台湾語の表現法を学ぶ
私は台湾語の話者である。伝承方式で台湾語を受け継いている。台湾語を特に勉強したことはない。暮らしの中で自然に身につけた能力である。また日本語と中国語は学校で学んだから、他人との意思疎通は、同世代や異世代の間において言葉のことで不便を感じたことはない。相手や必要に応じて話し言葉や書き言葉が選択的に使い分けできたからである。
台湾において台湾語はこれまで話し言葉で、書き言葉ではない。多くの台湾人が、台湾語の会話はできても、台湾語を読んだり書いたりすることはできない。台湾で暮らす多くの台湾人が母語として台湾語を意識し始めたのは20世紀後半のことである。
台湾語は漢字やローマ字が表現手段として使用されてきた。台湾語の発展に熱心な関係者が早くから多様な書き方を採用し、使用してきた。また教会関係者が教会ローマ字の普及に貢献した。しかし一般台湾人はこれらとは無縁の存在であった。
台湾語発音の表現手段は、教会ローマ字に加えて、台湾教育部の羅馬字拼音方案のローマ字が利用できる。後者は21世紀に入ってから公布された発音表記法ではあるが、その普及活動から刺激を受け、改めて台湾語の表現を学習する次第である。
暮らしの中で使用される台湾語は、話し言葉として存在する。家族や親戚友人のほか同じ生活環境に住む人々が会話や意思疎通に必要な口語である。空間的には異なる地域で話し方や語音上の違いはあるが、意思疎通ができないほど深刻な違いはない。例えば、読書を中部の人々は読册(thak-tshe)といい、台北の人々は読書(thak-tsu)と言う。また中国の厦門で人々は台湾の放送を聴いたりもするから、台湾閩南語は厦門でも通用するのである。
書き言葉としての台湾語は、国民政府の台湾では学校教育として受けることができなかった。そればかりか、国民政府は学生に台湾語の使用を禁止した。台湾人学生は学校では中国語や英語を学び、帰宅後は台湾語を話すという有様であった。
多くの台湾人は台湾語を、文字で書いたり、読んだりすることができない。中国や英語の本は読めるが、台湾語の本は読めない。もちろん字も書けない。文通や読書には台湾語以外の言語を使用する選択肢が存在するからでもあるが、為政者の意図で、読んだり書いだりする機会が少ない環境下で暮らすようにされてきたからでもある。
台湾語水準の向上は重要視されなければならない。分かりやすい標準化した表現手段は不可欠である。これまで蓄積されてきた台湾語の表現法を整理し、広く受け入れられる部分を継承することも大事である。教育部の方案にもとづく教育と一般的普及は重要である。p ph m t th ts tsh などの発音符号や台湾語漢字を台湾人が日常的に使用する光景を見たいものである。
(2025年6月)
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