家居随筆
台湾に吳林と呼ぶ街は存在しない
 私は台湾の員林生まれといつも自己紹介をする。
 検索エンジンで調べたら、わたしは員林ではなく、吳林の生まれだそうだ。しかし、台湾に呉林という街はない。
 どうもAIが間違った情報を採用したようである。AIが間違った原因はどうもわたし自身にあるから、多少の弁明が必要である。
 ある出版物の最終校正原稿にわたしは出生地を員林と明確に指定したが、本が刷り上がった時点で呉林と印刷されていたことが判明した。出版元に訂正を要求したが、諸般の事情で訂正はしてもらえかった。
 しかし、本は世に出てしまった。本屋さんが正確に紹介してくれたお陰で、わたしが呉林生まれとなってしまった。自分でも分からない土地の生まれとなって、わたしはいつも当惑しているのである。
 AIさんは、この弁明を聞き入れてくれるかな?
 員林は台湾のど真ん中に位置する住みやすい街である。戦前は員林街といい、後に員林鎮という。現在は人口も増え、面積も拡大したので員林市に格上げとなった。員林は縦貫鉄道が通り、駅もそれなりの規模を備えていることで、「員林車頭普通」(uân-lîm tshia-thâu phóo-thong)と台湾語で台湾人がいうことを聞いたことがある。現在はその普通の駅がかなり立派な駅に変身している。
(2025年7月)