平成2年(ワ)第1109号道路工事承諾請求事件


平成三年一一月二七日判決言渡同日原本交付 裁判所書記官
平成二年(ワ)第一一〇九号道路工事承諾請求事件

判     決

        名古屋市守山区大字小幡字北山二七七三番地の八一
           原   告         翠 松 園 道 路 対 策 組 合
           右代表者理事長       冨   永   義   彦
           右訴訟代理人弁護士     大 和 田   安   春
           同             高   津   建   蔵
        住居所  不明
        最後の住所  東京都江東区◯◯◯丁目◯◯番◯号
           被   告         安   達       勇
        名古屋市北区◯◯◯◯丁目◯◯番地
           被   告         新 興 商 事 株 式 会 社
           右特別代理人弁護士     家   田   安   啓

主     文

一 被告安達勇は別紙物件目録(一)記載の土地につき、被告新興商事株式会社は、同目録(二)記載の土地につき、
1 原告が訴外名古屋市に対し、名古屋市私道整備要綱(昭和四九年三月一三日制定)による整備工事施工申請及び私道における公共下水道設置要綱(昭和六一年四月一日施行)による公共下水道設置申請をし、かつ、これに基づき、別紙図面(三)記載の道路整備工事及び下水排水設備工事をし、その保持、管理をすることを、
2 原告が訴外東邦ガス株式会社に対し、都市ガスの供給設備工事の申込みをし、かつ、これに基づき、別紙図面(三)記載のガス供給設備工事をし、その保持、管理をすることを、
 それぞれ承諾せよ。
二 訴訟費用は被告らの負担とする。

事     実

一 当事者の求めた裁判
 1 請求の趣旨
   主文同旨
 2 請求の趣旨に対する答弁(被告会社)
  (一) 原告の請求を棄却する。
  (二) 訴訟費用は原告の負担とする。
二 当事者の主張
 1 請求原因
(一) 原告は、後記住宅地として分譲にかかる翠松園の居住者(約四〇〇世帯)、土地所有者らを組合員とし、翠松園地域内道路の使用利権の保持等を目的として設立された法人に非ざる社団である。
 被告安達は、別紙物件目録(一)記載の土地(以下「本件(一)土地」という。)を、被告会社は同目録(二)記載の土地(以下「本件(二)土地」という。)を、いずれも翠松園地域内に所有しているものである。
(二) 訴外朝倉千代吉、同谷口藤次郎(以下「朝倉、谷口」という。)は、もと旧守山町大字小幡字北山二七五八番、同二七七三番の二筆の土地約一五万坪を共有していた。
 朝倉、谷口の両名は、大正の末ころ、右土地を翠松園と称する郊外住宅地として分譲する計画を立て、昭和元年一二月、これを幅員約四メートルないし六・五メートルの道路敷地を含む数百筆の土地に分筆した。右分譲土地はいずれも右道路に接するように分割された。
 本件(一)(二)土地は、右道路敷地として分筆された道路の一部である。すなわち、本件(一)土地は、別紙図面(一)記載のとおり、東西の長さ約二八メートル、南北の幅員約六・五メートルの地形であり、本件(二)土地は、別紙図面(二)記載のとおり、南北の長さ約一〇〇メートル、東西の幅員約五メートルの地形である。(なお、本件(一)(二)土地は、固定資産税、都市計画税が非課税となっている。)。
 朝倉、谷口の両名は、右道路敷地を共有に残したまま昭和二年ころから右分譲土地を順次譲渡するに至ったが、その分譲にあたって発行のパンフレットには、本件(一)(二)土地を含む道路敷地部分を道路と明示し、分譲土地の購入者がこれを随意に通行できることを明らかにしていた。
(三) 右のような本件(一)(二)土地の分筆ないし分譲土地譲渡の経緯等にかんがみると、朝倉、谷口の両名は、前記分譲土地を売り渡すにあたり、購入者のため、前記道路敷地に無期限の無償通行地役権を明示又は黙示的に設定したものというべきである。したがって、右分譲土地を購入して翠松園に居住する者及びその承継人は、いずれも各自の所有土地を要役地とし、本件(一)(二)土地を含む翠松園内の道路敷地を承役地とする地役権を有する。そして、右地役権は、近代都市における住宅土地として利用する目的のもとに設定されたものであるから、その内容は、単に通行権のみにとどまらず、下水排水設備又は公共下水道に連結するための設備、市道に埋設の上水道、都市ガスの基幹管からの導入管設備をすることも含まれるというべきである。
(四) 本件(一)(二)土地を含む翠松園内の道路敷地は、戦中、戦後の混乱期を経過するに及んで、被告らを含む数十名の者に所有権が譲渡されるに至った。そのため、翠松園の住民と右道路敷地所有者との間で紛争が生じ、訴訟によって争われたが、いずれも住民側が勝訴し、結局、大部分は和解により解決し、名古屋市による道路工事等も施工されるに至っている。
(五) そこで、原告は、前記目的を達成し、組合員たる地役権者の委託に基づき、本件(一)(二)土地についても、名古屋市の私道整備要綱(昭和四九年三月一三日制定)による道路整備工事及び私道における公共下水道設置要綱(昭和六一年四月一日施行)による公共下水道設置の各工事と、東邦ガス株式会社の都市ガス供給工事をする必要があると共に、将来にわたりこれを保持管理する必要がある。
 右各工事内容は、翠松園の公道(前記のように細長い地形の本件(一)(二)土地の両端は、いずれも現在公道に接続している。)において、現に施工中の道路工事の規模と同一の別紙図面(三)記載のような道路舗装、側溝、下水道(雨水、汚水)設備工事及び同図面記載の都市ガス供給工事である。そして、右各工事及び工事完成後の保持、管理にあたり、名古屋市及び東邦ガス株式会社は、本件(一)(二)土地の所有者たる被告らの承諾が必要とされている。
 目下、被告安達は所在不明、被告会社は代表者欠缺の状態で右承諾を得ることができないが、翠松園内の他の道路舗装、側溝、下水道設備工事及び都市ガス供給工事設備工事は現に施工中であり、緊急に右承諾を得る必要があるから、あらかじめ承諾を求める必要がある。
(六) よって、原告は被告らに対し、請求の趣旨のとおりの承諾を求める。
 2 請求原因に対する認否(被告会社)
(一) 請求原因(一)の事実のうち、被告会社が本件(二)土地を所有していることは認めるが、その余は知らない。
(二) 同(二)の事実のうち、本件(二)土地が原告主張のとおりの地形の土地であって非課税であることは認めるが、その余は知らない。
(三) 同(三)は争う。
(四) 同(四)の事実のうち、被告会社が本件(二)土地の所有権を取得したことは認めるが、その余は知らない。
(五) 同(五)は争う。
 3 被告安達は、公示送達による呼出しを受けたが、本件口頭弁論期日に出頭しない。
三 証拠
  本件記録中の書証目録、証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理     由

