第 八 準 備 書 面
原 告 | 翠松園道路対策組合 | |
被 告 | 株式会社さ い と う | |
外七名 |
右原告訴訟代理人 | ||
弁護士 | 高 津 建 蔵 |
(一) |
訴状請求原因第四項に記載したとおり、翠松園内道路敷地の所有者と同園内の住民との間において、過去に発生した紛争が訴訟によって争われた結果、いずれも住民側が勝訴し、 後記(イ)(ロ)(ハ)に記載する如き確定判決が存するところ、本訴において被告株式会社一商は本件(三)土地につき、被告小川智慧子は本件(四)土地につき、被告丹羽誠は本件(五)土地につき、それぞれ「囲繞地」であることを否認ないし争う旨主張する。しかしながら、かかる主張は、後記(イ)の事件(以下前訴(イ)事件という)の確定判決(甲第三号証)の既判力に牴觸するため、許されないものである。
すなわち、本件(一)土地の所有者たる被告株式会社さいとうは、前訴(イ)事件の判決の原告(反訴被告)朝倉丞作が所有していた名古屋市守山区大字小幡字北山二七七三番の四二山林一町五反歩のうち、昭和四二年五月二二日の分筆後の山林三、三一三平方メートル(本件(一)土地)の所有権を、右朝倉丞作の承継人である訴外石原久雄から昭和五二年一一月一六日売買により取得したものであるところ、被告株式会社一商、同小川智慧子、同丹羽誠は、原告が第七準備書面の第三項に記述したとおり、前記同所二七七三番の四二の土地から分筆した本件(三)土地ないし本件(五)土地を、いずれも「囲繞地」である旨判示した前訴(イ)事件の確定判決の弁論終結の後である、被告株式会社一商は昭和五八年七月一五日(甲第一五号証参照)に、被告小川智慧子は昭和五四年八月一五日(甲第六号証の三参照)に、被告丹羽誠は昭和四三年五月七日(甲第六号証の四参照)に、それぞれ譲受けたものであるから、前訴(イ)事件の当事者朝倉丞作の承継人に該当するものである。そして前訴(イ)事件の被告(反訴原告)であった横山勝彦、鳥居敏、矢野勝彦は、いずれも前記第一項に記載した本件の「権利者本人」であるから、前訴(イ)事件の判決の既判力は、本訴の被告株式会社一商、同小川智慧子、同丹羽誠に及ぶのであり、同被告らは前訴(イ)事件の判決の肯認した本件(三) ないし(五)の土地が「囲繞地」であることを否認することは許されないものである。 なお、前訴(イ)事件の判決は、昭和四〇年一〇月一六日に言渡されているが、その弁論終結の日は当然に、それ以前であるから、同判決の確定が昭和四二年一二月二七日(甲第二十二号証)であっても、この判決の既判力は右弁論終結時が標準となるから、右弁論終結後に本件(三)ないし(五)の各土地を取得した同被告らに対しては、当然に右前訴(イ)事件の判決の既判力が及ぶのである。 |
(二) |
つぎに、被告小川智慧子は本件(四)土地につき、また被告丹羽誠は本件(五)土地につき、原告主張の上下水道、ガス等のいわゆる「導管権」をすべて否認するが、この点は後記(ロ)事件(以下、前訴 (ロ)事件という)の確定判決が、上水道につき導管権を肯認しており、この判決の導管権肯認の理由は、本訴請求にかかる下水道及びガス等の施設についても、これを援用することが可能である。しかして、被告丹羽誠は右前訴(ロ)事件の当事者(被告)であり、被告小川智慧子は右前訴(ロ)事件の当事者(被告)小川孫次郎から本件(四)土地を、同事件の弁論終結時(当然に昭和四八年一二月二〇日の判決言渡しの日より以前である)の後である昭和五四年八月一五日贈与により取得したものであって、右被告小川孫次郎の承継人であり、また前訴(ロ)事件の原告のうち、横山勝彦、鳥居敏、安藤信次郎(承継人安藤昌夫外一名)、鎌田芳雄、矢野尚勝、西野晴子らは、本訴の前記「権利者本人」であるから、前訴(ロ)事件の判決の既判力は当然に右被告小川智慧子、同丹羽誠の両名に及ぶものであり、被告小川智慧子は本件(四)土地につき、また被告丹羽誠は本件(五)土地につき、前訴 (ロ)事件の判決が肯認した「導管権」を否認することはできないものである。仮に原告のこの主張が理由なきものとしても、前訴(ロ)事件の確定判決により、上水道についての「導管権」が肯認されている本件(四)土地及び本件 (五)土地について、下水道、ガスについては導管権を否認するが如きは、将に信義則に反し、権利の濫用に該当するものといわざるを得ない。
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(三) |
つぎに、被告三光住宅株式会社は、本件 (六)土地につき、原告主張の上、下水道、ガス等についての「導管権」を否認するが、この点は後記 (ハ)事件(以下前訴(ハ)事件という)の確定判決が、上水道につき「導管権」を肯認しており、この判決の導管権肯認の理由も、本訴原告の訴求する下水道、ガス等の施設について類推可能というべく、右前訴(ハ)事件の原告中村清藤は、本訴原告の前記「権利者本人」であり、右前訴(ハ)事件の被告木下福重の承継人栗木 章から、本件 (六)土地の持分六分の一を、前訴(ハ)事件の弁論終結時(それが昭和五四年七月一七日の判決言渡しの日より以前であることは明白)の後である平成三年四月九日に売買によって取得した被告三光住宅株式会社は、当然に前訴(ハ)事件の被告木下福重の承継人に該当するので、前訴(ハ)事件の判決の既判力は右被告三光住宅株式会社に及ぶものであり、同被告は本件(六)土地につき同判決が肯認した「導管権」を否認することができない。仮に右主張が理由なし、としても、上水道につき「導管権」が肯認されている本件(六)土地について、下水道、ガス等の「導管権」を否認することは、将に信義則に反し、権利の濫用として許されない。
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