行権者である
 
   原告組合員が、地役権又囲繞地通行権に基づく妨害予防請求訴訟ないし妨害排除請求訴訟の提起を委託したも
 
   のである。
 
    原告自体は、地役権者又囲繞地通行権者ではなく、右委託に基づく原告の本訴請求は、いわゆる任意的訴訟
 
   担当に該当するけれども、原告の正当な業務目的に適うものであって、任意的訴訟担当として許されるもので
 
   ある。
 
  (二) (権利者本人について)
 
    本訴において、任意的訴訟担当における権利者本人となるべき者は、本件一ないし六の各土地(以下「本件
 
   土地」または「本件各土地」という。)周辺の原告組合員たる住民であるが、具体的には、
 
    (1) 本件土地を道路として使用する必要のある原告組合員たる住民は、本件各土地を承役地とし、その所有
 
     する各土地を要役地とする地役権者として、権利者本人に該当する。
 
    (2) 別紙記載の袋地合計三六筆を所有する合計三二名の各所有者が、現に囲繞地通行権を有し、権利者本人
 
     に該当する。
 
     (以下右(1) 及び(2)の権利者本人を総称して「本件権利者本人」という。)
 
二(被告らによる土地所有の事実)
 
  被告株式会社さいとうは、別紙物件目録記載一の土地(以下「本件一土地」という。)を、同株式会社一商は、
 
 同目録記載二の土地(以下「本件二土地」という。)を、同小川智慧子は、同目録記載三の土地(以下「本件三土
 
 地」という。)を、同丹羽誠は、同目録記載四の土地(以下「本件四土地」という。)を、同亀澤大八郎、同竹下
 
 一男、同三光住宅株式会社は、同目録記載五の土地(以下「本件五土地」という。)を、同有限会社○○○○は、
 
 同目録記載六の土地(以下「本件六土地」という。)を所有している。
 
三(旧所有者による地役権の設定−選択的請求原因)
 
 1(地役権の発生原因事実)
 
  (一) 朝倉千代吉及び谷口藤次郎(以下「朝倉ら」という。)は、もと旧守山町大字小幡字北山二七五八番、同二
 
   七七三番の合計約一五万坪の二筆(以下「本件旧土地」という。)の土地を共有していた。
 
  (二) 朝倉らは、大正末ころ、本件旧土地を翠松園と称する郊外住宅地として分譲する計画を立て、昭和元年ころ、
 
   同土地内に幅員四メートルないし六・五メートルの道路に面するようにして開設した上、本件旧土地を数百筆
 
   の土地に分割した(以下「本件分割」という。)が、いずれの分譲地も右道路に接するように分割された。
 
  (三) 本件各土地は、いずれも前記道路敷地として分筆された道路の一部であり、その形態は、別紙図面一ないし
 
   六のとおりである。
 
  (四) 朝倉らは、前記道路敷地を同人らの共有に残したまま昭和二年ころから右分譲地を順次譲渡するに至ったが、
 
   その分譲にあたって発行されたパンフレットにも、本件各土地を含む道路敷地部分を道路として明示し、分譲
 
   土地の購入者がこれを随意に通行できることを明らかにしていた(甲第一九ないし第二一号証)。
 
  (五) また、前記道路敷地は、これを他人に譲渡することなく、完全なる道路の形態に整備されたまま、朝倉らの
 
   共有に置かれていた。
 
    更に、一般的に、住宅用の分譲地に道路が不可欠であることは当然の事理に属することである。
 
  (六) 以上の点から、朝倉らは、前記分譲地を売り出すにあたり、購入者のため、前記道路敷地に無期限の通行権
 
   を含む無償通行地役権を明示又は黙示的に設定したものというべきである。
 
 2(地役権として保護されるべき権利等について)
 
