「なぁ、俺らもリクエストしていい?」
「自分小説ですか?」
「まさか。面白い会話があるからな。読んでみたいだけだよ。」
「日頃の恨み辛み解消‥ですか?」
空々しく笑うハボックに片眉上げると、ファルマンはペンを手に取った。
突発リクエスト ハボック少尉編 ファルマン作
主人公妹付騎士隊長x敵国竜騎士
会話レベル下
「威力だけじゃなく方向や形まで自由自在に‥見事だね。」
国家錬金術師の試験を受ける為上京したセントラル。街中の捕り物劇。市民や建物に被害を及ぼさ無いようかつ迅速で派手な見るのは2度目となるロイの錬成に、アルは思わず呟いた。それに対し、エドは面白く無さそうに鼻を鳴らしただけだった。
「誉めて頂いて恐縮だね。」
「聞いてたんですか!?あ、済みません。生意気な事言って‥」
「全然。素直に感嘆して貰えてなによりだ。エドはそうでもなかったようだが?」
「そんな事無いです。何も言わなかったって事は兄さん、凄いって思った証拠です。ただ、きっとマスタングさんをライバルみたいに思ってて、素直に言えないだけです。」
「これでも中佐なのだがね。」
「あ、済みません。マスタング中佐。」
「そうだな、君にならロイと呼ばれても構わないが?」
「え‥う、その」
「冗談だ。私の冗談は面白くないかな?」
「済みません、その、僕に冗談を言われるとは思わなくて‥」
「私は国家一筋の堅物ではないよ。今後の方針や誤解を解く為にも、一度ゆっくり話してみたいものだ。」
「わかりました。そう、伝えておきます。」
「君も。」
「はぃ?」
「私は君にも興味がある。試験が落ち着いたら、ぜひ話しが聞きたいものだ。」
「わかりました、ありがとうございます。一緒にお伺いします。」
「楽しみにしているよ、アルフォンス。」
会話レベル中
「切っ掛けは何だったんだい?やはり、お父上かな!?」
最終国家試験。大総統も頷いた最年少の国家錬金術師誕生は、エド本人が錬成した花弁が降り注ぎ、中央のエドを華かに祝っていた。受験者で無いアルはその場に同席できず、会場の外から天に輝く花を見上げていた。
「中佐?あ、兄さんは?」
「合格だろう。期せず派手な演出となったようだが、その実力は父親以上‥かもな。」
「そういえば、軍は父さんを探しているんでしたね。」
ロイは肩を竦めるた。
「私の管轄ではないからな。手紙は、リゼンブールへ行く口実に丁度良かったから‥」
「中佐?」
「ああ‥何でも無いさ。それより、おめでとうと言うべきか、残念だったなと言うべきかな?」
「兄さんは、合格したんですよ、ね?」
「それは間違いないが、君は受けられなかったからね。私の進言を聞いて。」
「あの時は、感情的になって済みませんでした。中佐のおっしゃる通りもし僕の素性がばれたら、僕だけでなく兄さんも、ばっちゃん達や中佐にもご迷惑をおかけしたかも」
「‥本当に素直だな、君は。私が意地悪したとは思わないかね?バルドを捕まえる時のような」
「意地悪と言うなら、歓迎すべき意地悪ですね。おかげで兄さんはやる気になる‥と、あれ?中佐、良いんですか?こんなところにいて。なにかご用‥あ、それともお仕事ですか?」
ロイは苦笑すると、アルの肩を叩いて会場内へと戻っていった。
「もしかして、僕を心配してくれたのかな‥、そんなわけ、ないか。」
「あ〜、小さいお兄ちゃんだ〜。」
肩車しているニーナがアルの冑を叩き、振り向いたアルは軍の大きな建物を初めて見たきがした。
「なぁこれって、大佐がリクエストしたのよりラブラブじゃないか?」
「そう言われても‥大佐がリクエストしたのは身分違いの恋。これは、あくまで敵騎士が御互いを認め合う男同士の友情。会話については、ゲームに文句言ってください。クレームつけるなら、作りませんよ。‥‥?ハボック少尉?」
「こういう風に大佐は俺の彼女を〜〜」