一 証拠(甲四、五、原告代表者)によれば、請求原因(一)の事実(被告会社が本件(二)土地を所有していることは、原告と被告会社の間では争いがない。)のほか、原告は、昭和三五年一二月に設立され、規約をもって、目的、構成員を定めているほか、理事長、副理事長、常任理事、理事等の役員を置き、前三者の役員決定は、他の議決事項同様、組合員三分の二以上出席の総会において、二分の一以上の賛否で決めることとし、通常総会は毎年四月に開催し、組合の予算は組合費、寄付金等をもってまかない、組合費の額と徴収方法は理事会が決定し、組合員の資格喪失事由等も定めている。
 右事実によれば、原告は、団体としての組織を備え、多数決の原則が行われ、構成員の変更にかかわらず団体が存続し、その組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理等、団体としての主要な点が確定していることが認められる。したがって、原告は、いわゆる権利能力のない社団と認められる。
二 証拠(甲四、一三、一四、原告代表者)によれば、請求原因(二)の事実(本件(二)土地が原告主張のとおりの地形であって、非課税であることは原告と被告会社の間では争いがない。)が認められる。
 右事実によれば、原告主張(請求原因(三))の地役権が、少なくとも黙示的に設定されたものと認めるのが相当である。
三 証拠(甲一、四、六ないし九、原告代表者)によれば、請求原因(四)の事実のほか、現在、翠松園内の道路敷地は、和解の結果、大部分が名古屋市に寄付採納され、市道となっていることが認められる。
四 証拠(甲二、三、四、一〇、一五、証人 横田英一、原告代表者)によれば、請求原因(五) の事実のほか、本件(一)(二)土地はいずれも翠松園の入口付近に位置していることが認められる。
五 以上の事実によれば、原告の本訴請求は理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき、民訴法八九条、九三条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。

名 古 屋 地 方 裁 判 所 民 事 第 八 部
    裁 判 官   角  田    清

物 件 目 録

(一)
名古屋市守山区大字小幡字北山二七五八番七二三
  公衆用道路  一三九平方メートル

(二)
同所二七七三番二二二
  山  林  五二〇平方メートル

以 上  



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