  (一) 前記のとおり、翠松園に居住する者及びその承継人は、いずれも各自の所有土地を要役地とし、本件各土地
 
   を含む前記道路敷地を承役地とする、公衆用道路として使用できるように、何らの制約の伴わない無償、無期
 
   限の通行地役権を含む地役権を取得した。
 
  (二) 朝倉らによる前記地役権の設定は、要役地たる分譲地を、近代都市における住宅土地として利用する目的の
 
   ものであるから、その内容は、単なる通行地役権のみにとどまらず、公道における道路の使用目的と同様に、
 
   近代都市の住宅土地に必要不可欠とされる下水排水設備又は公共下水道に連結するための設備、市道に埋設の
 
   上水道、都市ガスの基幹管からの導入管設備(以下「諸設備」という。)の工事をなし得る権利も当然に含ま
 
   れるというべきである。
 
 3(被告らの承諾を求める必要性)
 
  (一) 原告は、組合員たる地役権者の委託に基づき、右の権利内容を実現するため、本件各土地についても、名古
 
   屋市私道整備要綱(昭和四九年三月一三日制定)による道路整備工事及び私道における公共下水道設置要綱(
 
   昭和六一年四月一日施行)による公共下水道設置の各工事と、東邦ガス株式会社の都市ガスの供給工事(以下、
 
   右各工事を総称して「本件各工事」という。)をする必要があるとともに、将来にわたりこれを保持、管理す
 
   る必要がある。
 
  (二) 右各工事内容は、別紙道路標準横断図記載のとおり、翠松園の公道において現に施行中の道路工事の規模と
 
   同一の内容であるが、本件各工事の実施及び工事完成後の保持、管理にあたり、名古屋市及び東邦ガス株式会
 
   社は、本件各土地の所有者たる被告らの承諾を必要としている。
 
  (三) 現在、翠松園内の他の道路につき、舗装、側溝、下水道設備工事及び都市ガス供給設備工事が施工中であり、
 
   本件各土地の所有者である被告らからも、緊急に右承諾を得る必要があるから、予め承諾を求める必要がある
 
   (甲第二号証、第一一号証及び第一二号証)。
 
  (四) しかるに、被告株式会社一商は、本件二土地の道路部分につき、柵を設置して、花木を植栽し、自己の庭園
 
   として使用するなど、原告組合員の通行地役権の行使を妨害する行為に現実に出ているので、原告が本訴にお
 
   いて請求する道路整備工事、下水排水設備工事及び都市ガス供給設備工事の実施並びにその保持、管理を施工
 
   するとき、これを妨害する虞があるものというべく、その他の被告らも、右のような通行妨害という行動には
 
   出ていないものの、原告の要求する道路整備工事、下水排水設備工事及び都市ガス供給設備工事ならびにその
 
   保持、管理については、これに反対する意向を表明しているので、右各工事を実際に施工する際には、右各工
 
   事を妨害する虞があるものといわなければならない。
 
    更に、被告らは、現に本訴において、右承諾要請を拒否していることが明らかであるところ、右行為は、原
 
   告の地役権行使もしくは囲繞地通行権の行使としての下水道、ガス等の導管権の行使をも妨害するものと評価
 
   できるので、選択的に妨害排除請求権に基づき本訴請求を行うものである。
 
  (五) また、仮に被告株式会社一商が主張するように、現在居住している者が近代都市としての住宅土地を望んで
 
   いないとしても、将来において、同土地居住者が、これらの諸設備の利用を希望した場合には、これを本件二
 
   土地の道路敷地へ敷設することが不可欠となる。
 
    更に、本件二土地の道路敷地への下水道及び都市ガス供給設備等の敷設が不可能となった場合、原告組合員
 
   は、直ちに直接的な不利益を被るわけではないとしても、将来、同土地を含め、翠松園全域に下水道が完備さ
 