「それは違うと‥」
「‥続けますか?」
「続けてくれ。テクニックを盗む。」
「「「‥‥‥」」」
メラメラ燃えるハボックの横には防火水バケツが用意され、再びペンは走り出した。
会話レベル上
「アル、話がある。」
「大佐?」
「前から考えていたんだが、ホーエンハイムも現れて決めた。ロイ・マスタングとして申し入れる。君を正式に我が家に迎え入れたい。」
賢者の石となり軍とホムンクルスからの逃避行のはて、辿り着いたリゼンブール。
ロックベル家の裏庭で、ロイはアルを引きとめた。
「僕、を!?‥我が家にって、どういう?」
「君の錬金術の腕前は、エドにも劣らない。軍への入隊は無理でも、私の私兵として誘う事を国家試験の時からずっと考えていた。そして君と話しているうちに錬金術の腕前だけでなく、心の強さや優しさを知り、私は君を人として同士として、命を預けて共に戦えると思ったのだ。軍に巣食う利己主義を排する為共に命を賭けてくれないか?」
「そんな風に思ってくださって、ありがとうございます。感謝します、大佐。でも、ホムンクルスを作るのが僕達錬金術師の業なら、僕達がそれを是正しなければ。その為に僕はここにいるんです。」
「人に、戻れなくても?」
「賢者の石は、たぶんあってはならないもの。ならば、道は1つ。正しく使い、この世から無くす事です。」
「そういうと思ったよ。分ってる。君もエドも、信じる道を行くといい。私は‥君と、君達兄弟と出会えて良かった。」
「ありがとうございます、大佐。大佐も、どうかご無事で。」
「全ての決着がついたら、もう一度ゆっくり口説くとしよう。」
「大佐、僕‥」
「楽しみにしている。」
もう一度は叶わない、叶えられないだろう約束。
二人はそれに目を瞑り、其々の道を進んでいく。
「カッコイイですね。」
「よ過ぎだぜ。ちっ。そういうフュリーは‥なんだそれ?」
「スカーと」
「お、スカーとアルか。俺も怪しいと思ってたんだ。」
うんうん頷くブレダ
「いえ僕はただ、スカーってどういう人かと」
「ありゃ、なんだね。大穴っつーか」
「大佐もエドも、トンビに油揚げだな。」
オヤジ口調の下世話な会話に、フュリーは引き返せなくなった。
突発リクエスト リュリー曹長編
竜族に仕える人間には無愛想な高名無口の賢者x主人公妹
会話レベル下
「スカーさん。」
「‥‥‥」
「あの、スカーさん!?」
自分が、アルフォンス・エルリックが本当に存在していたのか。
ナンバー66の問いに迷宮へと落ちたアルは、エドの静止を振り切り街をさ迷っているところでイシュバールの兄弟とスカーに出会った。
光を見出したくて、でも不安で。
そのまま身を寄せた地下水路。丁度良いというわけではないが、今までは悪評しか知らなかったイシュバール人の人となりに触れ、真実を尋ねたくてアルはスカーに声をかけたのだが
「‥‥‥」
しばらくして閉じていた目を開くと、やっとスカーは赤い目をアルにとめた。
「スカー‥さん?」
「‥イシュバールの神に祈りを捧げていた。」
「あ、済みません。邪魔してしまいましたか!?」
「なにか用があるのではないのか?」
「あ、はい。えっと、イシュバールの事を知りたくて‥」
「‥それは良い心掛けだな。あるがままを受け入れるイシュバールの教えに触れ、錬金術の愚かさを悟るが良かろう。」
「こんだけ?」
「設定が無口ですから。」
「ですから僕はただ純粋にスカーという人の‥先輩達、聞いてます?」
会話レベル中
「スカーさん。」
「なんだ?」
「イシュバールの教えを聞いて、なんだか僕、頑張る気になりました。」
「そうか‥なら幸いだった。」
「僕が何かなんて、この世界から考えれば小さな事なんですね。」
「‥お前は、存在が兄の好きになった女性に似ている。」
「え?」
