男たるもの一歩外へ出れば七人の敵

7月竜

エドワードエルリック。
鋼の錬金術師というふたつ名を持つ彼には敵も多い。

銀時計の裏に刻まれた文字。
それを見た時、ウィンリィも決意を新たにした。
ぼろぼろになっても立ちあがり続けるエド。
もっと腕をみがいて、少しでもいい機械鎧を付けてあげたい
そこには純粋に幼馴染を想う優しさと、女手ひとつで道を切り開いてきたピナコばっちゃんの血統、即ち、たくましい商売人の計算があった。
鎧(の写真)は流石に実物を見れる事もあって万を切ってたけど、プライベートは万超えたし、特に猫付だと最高3万センズ。
ウットリとウィンリィは通帳を眺めた。
エドも見た目充分イケテルし写真だと身長は分らないから、鋼の国家錬金術師って題だけで結構いい値がつくんだけど、なにせどこからでも供給されるから…
その点、アルフォンスはそうはいかない。何所で嗅ぎ付けるのかエドが素早く手をまわし、没収回収の憂き目に遭うのだ。これがアルの値を吊り上げてる原因。
墓穴よね〜。鎧のだったらいいじゃない。
アルの写真をどうするのか。ここがエドとウィンリィの意見の分かれるところ。
写真をどうするって言うのかしら?
ウィンリィは自分のパス入れを見た。そこには重厚な機械鎧の切りぬきが飾られている。、ウィンリィはうっとり溜息をついた。その切りぬきの後、こっそりとエドの機械鎧とアルの機械鎧の設計図が仕舞われている。
あ〜〜、アルも改造したいなぁ。あれだけ大きければ色んな仕掛けができるのに
もちろん現実には大事な幼馴染にそんな事しようとも思わないけど、空想は感情抜きだから…v
ぽやや〜んとウィンリィは設計図を撫でた。
そういえばアルの回収写真、廃棄してるとこ見てないから、全部自分が持ってるだろうな。
設計図を元の場所へ隠すと、ウィンリィは顎に指を当てた。
【馬鹿野郎、アルの写真をヘンな事に使われたらどうする!?】
そこまで没収しなくても。
執拗に回収して回るエドに自分の言った言葉、それに対するエドの返答。
それって…自分はなにかに使ってるって事?
気付くが早いかウィンリィは軍より授かった伝書鳩を飛ばした。
その頃
【夕方迎えの者をよこそう】*
【はい】
*
タッカー家で交されたひとコマの会話。ただの録音なのだが、”はい”の語尾にハートマークを付けて楽しんでいる錬金術師が一人。
何度聞いても心温まる
涙を流しながらロイはゆったりとブランデー入りの紅茶を啜った。
美味さ倍増などといっちゃってる事を思いながらふと、彼は鳩が超小型サーチライトを付け窓の近くを飛行していくのを見た。

小型サーチライトを付けてまで人目を避ける夜間伝書鳩など尋常ではない。電話も使えない極秘任務か、あるいは電話のない場所からの極秘の連絡か。窓を開けて覗けば、鳩は見覚えのある部屋に入っていった。
コンコン
「マスタング大佐であります。将軍、チェスなどいかがですか?」
少しの間の後、扉が開いた。
「見ちゃった?」
「しっかり」
とぼけた東方司令部将軍の表情にロイは確固たる笑顔を浮かべた。
「教えて、頂けますね!?将軍」
「うん、これはね。資金調達の為の大事な方法なんだ」
将軍はロイを招き入れると自ら御茶をいれる。
「なにせ君が就任して以来こっち、経費がかさんでね〜」
B倉庫の花代を経費で落さなくて良かった。独りごちながら、取り合えずロイは責任転嫁を謀った。
「それは鋼のの後始末が大きかったからではと。大総統の軍部祭りの始末もたいへんでしたし」
「うん、彼にも出費の責任を取ってもらっているよ」
「そう…ですか……。って、どういう?」
将軍はロイの前に1枚の写真をかざした。
「どわ〜〜〜〜っ」
思わず鼻を抑えたロイの目の前で幼少の頃の、アルフォンス・エルリックがこちらを向いて笑っていた。

50万センズで落札って…どういう感覚なわけ?軍部って…
エルリック兄弟と分れた後、ラッシュバレーに居座る為の仕度の為に東方司令部を訪れたウィンリィは伝書鳩作戦の変更と共に、40万センズを手に入れた。
でもこれで子供の頃の写真は2ケタと判ったし、これでアルが元に戻ればプライベート写真の金額は…
元々優しい上に自分の事には無頓着なアルである。頼めば二つ返事でOKくれるに違いない。
うふふふふ〜
「しかし、ダブリスへ行ってしまって、これからの情報は…」
「あ、それには心配及びません。収集源、確保してありますからv」
ウィンリィはポンとポケットのメモを叩いた。
「それからねぇ。写真以外にも”声”が売れると思うんだけど」
「声、ですか!?」
将軍は無言でウィンリィの前にテープを差し出した。
イヤホンで聞くとそこには

【うん。また明日遊ぼうね】
*とか
【今日もよろしくお願いします】
*とか
【こんにちはー】
*【わぁい】*や元気のない声で【…ううん、なんでもない】*まで。更に意味不明の【好きで臭くなったんじゃないやい!!】*に到ってウィンリィからあんぐり顎が落ちた。
ばっちゃん、軍部って侮れない!!
「これって誰が?」
「まぁ、ハボック君や中央のアームストロング少佐にブロッシュ軍曹とかも協力してくれたしね」
『あいつもか』
病室での色ボケをウィンリィは思い返した。
「でも、いったい幾らぐらいになるんですか?」
「いっとくけど軍の連中も別に子幼児好きと言うわけじゃないんだよ!?とにかくアルフォンス君だっけ、彼の声に癒されるらしいんだ。声変わりのない彼の声にはしかし歳以上の経験による包容力があるらしくてね。」
軍はストレス多いから。
司令官自ら仕事のストレスを認めていいものなのだろうかとウィンリィは思ったが、エドの世話をしていますからとだけ答えておいた。
「日常会話で2ケタは下らない。もし電話ででも”頑張って下さい”だの名前を呼ばれたりしたら3ケタは堅いよ。」
100万センズ代〜〜〜!?
ウィンリィの頭上に稲妻が走る。
「わかりました!、将軍。できるだけやってみます

「それから写真だけど、幼少もいいけど小さすぎるのはね…。購入層はショタコンなわけじゃないから。彼らの希望は癒しと言う事を忘れないようにね。」
それから、これからは中央にも市場が増えるから商品量確保ヨロシク。
ウィンリィの瞳に灯る炎を確認し、将軍は満足気に頷いて会見は終わった。

「もしもし。あ、メイスンさん?ウィンリィです。調子の方はどう?…ええ、それで大丈夫ですよ!?数撃てばどれか当るから。それとネタの種類が増えたんですけど…ええ…」

12歳で国家資格を取った天才錬金術師。
本日もエドの敵はいっぱいいるようだった。

リクエスト及び掲載許可ありがとうございました。謹んでさんちゃ様に捧げます。
え?お題に合ってませんか?(滝汗)。御題は多数出演のほのぼのギャグだったんですが…(遠い目)。購入者名簿その用途は機会があれば何れ何所かで!?2004/01/09