   れたにもかかわらず、本件二土地のみ下水道が不備である場合、汚水及び生活排水の側溝への放流にともなう
 
   臭気等、非衛生的な環境を強要され、間接的な不利益を被るものである。
 
  (六) また、本件六土地については、被告○○○○は、道路として使用する必要性及び下水道管敷設の必要性がな
 
   い旨主張するが、もし、本件六土地が道路用地でないとすれば、二七五八番の二七一土地(近藤兼重所有)が
 
   道路に隣接しないことになり、全ての分譲土地を道路に隣接するように分割してきた翠松園の土地分譲におけ
 
   る基本形態に反し、非現実的である(甲第二一号証)し、本件六土地は、同所付近の土地のうち、最も低地に
 
   所在しており、同所付近の土地から、下水道を自然流下させるためには、本件六土地の地下から北西方の翠松
 
   園の域外土地に排水する必要があり(甲第一一号証)、この点からも本件六土地を道路として使用すること及
 
   び下水道管を敷設する高度の必要性がある。
 
 4 被告らに対する対抗要件の欠如について(被告らの対抗要件の抗弁に対する再抗弁)
 
  (一) 被告らは、昭和四一年以降に売買、贈与、競落等を原因として本件各土地の所有権を取得したが、右時点で
 
   は、分譲当時から相当の長期間を経過しており、右取得当時において、本件各土地の形状は、既に翠松園内の
 
   道路の一部として、完全な道路の形態に整備され、かつ一般公衆用道路としての機能を充分に果たしており、
 
   自動車を含む不特定多数人の通行の用に供されていた。
 
  (二) 被告らは、本件各土地を取得した当時、その現状がいずれも道路であることを知りながらこれを取得したも
 
   のである。
 
    したがって、被告らの本件各土地の所有権を取得した原因の如何に係わらず、仮に本件各土地には通行地役
 
   権という明確な権限の存在することを知らなかったとしても、何らかの通行の権利があって、所有権を取得し
 
   た被告ら自身といえども、これを侵害してはならない義務を負担するものであることを、被告らにおいて充分
 
   認識しながら、本件各土地を取得したものである。
 
  (三) 更に、被告株式会社一商は、本件二土地の道路部分につき、柵を設置して、花木を植栽し、自己の庭園とし
 
   て使用するなど、原告組合員の通行地役権の行使を実力で阻止しており、いわゆる背信的悪意者と称すること
 
   ができる。
 
    その余の被告らも、前記の如き本件各土地の現況が道路であって、転売、入担保以外になんら使用方法も考
 
   えられないにもかかわらず、前記のとおり一般公衆用道路であることを充分に知悉して本件各土地を取得しな
 
   がら、また、本件各土地の導管工事施工を承諾しても道路としての価値の減少は極めて些細なものであるのに
 
   もかかわらず、原告より被告らに対し懇願した通行地役権に当然包含される導管工事の施工についての承諾要
 
   請を拒否しているものである。
 
    この結果、諸工事施工を拒否された付近の住民の被る損害、迷惑、不便は極めて大であって、環境衛生上の
 
   不都合もまた甚大である。
 
  (四) 右のとおり、右工事の施工を受けられない原告組合員の損害と、右工事の結果受ける被告らの損害を比較す
 
   るとき、被告らが右導管工事を拒むことは、まさに信義則違反、権利の濫用として許されないものである。
 
    かかる場合、被告らは、地役権の登記のないことを主張しうる正当な利益を有する第三者には該当しないも
 
   のというべきであるから、原告は、被告らに対し、登記なくして地役権をもって対抗しうる。
 
四(囲繞地通行権に基づく請求−選択的請求原因)
 
