「あの、ボクのリクエストも聞いていただけると伺ったのですが、良いですか?」
「礼儀正しいですねェ。エルリック兄弟と言い、兄に比べてどうして弟は正しい子なんでしょうか。ええ。勿論君のリクエストも受け付けますよ。何が良いですか?フレッチャー君」
「えっと‥この隣国の王子兄妹が。この兄妹だと兄さんが誤解されやすいところが、上手く表現できると思うんです。」
「ああ、この会話レベルAあたりですね。”お兄様の判断はいつも正しいけれど、正直に言いすぎるから人から誤解をされてしまう”ってところですね。でもラッセル君なら”嘘をつくから墓穴を掘ってしまう”って件になりますが、いいですか?」
「あ〜‥それだと」
「ちょっとお待ちなさい!」
突然現れた黒髪の女性に密談室に緊張が走る。
「わv美人!」
「どうでもいいけど、エドといい大佐といい、どーして部外者が入って来れるんだ?どっから入ってくるんだろう?おい、フュリー、犬を外で番させとけよ。」
「かえって怪しまれますよ、ブレダ少尉。それじゃあ。」
「そんなことより、あなたは誰です?」
「わたくしは、通りすがりのダンテ。」
「「通りすがり?」」
「美人なら良い!胸の開いたドレスもv」
「そのゲームはもともとわたくしが、ホーエンハイムの息子を門の向こうへ飛ばしたから、こちらへ持って帰れたもの。わたくしにこそ1番のリクエストをする権利があると思うの。この子はハッキリとした目的も無さそうだし、そうでしょ!?」
ダンテに微笑まれ、フレッチャーはどうしようもなくコクコク頷いた。
「わたくしをこの見習い女兵士に。」
見習い女兵士。祖国の為戦う決意をした敵国貧村の少女。親を失っても明るくまわりを和ませる雰囲気を持つと解説されているが
「却下です。」
「どうして?敵ながら皆に愛されるこの子はわたくしにピッタリ」
「相関図に入りません。」
「主人公を相関図の中心にしているからでしょう。端々でもたくさんの会話が交されているじゃないの。」
「というより、面白い会話だけチョイスしている節が」
ハボックの援護をファルマンは鼻で笑った。
「私は公平です。主人公が中心なのは理に叶っているでしょう。主人公に関らないキャラは却下です。」
「不公平の塊のような選択ばかりだと思うが、さすがデスクワーク専。隙の無い言い分だ。」
「じゃ、この子のリクエストだって”隣国兄妹”なんだから主人公との会話じゃないじゃないの!」
「隣国兄妹の会話にはレベルAで主人公王子、即ちエドワード君に絡みがあるんです!凄いでしょう。」
「エドワードさんとの絡み‥ですか?」
「そう。こんな具合です。」
フレッチャー君のリクエスト 隣国王子兄x隣国王女妹編
「兄さん、見て。僕も赤い水の構築式を組みたててみたんだ。ね、僕だって兄さんの手伝いが出来る‥」
「フレッチャー‥確かにお前の錬金術の腕は認める。しかし優しいお前にマグワールの元で働く事は、お前を傷付ける事になるだろう。お前はセントラルに帰れ。」
「それを言うなら兄さんだって!兄さんを独りにはして置けないよ。兄さんは正直に言い過ぎり、つい安易に小さな嘘を付いたりどちらかで、後に引けなくなって人に誤解されてしまうんだ。放ってはおけない。分ってよ。」
「俺の事は良い。今はフレッチャー、お前の事が問題なんだ。このまま研究を続ければ、どこの馬の骨とも分らぬ錬金術師に騙されかねない。なにより、お前とエドワードを近付けさせるわけないはいかん!」
「な・何を言いだすの、兄さん!僕とエドワードさんはべつに‥」
「済みません!済みません〜っ。せめてアルフォンスさんにしてもらえませんか!?恐くてこれ以上聞いてられません!」
「泣き出されても‥、アルフォンス君でですか‥。するとアルフォンス君を”何所の馬の骨”とラッセル君が言う事になりますが、それでいいですか?フレッチャー君!?」
「フザケルなラッセル!俺の可愛いアルに向かってなんて事言いやがるっ!」
「大将‥」
「どこだ、何所から入ってくるんだー。天井か?床下か?どこでもドアなのかーっ!??」
パニくるブレダを無視し、暴れるエドをフレッチャーとフュリーが外へ連れ出す。
「すいませ〜ん。じゃ、ワタシがリクエストしてもいいですか?」
「あ!もうひとり美人が増えた。しかもやっぱり胸が大きい。」
「また部外者が‥も、やだ」
「失礼ですが、あなたは?」
「ファルマンさんのファンでロゼと言います。」
「許可しましょう。」
「どこが公平やねん。私情ばっか‥」
ロゼさんのリクエスト 同盟国王女x主人公王子
