『えっ!?』と亮輝は驚く。


「司おじさんの記憶がもどったのは、パパとママが結婚した1年後くらいかな・・?」


類は、亮輝の瞳を見て言う。


「え!?それじゃ、司おじさんは、その後どうしたの???」

「それはね・・・」










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類とつくしが結婚して約4ヶ月後・・・。



「だいぶお腹大きくなったね。」

類がつくしのお腹をさすった。


「うん。」


つくしがウレシそうに『ニッコリ』と微笑んだ。


「類、私とっても幸せよ。」



類も、つくしに愛らしそうに微笑んだ。

「俺もだよ。」




















「わぁ!!!司の家って大っきぃーー!!」

司がある部屋のドアに立った。


「俺の部屋はここだ。海、そんなキョロキョロしてないで来いよ。」

「うんっ!!」





    ガチャ





「うっわー!広っ!!」

「テキトーにその辺にでも座って。」

「うん。あ!そうそう、司。つくしちゃんのお腹だいぶ大きくなったんだってさ!」

「ふ〜ん。。。」










そうか。。あいつらは、今幸せなんだろうな。。

・・・ん?なんだ??頭が痛てぇ・・!!

ズキズキする・・・。こんな頭痛、初めてだ・・!!!








「ねぇ、司!この戸棚のアルバム見てもいい??」


司は頭を押さえながら言った。

「え、、ああ。」


海が戸棚からアルバムを取り出そうとすると、戸棚の上から本が落ちてきた。


「きゃぁっ!!!」

「海、危ねぇ!!」






















「痛ててっ・・・司!?大丈夫!?」

「・・・・痛て・・!!!」

「ゴメン!私が気を付ければ良かったのに・・。」


海が司の頭を触ろうとすると、司はそれを拒んだ。


「・・・・お前誰だよ!?」

「・・・え???」





海は固まる。






「ってか、俺なんでこんなところにいるんだ??」

司は痛そうに頭を押さえながら言った。

「俺はあの時、牧野といたはず・・・。」







ふと、司はカレンダーに目をやる。






「・・・・!!!2年以上も経ってる・・??どういうことだ??」

「ホントに、なんにも憶えてないの???」

「・・・・・・・!!!」

「今まであった事を、司に教えてあげる。。。」


















海は司が記憶喪失になってから、約2年間半の間の出来事を全て話した。


「・・・・どう?身に覚えがある??」

「あぁ・・少しだけ。」


司は真っ青になっていた。


「・・・・類と、牧野が・・・・・結婚した・・!?」

司の頭の中は混乱していた。




「うん・・・。4ヶ月前にね。。もう、お腹に赤ちゃんもいるよ。。」

「・・・そんな・・・!!!」


司は部屋を飛び出していった。


「司っっ!!!!!」

























「・・・・・・!!!」


類と牧野が結婚・・・!?



その時、俺はみんなと一緒に『おめでとう』って言っていた気がする・・。



そうだ・・・。俺はさっき一緒にいた女と付き合っていた・・・????



・・・・・・・嘘だ。嘘だ。そんなの嘘だ!!!!












司に今までのあらゆる出来事が、司の頭の中に蘇る。








・・・・俺が記憶喪失になったとき、俺に思い出してもらおうとアイツは・・・。



牧野は・・・何度も病院に来てくれたのに、、、俺は・・・・・。



酷いことを言って毎回追い返してしまった。

















司は、類の家に行き、類とつくしのもとへ急いだ。





   ガチャッ!!!





「あ、司。どうしたの?そんなに真っ青になってさ?」

「道明寺、久しぶり。見て!こんなにお腹が大きくなったんだよ。ホラ。」



そこには幸せそうな、類とつくしがいた。




牧野は、あの時から何も変わっていない。。。


笑顔も。。。性格も。。。なにもかも。。。




たった一つ、変わってしまったことがあった。


そこにいるつくしは、『牧野つくし』ではなく、『花沢つくし』になっていたことだった。


「・・・・牧野!!!」

「道明寺、私は『花沢つくし』だよ??もう『牧野』じゃない。忘れちゃったの??」
 
「司??なんか今日の司、変だよ??なんかあった??」



「・・・・・思い出したんだ。」



「何を???」

「・・俺が記憶喪失になった時からの事、全てを思い出した。」

「えっ・・・・!?」







少しの間、沈黙が流れた。







「司・・・・。あれから俺たち、結婚したんだ。」

「あぁ・・。知ってる。」

「あの・・・道明寺、、」

つくしが司に遠慮がちに聞く。



「・・・なんだ?」

「最初、道明寺が記憶喪失になったって聞いて、すごくショックだった。

道明寺と話そうとしても、道明寺は拒んで、全然話せなくてさ・・・。

自分の愛してる人に『二度と目の前に現れるな』って言われた時は、もう目の前が真っ暗だった・・。

道明寺は記憶喪失なんだからしょうがない、って分かってたけど、耐えられなかった。


もう、私に残るものは何もない。って思って、私、病院の屋上から飛び降りようとしたの。

そしたら、類が必死で引き止めてくれた・・・。

類は、いつも一緒にいてくれて、微笑んでくれた。

私が、悲しいとき、嬉しいとき、ツラいとき、どんなときも類は一緒にいてくれた。


そんな類の存在が、私の中でだんだんと大きくなっていたの。


それである日、私はあることに気が付いた。

『類のことを愛してる』っていうことに。


もちろん、今でも道明寺のことは好きだよ。

でも、類との『好き』とは違うの。“友達”としての好きなの。」





「・・・・・・。」



司は黙り込む。


「私は類と結婚したことに、後悔はないわ。」


つくしは、きちんと司の瞳を見て言った。


「・・・・・・そうか。」


それから、司は類の方を見て言った。


「・・・ちょっと類、話があんだけど、ちょっと耳貸せ。」

「・・・・・あぁ。」







    『絶対に、牧野を幸せにしてくれよ』




  『司に言われなくても、そうするよ、必ず。』



         『頼んだぜ。』



       『あぁ。分かった。』












「それじゃぁな。牧野、元気な子、生めよ!」


司は精一杯の笑顔を、類とつくしに見せた。


「・・・ちょっと待って道明寺!!」


部屋から出ていこうとする司を、つくしは引き止めた。


「・・・・ありがとう、司。」

「・・・・・またな。」





















牧野から『司』と呼ばれたのは初めてだった。


それだけで、涙が溢れそうになった。


牧野は、俺の事をちゃんと見て、言った。



『後悔はしていない』と。



分かるさ。あの牧野の瞳を見れば、嘘なんて付いてないって、分かる。


もう、あの頃には戻れないのに、俺はまだ・・・・




  『牧野のことを、こんなにも愛している』




「ははっ・・・。」


司は涙を流しながら笑った。




もう、俺は牧野以外、誰も愛することはできないだろう・・。


牧野のことは類が傍にいるから心配ない。


愛している奴が、幸せでいれれば、俺はそれでいい・・・。


牧野が・・・・つくしがいつも笑っていられるなら、俺はそれで・・・。


これも一つの、愛し方・・・・・。






司は、雲一つない空を見上げ、呟いた。


「つくし、幸せになれよ」











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「・・・・・司おじさん、切なかっただろうね。」

「あぁ。切なかっただけじゃなく、辛かったと思う・・・・。」



『ふぅ』と類は軽くため息をつき、サラサラの前髪をかきあげた。

「それから、パパは、すっごく悩んだよ。本当にこれで良かったのか?ってね。」


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