 1 朝倉らは本件分割後、本件各土地を含む道路敷地を除き、その余の土地をそれぞれ譲渡した結果、右分譲地は
 
  全て公路に通ぜざる袋地となったことから、分譲地の取得者及びその承継人は、囲繞地通行権者として本件各土
 
  地を含む翠松園内の道路を通行しうる権利を取得するにいたった。
 
   その後、右道路敷地の約九〇パーセントが公道化されたものの、残り約一〇パーセントに該当する本件各土地
 
  については、別表記載のとおり各所有者につき依然として袋地状態にあることから、同人らにつき囲繞地通行権
 
  が発生している。
 
 2 右囲繞地通行権についても、単に住民の通行権に止まらず、諸設備もまた、現代生活に不可欠であることから、
 
  右囲繞地通行権に包含されるというべきである。したがって、囲繞地通行権を含む民法の相隣関係に関する規定
 
  及び下水道法一一条の類推適用により、袋地所有者は、被告らに対し、諸設備の工事をなすについての同意を求
 
  めることができる。
 
 3(被告らの同意を必要とする事情)
 
   請求原因三の3(一) ないし(六)に同じ
 
五 別訴の確定判決及び和解について
 
 1 翠松園内道路の所有者らと同園内の住民との間において、道路使用をめぐり、過去に発生した紛争が訴訟によ
 
  って争われた結果、次の確定判決及び和解が存在する。
 
  (一) 名古屋地方裁判所昭和三六年(ワ)第五三五号所有権確認等請求事件及び同庁昭和三九年(ワ)第二三九一号通
 
   行権確認等反訴請求事件(第一審判決言渡期日昭和四〇年一〇月一六日。以下、両事件を併せて「イ事件」と
 
   いう。)(甲第三号証、第二二号証)
 
  (二) 同庁昭和四四年(ワ)第六八五号上水道工事同意請求事件(判決言渡期日昭和四八年一二月二〇日。以下「ロ
 
   事件」という。)(甲第二四号証、第二六号証)
 
  (三) 同庁昭和五一年(ワ)第五六三号上水道工事同意請求事件(判決言渡期日昭和五四年七月一七日。以下「ハ事
 
件」という。)(甲第二五号証、第二七、第二八、第二九号証)
 
  (四) 同庁昭和六一年(ネ)第五九五号道路舗装工事同意請求控訴事件(以下「ニ事件」という。)(甲第一〇号証)
 
