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     第71作
                    カニ餌入れ
        (石鯛釣りのエサ)
                         
H27・6月
                         R 5・3月
更新第2作

 
 石鯛釣り名人からエサのカニを入れる籠の製作を依頼されました。
 造り、形は58作の魚籠と変わりません。
 設計寸法は、底径25p、高さ20p、口径15pです。

 ユーチューブの動画を見たところ、なるほどそんな籠が写っていました。

 私も突堤でメバル、アイナメなどは釣りますが、石鯛なんぞの大物はやったことがありません。石鯛は“サザエさん”を砕いて寄せエサにするんだとか、、くらいは聞いていましたけどね。作ってみましょう。
  6月28日 本体ヒゴ作り

 下から、
@底編み柾割り15本
A底立ち上げ縄編みヒゴ4本
B本体胴回し、5o巾9本
C      3o巾6本
D      2o巾6本
E立ヒゴ 6.5o巾 80p12本
 ヒゴ長は1.8b、厚さはかなり厚めで調製しました。磯の岩、コンクリートブロックに少々擦れてもびくともしないように。


 底は菊底編みです。
 立ヒゴは12本、まずは6本でヒゴを回し、ヒゴ間隔がとれたあたりで残りの6本を挿し込み編み進めます。(画像は6本の内3本を挿したところ。)

 ヒゴは柾割りで、厚さ(柾割りでは幅になりますが、)が1_程度、巾が2_です。少々無骨ですが、実用品ですから丈夫に作ることが第一です。

 底径の25p手前まで編み進めます。


 底径は25pですので、所定の位置で立ヒゴを焼き鏝で90度に立ち上げます。
 底から胴にかけて5段程(ヒゴは10段)縄編みします。角部分の納まりを良くします。

 この後は単純作業、幅広のヒゴで口部分まで胴回ししていきます。
 口の径を15pにしますので、そのあたりを考えながら立ヒゴの窄まりを加減しながらの作業です。

  口の縁巻き

 巾4o、1.8bの巻きヒゴを5本用意します。
 編み目数が24ですので、5目飛ばしで5周、これを3回繰り返して概ねカバーできました。

 後は籐で縛り込み、本体部分が完了します。


 本体籠が出来たところで口蓋の製作に取り掛かります。
 本体底と同様の手順ですが、立ち竹は8本(立ち上がりは16本)にしました。
 何と言っても蓋を押し込んだ時の擦れ具合、納まり加減が一番のポイントになります。
 ヒゴを3、4段編みながら、解きながら一番良い感じのところで仕上げます。

 中にいるアシハラガニが自慢のハサミを振り上げた時、蓋が外れるようなことがあってもいけません。

7月5日 蓋出来上がり

 蓋の縁巻きが終了しました。後は本体と同様、籐縛りして完成します。



 吊り手の取り付け箇所を追加

 本体肩部分の吊り手の取り付け箇所を、当初は2ヵ所にしていましたが、吊り紐一本ではバランスが悪く、更に2か所追加しました。
 後付けですので、首上部まで編み込まれていませんが、強度には問題ないでしょう。

 吊り手を取り付けて全て完了しました。


    



  
令和5年3月 第2作

 新しくカニ籠の製作依頼を受けました。これが石鯛釣りのカニエサ入れ3人目になります。
 このページの前作が初回で、福岡県在住の釣り名人、二回目は昨年の3月、宮崎県在住のがまかつファンクラブの方に手元にあった第58作3号品をお送りしました。今回は五島列島在住の石鯛ファンの釣り人です。どう言う訳かお三方とも九州なのですねー
!! 九州は青物細工の本場のはずですが、一品制作は中々受注する訳にはいかないのでしょうねえ。
 工芸展出品(第98作)も終わって時間が出来ました。さあカニ籠作ってみましょう。

3月15日
 まずは竹材を整えます。青竹は昨年の12月に採取してあったもので、径8pの丸竹180pの六つ割です。大方これで間に合うでしょう。

 必要なヒゴ本数などは前作と同様です。5o、3o、2o幅の胴回しヒゴ、底編み用の柾割ヒゴ、胴立ち上げ部分の縄編み用のヒゴ…これは2o幅で厚めのヒゴです。一番下のまだ割っていない2枚は立ち竹12本用です。この段階で材料竹は2枚分、6つ割り分の2枚が残っていますが、蓋部分のヒゴ材料と、本体、蓋の縁巻き用で概ね間に合うでしょう。(後に5oの内の2本を4o幅に変更)

