翠松園道路対策組合解散決議に関する私見


翠松園道路対策組合決議における二律背反

 以下は、翠松園道路対策組合が平成12年4月23日附で組合員宛に出した文書の抜粋である。

翠松園道路対策組合解散のお知らせ
……
さて、平成12年4月23日午前10時より翠松園集会所において第40期当組合定時総会を開催しましたところ、慎重審議の結果、当組合の解散(A案)が圧倒的多数の賛成をもって可決されましたのでご報告申し上げます。
 なお、解散案可決に伴う項目別の処理方法は、下記の通りとなりましたのでよろしくお願い致します。

(1)~(4) 略
(5) 確定判決(平成2年ワ第1109号)および認諾(平成4年ワ第2936号)の原告としての権利は当組合から翠松園会へ委譲するものとする。ただし、上記二件の権利の保持と行使については翠松園会会長が翠松園道路対策組合理事長を兼務して行うものとする。(解散後も当組合の名前は存続することになります)
(6) 略
……

註:引用部中緑色は引用者が付す。




 以下、上記『翠松園道路対策組合解散のお知らせ』に関し私見を記す。

A 解散と理事長兼務(解散後も名前が存続)の矛盾
 翠松園道路対策組合の解散が成立したとの前提に立てば、
 1. 解散により消滅し最早存在しない組織(翠松園道路対策組合)が、代表者(翠松園道路対策組合理事長)を置くことはできない。
  代表者を置くことができるのは、組織が形式的にであれ存続している限りにおいてのことである。
 但し民法では、法人の解散に関し次の特例が認められている。
 民法第73条【清算法人】
解散シタル法人ハ清算ノ目的ノ範囲内ニ於テハ其清算ノ終了ニ至ルマテ尚ホ存続スルモノト看做ス
 しかし、翠松園道路対策組合は<権利能力なき社団>ではあるが、民法が定める<法人>には該当しない。また翠松園道路対策組合も清算が未了であることを否認している。
 2. 従って、翠松園会会長が既に存在しない翠松園道路対策組合理事長を兼務できる筈はない。
 3. 兼務が可能なのは、翠松園道路対策組合が形式的にであれ存続している限りにおいてのことである。
しかし、それは解散と対立する。
 4. 名前が存続とは、以下が前提となる。
 1) 実体的には存在の要件を満たしていないが
 2) 形式的には組織存在の要件を満たしている
  例えば、所謂ペーパーカンパニーは実体的には存在しない法人であるが、形式的には定款を有し、役員を置き、法人としての登記を行い、形式的には組織存在の要件を満たしている。
かかる場合のみ、名前が存続していると言えるのである。
しかし翠松園道路対策組合は、解散を前提とする限り、実体的にも形式的にも存在していない。
 5. それでもなおかつ兼務を主張するのであれば、それは、最早存在しない組織の代表者の地位を詐称することによってのみ可能である。

B 権利の委譲と理事長兼務(解散後も名前が存続)の矛盾
  裁判の原告としての権利は翠松園道路対策組合から翠松園会へ委譲された、との前提に立てば、
 1. 翠松園道路対策組合は権利を翠松園会へ委譲し、権利を放棄したのであるから、既に何も保全すべき権利を有していない。
確定判決あるいは認諾調書の効力が民事上の債権であるとすれば、民法第466条 弟1項の定めにより、譲渡が可能であると考えられる。
但し、債務者及び第三者に対抗力を有するためには、譲渡人及び譲受人の双方が書証をもって債権譲渡を確認する必要がある。
 2. 「権利の保持と行使については翠松園会会長が翠松園道路対策組合理事長を兼務して行う」とは、権利の譲渡と背反する。
翠松園会が民事上の債権の譲受人となったのであれば、譲受人の代表者として翠松園会会長が債権者を代表しうる。
兼務を主張することにより、譲受人が譲渡人を兼務することとなり、債権譲渡について齟齬をきたすこととなる。
 3. 裁判(平成2年ワ第1109号及び 平成4年ワ第2936号)では、翠松園道路対策組合の当事者能力及び原告適格が第一の争点となった。
上記翠松園道路対策組合の決議では、今後係争となった場合、債権が何処に帰すのかを始め当事者能力を争点とされる危険性がある。

C 翠松園道路対策組合決議における二律背反
 1. 上述の通り、今回、翠松園道路対策組合は二律背反する決議を行っている。
 2. 翠松園道路対策組合は解散したのか、本当に解散しえたのか、私には疑問である。
3. もとより私は法律の専門家ではない。
 種々の御意見を歓迎致します。下記までお寄せください。
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翠松園道路対策組合決議における二律背反(続)

上記「翠松園道路対策組合決議における二律背反」と同趣旨の質問書を、翠松園道路対策組合解散決議時の理事長宛に提出したが、回答は無い。
そこで翠松園会に対し、下記の通り、翠松園会規約の一部改正を提起した。
平成12年7月16日に開催された翠松園会臨時総会に於て、翠松園会規約が一部改正された。



 以下は、筆者が翠松園会に提起した、翠松園会規約一部改正案である。

翠松園会規約一部改正案

 平成12年4月23日に開催された第40期翠松園道路対策組合総会の決議に基づき、翠松園道路対策組合から委譲を受けた権利を保全するため、翠松園会規約に下記、第39条を附加する。

第 39 条 (承  継)
 本会は、第40期翠松園道路対策組合総会(平成12年4月23日開催)の決議に基づき、翠松園道路対策組合の承継人として、次に掲げる二事件の当事者としての権利を承継する。
 (1)名古屋地方裁判所平成2年(ワ)第1109号道路工事承諾請求事件
  (平成3年11月27日判決言渡、平成3年12月14日確定)
 (2) 名古屋地方裁判所平成4年(ワ)第2936号公共下水道設備工事同意等請求事件
  (平成8年9月13日第8回口頭弁論期日、第8回口頭弁論調書(認諾))



註:平成10年度以降の翠松園会と翠松園道路対策組合の関係については、
平成11年3月26日翠松園会が翠松園道路対策組合に提示した「覚書」
を参照されたい。

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