 2 右各確定判決と被告ら及び原告組合員との関係について
 
  (一) イ事件について
 
   (1) 被告株式会社一商、同小川及び同丹羽は、同被告ら所有の本件二ないし四の各土地について、囲繞地が発
 
    生するとの原告主張事実を否認ないし争う。
 
     ところで、被告株式会社一商、同小川及び同丹羽の所有する本件二ないし四の各土地は、所在及び地番名
 
    古屋市守山区大字小幡字北山二七七三番の四二、地目山林、地積一町五反(四八六九平方メートル)の土地
 
    (以下「旧二七七三番の四二土地」という。)から分筆された土地であり(甲第二三号証の一ないし二、九、
 
    一〇)、被告一商は昭和五八年七月一五日、同小川は昭和五四年八月一五日、同丹羽は昭和四三年五月七日
 
    に各取得したものである(甲第六号証の三及び四)。
 
     したがって、被告株式会社一商、同小川及び同丹羽は、イ事件の当事者である本訴原告(反訴被告)朝倉
 
    丞作の承継人として、同判決の既判力の拘束をうける立場にある。
 
     右イ事件では、旧二七七三番の四二土地につき、同事件被告(反訴原告)らの所有地との関係において、
 
    囲繞地通行権の制限を受けることが確認されているところ、イ事件被告(反訴原告)である横山勝彦、鳥居
 
    敏、矢野尚勝はいずれも本件権利者本人に該当するから、右判決の既判力は、被告一商、同小川及び同丹羽
    
    にも及ぶものである。
 
     したがって、同被告らが、本件二ないし四の各土地につき囲繞地があるとの原告の主張を否認することは、
 
    右既判力に抵触するものであり許されないこととなる。
 
   (2) 右 (1)の被告株式会社一商に対して、イ事件の既判力が及ばないとしても、同被告は、道路用地たる本件
 
    二土地上に駐車場(車庫)を建築して、右土地の通行を妨害したため、当庁昭和五九年六月七日付仮処分決
 
    定により工作物たる同駐車場(車庫)の撤去、原状に復旧する工事を命ぜられたものである(甲第一六及び
 
    第一七号証)。右仮処分決定の拘束力は、現在においても、被告株式会社一商に対して、引き続き存続して
 
    いるから、本件二土地の道路としての機能を妨害する行為及び同土地が道路であることを否定する行為は、
 
    信義則に違反し、権利の濫用として許されないものである。
 
  (二) ロ事件について
 
    被告小川及び同丹羽は、同被告ら所有の本件三及び四の各土地について、上下水道及びガス等の導管権を全
 
   て否認する。
 
    しかしながら、被告丹羽は、ロ事件の被告本人であり、被告小川は、同事件の被告小川孫次郎(以下「孫次
 
   郎」という。)から同事件の口頭弁論終結後である昭和五四年八月一五日に贈与を原因として本件四土地を取
 
   得した者である(乙イ第一号証)から孫次郎の承継人にあたるところ、同事件の判決では、本件三及び四土地
 
   について、上水道につき導管権を認めている。
 
    ロ事件の原告である横山勝彦、鳥居敏、安藤信次郎承継人安藤昌夫ほか一名、鎌田芳雄、矢野尚勝及び西野
 
   晴子らはいずれも本件権利者本人に該当するから、右判決の既判力は、被告小川及び同丹羽にも及ぶものであ
 
   る。
 
    したがって、同被告らが、本件三及び四の各土地につき上水道の導管権を否認することは、右既判力に抵触
 
   するものであり許されないこととなる。
 
    そして、上水道について導管権が既判力をもって肯認されている本件三及び四土地につき、下水道及びガス
 
   についての導管権を否認することは、正に信義則に反し、権利の濫用に該当するものである。
 
  (三) ハ事件について
 
    被告三光住宅及び同○○○○は、同被告ら所有の本件五及び六の各土地について、上下水道及びガス等の導
 
   管権を全て否認する。
 
    しかしながら、被告三光住宅は、ハ事件の被告木下福重(以下「木下」という。)から栗木章を経て同事件
 
   の口頭弁論終結後である平成三年四月九日に売買を原因として本件五土地の持分六分の一を取得した者である
 
   から、木下の承継人に当たる(甲第六号証の五、第三一号証)。
 
    また、被告○○○○は、有限会社○○○○(以下「○○○○」という。)を吸収合併したものであり、右○
 
   ○○○は、右ハ事件の被告三洋工業株式会社(以下「三洋工業」という。)から同事件の口頭弁論終結後であ
 
   る平成元年一〇月一六日に競売による売却により、その所有権を取得したものであるから、被告○○○○は、
 
   三洋工業の承継人に当たる(甲第六号証の六)。
 
    同事件においては、本件五及び六土地について、上水道につき導管権を認めているところ、ハ事件の中村清
 
