彼女は元気にしているだろうか

 彼は元気にしているのかしら



あの頃のように笑っているだろうか

 あの頃のように幸せでいるのかしら



俺は きっと彼女に巡り逢う

 私は きっと彼に巡り会う



そういう運命なのだ、と

 信じているから















      vampire
                              吸 血 鬼 C 


















月が顔を出す時間。

俺はひとり、ぼんやりとしていた。






おかしな夢を見た。

例の、あの夢。

時々忘れた頃に数回見る、俺らしくない夢。






俺は夜空を見つめながら、夢の内容を思い起こしてみる。

寝起きのため、頭はフル回転しなかったけれど。




夢の中で。

俺は、吸血鬼になっていて。

誰かに恋をして。

・・・・・・・・。





そこで、ふあ。と一つ欠伸が思考を邪魔した。

あぁ、眠い。





ええと。

その後は・・・何だっけか。




俺は夢の続きが思い出せず悩んでいると、トントントンと聞き慣れた足音が聞こえた。





「あーもう。こんな所にいたのね。」

階段の下から、見慣れた顔がひょっこりと顔を出した。

「いくら非常階段が好きだからって、こんな夜遅く学校に忍び込んじゃダメでしょ。」

腰に手を当て、少しばかり俺に説教。




そう言うアンタは、どうなんだ。

俺は男だからいいけども、アンタは仮にも女。

夜道は危険だ。

それに。




「つくしこそ、こんな夜遅くに家を抜け出して大丈夫なの。」

いくらなんでも、家族が心配するだろう。


「私はいいのです。」

にこりと笑い、俺の目の前でピースをした。

「私の家族みんな鈍くさいから、気づきやしないわ。」


そう言って、俺の隣に腰を降ろした。









二人で肩を並べて座る。




「星空が綺麗ね。」

空を見上げていた彼女が、ふと呟いた。

俺もつられて星空を見上げてみる。




360度全てが星空だった。


世の中は、こんなにも騒がしいのに。

なんだか、空だけは自由な気がした。



「そう思わない?」

「ああ。そうだね。」



見上げた先にある星空は、本当に美しい。













なんとなく。

ただ、なんとなくだけれど。


こんな夜は、俺が俺でないような。

自分の中にもう一人の俺がいるような。

そんな気さえしてくる。



そのせいか。

柄にもなく、夢の内容を彼女に話してみようと思った。




「さっき、変な夢を見たんだ。」

「変な夢?どんなの。」


俺は少し沈黙すると、小さく呟いた。

きっと、変だと思われるだろうな。



「俺が、吸血鬼になる話。」

「へぇ・・・・・・そう。変な夢ね。」



でも、彼女は特に驚いた様子もなく、すんなりと聞き入れてくれた。

そのことに少しほっとしつつ、話を進める。


「ああ。しかも、今回が初めてじゃないんだ。」




俺は、ぼーっと星空を見上げた。

ああ、そうだ。

夢の中も、こんな美しい星空だったような気がする。




「何回も見るんだ。一体どうしたんだろうな、俺。」


何回も何回も。

繰り返し繰り返し。


夢なのに、あのリアルな感じ。

夢だとわかっていても、現実のような。
















「ふふっ。変な類くんですこと。」

少し重苦しい沈黙を破るように、彼女がくすくすと笑いながら、俺の頬をつついた。

夢は夢でしかないものよ、と彼女は俺に優しく言った。



確かにそうなのかもしれない。

夢は夢。

現実じゃない。



「ほんと変だよな。」

俺もくすりと笑い、優しく彼女の身体を抱きしめた。








彼女の柔らかい身体が、抱きしめたのを通して伝わってくる。

胸の中に収まる彼女を見つめて。


ちゃんと彼女が存在していることを確認して。

ちゃんと俺が存在していることを確認して。

なんだか、安心した。




「どうかしたの。」

無意識のうちに腕に込める力が強くなっていたのだろう。

彼女が心配そうに尋ねた。



「いや。なんでもないよ。」

右手でポンポンと彼女の頭を撫でる。


「こうやって一緒に居れてよかったと思ってさ。」

「ほんと変な類。」



また先程のように、くすくすと彼女は笑った。













「帰ろうか。」

「うん。」



俺は彼女の手を繋いで歩き出した。




星空の輝く下。

人間に生まれ変わった吸血鬼と人間の恋が、幕を開ける。






                         * fin *


←B


05/12/27

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アイボンさんの為に書かせていただいたキリリク小説が完結・・・・しました??汗

『切ないけど 最後は、ハッピーエンド』というリクエストを頂きました。ありがとうございました^^

長らくお待たせしてしまってスイマセンでした。ペコリ。


その後、二人は出逢えた・・・という話にさせていただきました。夢オチっぽいですけど、違います。((必死

たくさんのご感想ありがとうございました。