「可憐で美しい女性だった。自然の声を聞き大地と共に生きる‥だが、俺達が間違うと、はっきりと意見できる芯の強い‥だが、もういない。そして俺達は、自分を見失った‥‥‥」
「スカーさん。貴方は‥」
黙ったスカーに、アルも口を閉じて横に座った。薄暗い地下水路でも水面が僅かな光を反射して仄かに明るい。そんな中でふたりは沈黙を共有した。
「僕は‥強くありません。でも、強くなりたいと思います!僕が偶像でも、大切なものを守れるように‥」
「弱くて良い。兄の横に居てやれ。」
「スカーって良い人ですね。」
「ですから、これはゲームを元にした‥」
「この会話って、元もこんなの?」
不信気なハボックにファルマンは笑いかけた。
「本当はもう少し怪しいと勘ぐりたくなりますが、スカーとエドワード君が恐いので、これまでにしておきましょう。別の組み合わせでも、無口なのはありますが?」
「どんなのだよ。」
「この場合、アルフォンス君が人情に厚い傭兵隊長で、スカーが無口な美女の冷徹傭兵となります。」
「スカーが、美女!?」
ファルマンは頷くと、でだしをさらさらと書いて見せた。
無口で冷徹だが美人。隊長にだけ懐いている女傭兵x皆に慕われる人情厚い傭兵隊長
会話レベル下
「アルフォンス‥」
「スカーさん?良かった、見つかって。復讐の為に賢者の石を造るなんていけない!軍もリオールの町を包囲した。今すぐ止めて逃げるんだ。」
「お前は愛想の良い方が好きか?」
リオールの鐘が鳴る。
「‥‥は?」
「愛想が良い方が好きかと聞いている。それとも、悪くて良いのか?」
「それは、良い方が‥話しかけやすいと‥」
「わかった。」
「スカーさん?」
「お前がそう言うなら、そうする。」
「ス・スカーさん?あ、待って。どこ行く‥スカーさんてば。え〜〜、何かあったの!?」
会話レベル中
立ち止まったスカーに追い付いたアルは、意を決して話しかけた。
「スカーさん。リオールの町は軍に包囲されてるんです。もう、これ以上誰かの血が流れるのは嫌です。お願いします。反乱を収めて逃げて下さい!」
「分った。」
「!ありがとう、スカーさん。」
「やるぞ。」
「え?やるって‥何を?」
「愛想だ。」
「へ?」
スカーはアルに向き直ると、ぎこちなく口元を緩めた。
「今日はいい天気になりそうだね、アルフォンス。こんな日は心がウキウキするね。」
「わ〜ん。スカーさんがロボットみたいで、壊れてるよ〜」
アルはしゃがむと泣き出した。
「‥どこか間違ってたか?」
「いい!いいねぇ〜。やっぱこうじゃなきゃ。お前もやるなぁ、ファルマン。」
「まったくだ。お、ハボック、これは?ほらコイツら。主人公と絡まないけど同盟加盟国の王子だし、このイッテる性格、エドそのものじゃないか?」
「面白そうですね。」
ハボック・ブレダ・ファルマンは顔を見合わせて頷いた。
「やりましょう!」
突発リクエスト ブレダ少尉編 ファルマン作
父の偉業・母の期待に堪えられず腕を磨く理由で出奔した賭博好きの同盟加盟国王子
x
主人公達の国に住む若き修道僧(♂)
会話レベル下
イズミ・カーティスに師事を申し出たエルリック兄弟は、その基本を学ぶ為ヨック島に放り込まれた。
「なぁ、アル。俺と賭けしないか?」
「なんだよ、兄さん。藪から棒に‥僕達この無人島に取り残されちゃったんだよ。」
「だからさ。島の探索は済んだし、ここにはテレビもラジオもない。退屈じゃん。だから賭けでもしようぜ。」
そういうとエドは砂でコインを錬成した。親指で弾くとコインは回転してエドの甲に落ちた。それを素早く隠すと
「表か裏か?」
「‥‥じゃ、表。」
「なら、俺は裏だな。」
エドが甲を見せると裏返ったコインが乗っていた。
「兄さんの勝ちだね。」
「じゃ、俺の言う事を聞け。」
「なんで?」
アルが眉を顰めるに、エドは鼻で笑った。
