錬金術はサイコロを振らない

待ってる 小さい背を精一杯伸ばして 扉に張り付いて
待ってる 門を開けて 貴方が迎えに来てくれるのを










「って、兄さん。また一回休みなの!?」
大きな檻の中、鉄格子につかまってアルは溜息をついた。
目の前では等身大の双六で、エドが、ロイが、ウィンリィが。サイコロを振ってゴールであるアルが閉じ込められている檻を目指している。
「くそったれのエッカルトめ〜。体感双六ゲームなんて飛行艇の中に作りやがって」
「何言ってるのよ、それより捕まったあんたに問題があるわ。」
啖呵きって飛行艇に乗り込んだら、たくさんの鎧に囲まれ、その鎧からアルボイスで「兄さん、大好きv」を連発され、あっという間にエドは捕まったのだ。以下同文でウィンリィ、ロイも捕まり、連れて来られた先が真理君の部屋に作られた巨大双六盤上で、その中央には真理君に略奪されたアルがやつれた姿で囚われていた。

「悪態ついてるヒマがあったら、さっさと上がってアルを助けるんだ。」
「だから、あんたのせいでしょ!」
さっさと話題を変えたエドの顔に、ウィンリィの靴がヒットした。
「ふふ、私は六の目が出ればスキップスペースの連続地帯に入り、一気に上がれる。今行くぞ、アル。とぉっ
双六はセットばかりじゃなく、サイコロも大きくて
「‥‥大佐、台からサイコロが飛び出たら、二回休みです。」
「アル、わたしに任せて!えいっ‥‥振り出しに戻る?」
「‥‥‥‥」
「あ、僕、上がりました。」
手を上げたのはハイデリヒで
「ありがとうございます、ハイデリヒさん‥と、僕、劇場版キャラじゃないからハイデリヒさんを知らない‥」
「え?じゃ、アルはどこの‥」
「アルはいいんだよ、アルなんだから。」
意味不明でも、この件に関してはみな同意見だったようで反論は無い。
「問題は、何故ハイデリヒがここに居るかだ。ドイツにいるはずじゃ‥」
「ん〜、気にしない、気にしない。一の目と門の目の繋ぎだし。」
マジかよっ
「安易過ぎる。」
ブ〜イングの飛び交う中
「じゃ、僕はこれで。」
立ち去ろうとするハイデリヒをエドが呼び止める。
「ちょっと待て。アルは置いてけ。」
ちゃっかりアルの手を引いたハイデリヒは、微妙な間の後振り返った。
「どうして?上がった人が賞品をもらえるんでしょ!?ゲームだって、助けた勇者がお姫様を連れ帰るんだよ。」
手っ取り早くとばかりに、ハイデリヒはやつれたアルを軽々と抱き上げ、飛行艇の扉を蹴破った。
「みんな、早く上がれると良いね。」
爽やかな笑顔で言い残すと、ハイデリヒはアルを抱えたまま暗闇に消える。
「あ、待て。」
止めようにも、双六板から足が動かない。
「これは‥!?」
「今頃気付いたのか。これは我々魔術研究会と、錬金術万歳の会と真理君が協力して作ったものだ。」
胸を張るエッカルトの後ろでホーエンハイムが手を振っていた。
「どうりでエドの弱点を付く作戦が実行されたわけだ。」
「くそ親父〜」
錬成陣を発動しようとしたエドの頭上に、大いなる拳による天罰が落ちてくる。
「なかなか凝っているだろう。これはハイデリヒ君の卒業作品だ。題は、<神様は見てる>だ。」
「‥‥‥」
双六盤に取り残された3人は、肩を落としてガクッと膝をついた。。
「つまり、サイコロを振って上がらない限り、ここからは出られないと‥」
「うん、でも心配は無い。トイレの場合は台上にあるトイレボタンを押すと、上から簡易トイレが降りてくるから。」
「それは安心、じゃないくて!アルはどうするんです。
ウィンリィの叫びに、ホーエンハイムは眼鏡をかけ直した。
「心配は無いさ。私が影で見守るから。」
「「「それが一番心配だーっ」」」
「だから早く、サイコロを振りなさい。あ、さっきマスタング君のやったサイコロを落とすのは専門用語で<しょん○ん>と言って‥」
「「「黙れーっ」」」


ゴールへの道は、錬金術でも科学でも魔術でも無く、今は巨大サイコロとそれを振る体力が握っている。

六の目

幕間

ギャグ、と思う前にできました(笑)。一の目は苦労したのに、、、何故? 2006/06/03

一の目

門の目