   藤は本件権利者本人に該当するから、右判決の既判力は、被告三光住宅及び同○○○○にも及ぶものである。
 
    したがって、同被告らが、本件五及び六土地につき上水道の導管権を否認することは、右既判力に抵触する
 
   ものであり許されないこととなる。
 
    そして、上水道について導管権が既判力をもって肯認されている本件五及び六土地につき、下水道及びガス
 
   管についての導管権を否認することは、正に信義則に反し、権利の濫用に該当するものである。
 
  (四) ニ事件について
 
    被告○○○○は、本件六土地が、道路用地であることを否認して、下水道及びガス管についての導管権を否
 
   認している。
 
    しかし、右三洋工業は、ニ事件において、昭和六三年一二月二〇日、利害関係人として、裁判上の和解に参
 
   加し(甲第一〇号証)、同じく利害関係人として同和解に参加した原告及び同事件の当事者たる原告組合員ら
 
   に対して、本件六土地を道路として使用せしむるため、名古屋市に寄付(所有権の無償譲渡)することを確約
 
   したものであり、その約定の後である平成元年一〇月一六日、右三洋工業から、○○○○が本件六土地を競売
 
   による売却により所有権取得し、その後に、被告○○○○が○○○○を吸収合併したのであるから、同被告は、
 
   三洋工業の承継人である。
 
    よって、同被告が、本件6土地を道路用地であることを否認することは、信義則に違反し、権利の濫用とし
 
   て許されないものである。
 
六 よって、原告は、被告らに対し、選択的に地役権又は囲繞地通行権に基づき、更には民法の相隣関係に関する規
 
 定及び下水道法一一条の類推適用により、妨害予防請求権又は妨害排除請求権として、請求の趣旨1のとおりの承
 
 諾を求める。
 
 
 
 
【請求の趣旨2につき】
 
一(本件三土地の従前利用形態について)
 
  本件分割以降、守山区大字小幡字北山二七七三番地地内における道路敷地は、同番四二の一筆であったが、昭和
 
 四〇年ころ、朝倉丞作がこれを十余筆に分筆した結果、本件一ないし四土地等の道路敷地を生ずるに至った。
 
  しかして、本件二土地は、翠松園土地分譲開始以来、株式会社一商による通行妨害発生までの間、道路敷地の一
 
 部として、同所同番二一七、本件二土地、同所同番一九五の各土地を経て、市道翠松園線へ段差なく接続し、翠松
 
 園居住者及び近隣居住者のための公衆用道路として利用されてきた。
 
二(株式会社一商による妨害の事実)
 
 1 株式会社一商は、昭和五八年七月一五日、売買により本件二土地を含む、名古屋市守山区大字小幡字北山二七
 
  七三番一九三山林三九三平方メートルの土地所有権を取得するや、本件二土地の道路部分を幅員四メートル、長
 
  さ五メートル、深さ約三メートルにわたって切り崩し、家屋(駐車場)を建設しようとして、翠松園住民の通行
 
  を妨害したため、昭和五九年六月七日、同所付近の住民から名古屋地方裁判所に対し、仮処分の申立てがなされ、
 
  右決定により、駐車場建設工事現場の埋め戻しがなされた(甲第一六、第一七号証)。
 
 2 しかるに、被告株式会社一商は、最近にいたり、本件二土地の道路部分につき、柵を設置して花木を植栽し、
 
  自己の庭園として使用するなど、原告組合員の通行地役権の行使を阻止する行為に現実に出ている。
 
三 本件二土地については、現在、建設省中部地方建設局愛知国道工事事務所により名古屋環状二号線建設工事が開
 
 始し、工事用フェンスが設置されていることから通行が不可能となっているが、同工事完成後は、本件三土地から
 
 本件二土地を経て一般国道三〇二号線歩道及び幅員四メートルのサービス道路に接続し、跨道橋を介して市道翠松
 
 園線に接続する設計となっている。
 
  なお、本件二土地と右歩道部とは九〇センチメートルの高低差がある旨を被告株式会社一商は主張するけれども、
 
 これをスロープ又は階段として利用することが可能であるから、右工事完成後に本件二土地を道路として利用する
 
 ことは何ら問題はないし、同土地は、翠松園地域内から同地域外の公道に通ずる西南方の出入口として枢要の地位
 
 を占めているから、翠松園の住民が同土地を通行する必要性が高い。
 
四(原告の当事者適格)
 
  原告の本訴が、任意的訴訟担当として認められる理由は、請求の趣旨1について述べたところを引用する。
 
五 よって、原告は、被告株式会社一商に対し、選択的に通行地役権又は囲繞地通行権に基づき、妨害排除請求権と
 
 して、請求の趣旨2のとおりの妨害排除を求める。
 


註:当事者からの申し入れにより、当事者名の一部については 匿名としました。 


 

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