「今、俺に負けただろ?負けたからには俺の言う事を聞かないとな。」
「負けたら言う事を聞くなんて、そんな約束してなかったじゃないか。」
「細かい事は気にするな。」
「細かいって‥まぁいいや。言う事って、何を聞くの?」
「足を引っ張れ。」
「足?‥この間テレビでやってた身長を伸ばす体操!?」
「ち・違う。良い機会だから体を鍛えないとな。」
「素直じゃないなぁ。毎日牛乳を飲んだ方が効果あると思うけど。」
「五月蝿い。黙って引っ張れ!」
「引っ張れって‥お・重い〜」
「修行だ。」
「こんなの何の修行‥う〜‥‥‥」
「よ〜し。今日はここまで〜。また、頼むな。」
「ぼ・僕だ‥疲れて‥兄さん‥自分勝手‥も、ダメ」
「アル〜?そんなトコで寝ると風邪引くぞ!?」
会話レベル中
「アル〜、この間からやってる体操、役に立ったぜ。」
どうやらエドは木に目印をつけて身長を計っているようだった。
「朝っぱらから疲れた顔してるけど、大丈夫だよな?今夜もやるか?」
アルは首を振った。
「あまり大丈夫じゃないよ。今日は許してくれない?」
「なーにを言って。修行は始ったばかりだぜ!?もう少しやる気を出せよ。そんな気持ちじゃ弟子入りできないぞ。」
「そう言われても、砂浜で寝てる兄さんの足を引っ張るのは結構タイヘンなんだよ!?砂地で足場が悪くて力入らないし、持つ足に力を入れると兄さん痛いって怒るし。それでなくても昼間のサバイバルで体力使って」
「じゃ、賭けで決めようぜ。」
エドがコインを取り出すのに、アルは困った目を向けた。
「兄さん‥ヘンな仮面の人とのサバイバルで疲れてるでしょ!?隠してるけど、よく転ぶじゃない。今日はもう、休もうよ。怪我したら元もこもないよ。」
「俺の心配は要らないぜ。さあ、アル。どっちにする?」
体中が痛かった。寝不足なのか食事を満足にしてないせいか、少し背中がゾクゾクする。だけどアルは同じように疲れているはずの兄の目に、遥か先を目指す光をみとめ、
『兄さんに、休んで欲しかったんだけど。今の方が兄さんらしいもん、仕方、ないね』
心の中で自嘲しながら裏と答えた。
「オッケー、俺が表だな。いくぞ。」
エドの甲には表向きのコイン。だけど一瞬、アルは光を見た気がした。
「‥‥今コインを変えなかった?」
「なんだよ、アル。俺がズルしてるとでも?」
「‥‥そうだね、ごめん。」
「じゃ、今夜も待ってるからな。」
「‥うん」
「‥‥‥待てよ、アル。」
朝食を探しに森へと向かう弟の背に、エドは呼びかけた。
「なに?兄さん。今日の食料探しは僕が森側で、兄さんは海側だったよね。違った?」
「そうじゃなくて‥しょうがないなぁ。そんな疲れた顔するなよ。心配でおちおち釣りしてられないぜ。今日は休め。」
大げさに溜息を吐くエドに、アルは小首を傾げた。
「でも。僕、負けたし」
「負けた方が勝った方の言う事を聞く約束だ。俺が勝ったんだから、お前は今日はずっと休んでろ。」
「ありがと、兄さん。だけど兄さんにだけ無理はさせられないよ。」
「わーった。俺も休む。だから、アル!」
力が抜けたように、アルはその場に座りこんだ。
「‥ほんとはヘトヘトだったんだ。」
「俺がずっと付いててやるから。」
「うん‥でも、兄さんも休んでね。」
「ああ、それで明日からはまた付合ってくれよな。」
「うん。必ず。」
「うわっ、ヒド。マジ自分勝手。大将に似てるわ〜」
「だろ!?この会話を読んだ時、ピンと来たね、俺は。アルを思い遣ってるんだが、実は自分が一番引っ張りまわしているという」
「なぁ、これって‥俺達にも当てはまらないか?」
「言えてる、言えてる〜。大佐も自分勝手だからな。」
「「ほ〜、そうか?」」
焔と鋼を構えながら、入り口で仁王だつ二人の錬金術師に、ブレダとハボックは死刑囚の心境を理解したのだった。
epilogue
7月竜