扉の向こうへ

ファルマン

描いてた理想が崩れても 弱さも傷もさらけ出して
ここにある全てに嘘をつかれたとしても 強さと覚悟つなぎ止めて
信じ続けるだけが答えじゃない
たった一歩でもそこから進め 突き破った扉の向こうに また新たな道がある

純粋にロイアルを読みたい方はファルマンの書いた奇数ページ(内容文色緑表記)のみお読み下さい

「錬成は手っ取り早く言うと理解・分解・再構築って聞きました。だったら!人体については理解できてるわけだし、手足だけなら再構築まで出来るんじゃないですか?他の部分があれば遺伝情報も分るし、天才と謳われている貴方なら!」
幽かに首を振る気配が伝わってきた。
「アルには基が無い。家も焼いてしまったし、アルには遺伝情報が1つも残って無いんだ。」
「はっきり言います。弟さんの事は可哀想ですが、エドワードさんは戻らないと!ウィンリィちゃんこそもっと可哀想です。」
「…ウィンリィには済まないと思ってる。だけどアルだけあのままにはして置けない。戻してやる義務がオレにはあるんだ!戻す責任が!」

氷水を浴びせられた気がした。温度を感じなくなってもう、随分経つというのに。

【俺が必ず元に戻してやる】
それは実行されなくてもいい約束だった。元には戻りたいけど、戻れなくても仕方ない事だから。
だから兄さんの言葉は、いわば希望を捨てない為の合言葉だった。決して義務や責任ではなかった‥はずだった。

「ウィンリィも承知してくれてる。だからいろいろオレをフォローしてくれてるんだ。」
「だからこそですよ。健気じゃないですか!?あんないい子滅多に居ませんよ。早く幸せにしてあげないと、不公平ってモンです。アルフォンス君が人間になれないからって、貴方まで付合う理由にはなりません。意味ありませんよ。第一アルフォンス君の事は何も貴方のせいじゃないでしょう!?」
「たとえそうでもアルは目の前に存在している。アルはオレが償うべき大罪なんだ!俺を戒める為の‥」
兄さんのくぐもった低い声。
これこそがボクへの審判だ!
何度否定しても沸き起こった恐怖。それが今現実になった。いや、もとから現実だったんだ。
ボクという存在は兄さんの重荷でしかないっていう事。

世界が急速に色あせる。
なのに。審判が下ったのに!未練がましくボクは存在している。
泣きたいのに、涙は‥無い。
消えてしまいたいのにボクは指一本すら動かせない。
いっそ狂ってしまえたら‥

壁の後ろ、兄さんと今は准尉に昇進しているブロッシュさんが立ち去った後も、ボクはそこから動く事が出来なかった。

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