平成2年ワ第1109号(原告 準備書面)


準 備 書 面

   準  備  書  面

原  告翠松園道路対策組合
被  告新 興 商 事株式会社
 外一名
  右当事者間の平成二年(ワ)第一一〇九号道路工事承諾請求事件について、原告は左記のとおり弁論を準備する。

一、  本訴原告の当事者適格について本訴原告組合は「翠松園地域内道路の使用利権の保持」等を、その目的として、「翠松園」地域内の居住者等をその組合員として設立された法人に非ざる社団であるが、本訴請求は、右原告たる「翠松園」地域内の居住者の有する通行地役権等道路の利権保持を右組合の設立目的としているところより、該目的を達成するために、組合員の委託とは別個に、翠松園道路対策組合自身として、いわば自発的に提訴したものである。
 しかしながら、いわゆる事実たる事情としては、本訴の提起について、組合員たる地役権者より、地役権等による道路の使用利権を保持するために、訴訟の提起を委託された事実の存在することを否定するものではない。
 しかして、仮りに、本訴の提起が、組合員の委託に基づくものであり、したがって任意的訴訟信託の疑いがあるとしても、斯る委託は、前記原告組合設立の目的に適うことでもあり、かつ他方弁護士法第七二条、信託法第一一条の精神に反するものでもないから、必ずしも禁止さるべきではないのである。
二、  次に、原告組合は請求の趣旨第一項にいわゆる名古屋市私道整備要綱による整備工事施工の申請適格を有するか、否か、の点であるが、同要綱第四条によれば、該申請は私道利用者に認められており、同要綱第五条によれば、該申請は当該私道利用者の総意に基づき代表者を定めて行うものとする旨定められているところ、原告組合が私道利用者にして、かつ通行地役権者である「翠松園」地域内の居住者の全員をその組合員とするものである以上、原告組合自体を私道利用者に該当するものと解し得ることは、明白であるから、これが私道整備施工の申請適格を有することは、いうまでもないところである。
三、  請求の趣旨第二項にいわゆる下水排水設備工事及びこれが保持管理について。
 右工事及び保持管理は、訴外名古屋市が前記私道整備要綱による整備工事及びその保持管理として施工するものを指称する。しかして、右整備工事の具体的内容については、訴外名古屋市において施工するところであって、前記要綱によっても、これを知得することができない。しかしながら、翠松園内道路の八五パーセント以上が、和解等により公道化した現在においては、右公道について現に名古屋市が施工中の道路工事との均衡上からも、これと同程度の整備工事がなされることを期待するものである。
四、  請求の趣旨第三項にいわゆる都市ガスの供給設備工事について。
 右供給設備工事を訴外東邦ガス株式会社に要請しうる根拠としては、翠松園居住の住民が、本件土地を含む同園地域内の道路に対し有する通行地役権の従たる内容として、これを有するものであること。すなわち、右住民の有する地役権は、訴状請求原因第一項において既述の如く、分譲土地を近代都市における住宅用地として利用する目的のもとに設定されたものであるから、名目は通行地役権であっても、その内容は単なる通行権のみに止まらず、下水排水設備及び上水道、都市ガスの導入設備をなし得る権利を当然に包含するものであるところ、原告組合は、組合員の右地役権に基づく都市ガス導入権を保持すべき目的を有するので、原告はこの目的を達成するため、ガス事業者たる訴外東邦ガス株式会社に対し都市ガス供給の申込をなし得るところ、同訴外会社はガス事業法第一六条第一項の規定があるのに拘らず、ガス導入工事施工の前提として、本件土地所有者たる被告らの承諾を要求しているので、原告は止むなく本訴において該承諾を請求する次第である。
五、  結論。
 以上の次第であるから、原告は、さきに提出した「訴の変更申立書」記載の「請求の原因の補充」の第二項のうち、結論の項を次のように訂正する。
 よって、原告は翠松園道路対策組合規約(甲第五号証)第三条所定の事業目的たる「翠松園地域内道路の使用利権の保持」の目的を達成するため、本件土地所有者である被告らに対し、(一)昭和四九年三月一三日訴外名古屋市制定の「私道整備要綱」による道路の整備工事施工を名古屋市に申請するについての承諾を求めると共に、(二)訴外名古屋市が本件土地につき、右私道整備要綱に基づき施工する下水排水設備工事及びこれらの保持管理をなすについての承諾を求め、かつ(三)訴外東邦ガス株式会社が、本件土地につき都市ガスの供給設備工事をなすについての承諾を求めるため、本訴請求をなす次第である。
    平成三年 一月二五日日
原告訴訟代理人
弁護士    大 和 田 安 春
同      高   津   建   蔵

名 古 屋 地 方 裁 判 所 御 中


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