  

 まあ、青物細工ですからことさら幅極めやら厚さ極め、面取りなどやらなくても実用には差しさわりは無いのですが、折角の趣味の一品ですからこだわってやりましょう。
   

  立ち竹調製
 76p長、幅6.5o、厚さ1.2oを12本です。籠の口が窄まりますのでヒゴ両端を12p程テーパーに削ります。底編みは菊底で12本が中心で重なりますので、中央部分の10pほどにわたって厚みを半分の0.6oにまで薄くしておきます。(画像・中)

    

 3月19日 

  底立ち上げ

 菊底の底編みが完了しました。
 籠は径25pを予定していますが、前作とはやや趣を変えて底径は23pほどにして、やや胴を膨らませた丸っこい形にしようと思います。胴の径が25pになります。
 立ち竹の立ち上げ部分は2本縄編みで形作ります

     
 後はひたすら胴編みで首部分まで。

  口仕上げ

 本体胴部分の編みが済んだら口仕上げに入ります。縁巻き竹は幅4.5o1.8mを4本用意します。併せて縛り用の籐ヒゴを用意、丸籐を割り出してヒゴ作りをします。8本出来ますが、本体の口縛りと、この後の工程の蓋の口縛りで併せて4〜5本必要となります。

 丸籐、節部分をヤスリで段差が無いよう削ります。  丸籐の径は10o、周は31o、幅2oのヒゴを取りたいのでまずは余裕をもって8分割します。  粗割したところ。  厚さ、幅を調製して2oのヒゴが8本出来ました。

  縁巻き
 肩のあたりに吊り紐の取り付けを6か所付けました。
 縁巻きは5目飛ばし(立ち竹24目、5目飛ばしで一周一目ずれ、巻きが連続できます。)で5周するとワンセット、これを3回並行して巻きます。巻き竹は1.8mが4本ほど必要。

     

 3月25日

 口巻きの後、籐ヒゴで縛って本体籠が完成しました。
 さて最後の蓋部分の製作に取り掛かります。モノは小さいのですが、やることは全く本体籠と変わらず、材料ヒゴの調製から各工程など全く小ぶりの籠を作ることと同様の作業になります。  

 蓋の製作

 このページの前作では蓋の立ち竹は8本(立目は16目)でしたが、折角ですので本作は本体籠と同じく12本、24目としました。その分ヒゴもやや細くして上品な仕上がりを目指します。(単なる自己満足です。)
 本体籠といい感じで“擦れながら”納まる加減のところで、少し編んでは微調整しながら編み進めます。

 蓋の縁巻き、籐ヒゴ縛りを終え、出来上がりました。

  最後にひと手間

 ここまででまずは完成なのですが、折角ですのであとひと手間掛けましょうか、オマケです。
 ヒゴも厚めで頑丈に作ってありますので、岩に擦れてもかなりの年数もつ筈?ですが、底の補強に箍の高台を取り付けることにします。(高台の作り方
 箍巻きのヒゴ長は底径25p×3.14×5周分です。4mほど必要です。基本的には一本のヒゴが良いのですが、別に竹を(2.3m)用意して2本分のヒゴをとりました。写真手前が長尺ものの竹、4つ割りにしたところ。
 箍は三つ編みの状態になります。一本のヒゴで閉鎖した空間?で形作るものです。5mのヒゴは作れませんので途中重ねて継ぎ足すことになりますが。

 箍は底に籐ヒゴで6か所縛って取り付けたら完了です。銘板はお遊びです。
                3月30日

   


  6月22日  メール便で“石鯛釣れましたのお便り”

 嬉しいことに、5月にこのエサ籠携えて釣行され、石鯛を仕留めた様子を画像付きでお便り頂きました。大物石鯛が2匹並んでいます。
 魚籠は既に青みが抜け竹色になっています。 中にはカニさんが納まっています。なんでも「磯イボオオギカニ」、地元ではトッポガンというカニだそうです。
 石鯛のサイズは、ウーン、、籠の胴径が25pですので、それから推して大きい方で50pかやや切れますか? 立派なものですね。この先も籠、大事に使っていただくとの事でした。