会話レベル下
「エド。あなたいつまでもこんなところにいて、いいの?」
「いきなりなんだ?」
荒れ果てたりオールの街。これ以上の犠牲を恐れ、人々は地下水路を逃げる。地上ではスカー討伐と反国家勢力鎮圧名の元に、軍による無差別攻撃が成されようとしていた。
「あなたは軍の行為が正義じゃないと分っている。だったら、軍から離反して一緒に脱出しましょう。」
「‥慌てる事は無い。物事には機と言うものがある。」
ロゼは女らしい眉を寄せた。
「エド、あなた誰かと‥お話する時間を設けているんじゃないの?」
話すための時間じゃない‥時間を稼げば大佐がアルを、すっげぇムカつくけど、安全な状況に守ってくれるはず‥。ごめん、アル。傍にいてやれなくて‥
伏せた目が上がると、エドの鋭い眼光が長い前髪の間からロゼを見据えた。
「あんたには関係無い。だが、心配するな。安全なところまでは一緒に付いて行ってやる。」
「なら、いいのだけど‥」
ロゼは気を取り直すようにエドの手を引っ張った。
「そうだわ。もしあなたが怪我をしたらすぐにワタシにお言いなさいね。聖母の名の元に、すぐにあなたの傷を癒してあげる。」
「んな事言っても、あんた、医者でもなければ癒しの錬金術も使えないんじゃ‥」
「あら、聖母の名前は伊達じゃないわ。ライラがそう言ったもの。ワタシが皆を癒したって。きっと、ううn。本当に神の力があるのよ。これからはワタシがあなたを助けてあげるわ。前に歩けるように、ね。」
自信に満ちたロゼの表情に昔の彼女の面影は無かった。
「自己主張が強くなったな‥良い事なのか、やり過ぎなのか‥」
ライラの急かす声の方へ、ロゼに引っ張られてエドは走り出した。
会話レベル中
「お待ちなさい、エド。」
「なんだ?また用事か?それとも説教かよ‥」
軍駐屯地に残してきたアルが心配で、早く安全なところへロゼ達を逃がし、飛んで帰りたいエドは少しイライラしながら呟いた。
地下水路は砂漠に抜けていて、ここに置き去りは心配なので、エドは近場で安全な町への脱出を模索していた。夜明けまでには未だ時間があり、軍もリオールの街には攻め入ってないようだった。
「ライラに聞いたのだけど、あなた随分無鉄砲な事をしているのね。鋼の錬金術師が、そんな事でいいんですか?」
「二つ名なんて意味無いさ。元々軍に忠誠を誓っちゃいない。俺が軍の狗呼ばわりされても、元に戻れるならそれで良かったし、今もあんた達を助けスカーを止められるなら、裏切り者扱いされても構わないさ。」
「‥困ってものですね。どうせその服の下は傷だらけなのでしょう。せめてワタシが治します。見せてごらんなさい。」
「そ‥だな、じゃ、頼むわ。」
「!き‥きゃああ〜!?い、いきなり何をしようというんです?」
袖を脱いで左腕を出しかけたエドは、ロゼの反応にきょとんとする。
「え?右は機会鎧だから左手の傷を見てもらおうかと‥」
「けだもの!ヘンタイ!悪魔!どさくさに紛れてワタシを襲おうなんて許しませんよ!」
「うわっ?ま、待て、ロゼ。物を投げるな。傷口が開く‥おい!‥‥‥、自分から見せろって言ったんだろうが‥、女って分らん」
ロゼに逃げ去られ、ひとり片腕出したまま取り残されたエドのまわりを風が吹き抜けた。
会話レベル上
「ロゼ‥そんなトコで身構えてないで、いい加減逃げる準備をしてくれないか?」
「‥もうワタシを襲うつもりは無いんですね!?近付いた途端、強引にワタシを押し倒したりもしませんね!?」
「アル以外にそんな事するか‥じゃない、あれは誤解だ。だが悪かった。驚かせちまって」
「‥確かにワタシも不注意でした。ワタシ、男の方の裸って見たのは初めてでしたから。」
「裸って‥肩だけだろ?」
「そ、それだって大事です!ワタシ‥‥」
「?どうしたロゼ?なんか、いつもと違うけど」
「べ、別になんでもありません!そ、そんなにジロジロワタシを見ないでもらえませんか‥い、いやらしいわ。」
「いやらしいって‥、そんなんじゃないんだけど、悪かったよ。」
「まあ?そんなんじゃないって、それはワタシの身体つきに魅力が無い言う事なのですか?」
「‥どっちなんだ‥」
「ワタシをこんなに動揺させておいて、自分は平然としているなんて‥ああもう!憶えてなさい、エド!ワタシだって今にあなたを動揺させてみせます!」
ライラの元へ走り去るロゼの背を見送り、エドは頭をかいた。
「やれやれ。意外と可愛らしいところもあるけど、早く安全なトコへ逃げてくれよ。アル〜、兄ちゃんお前のトコに帰りたいよ〜。」
戦闘開始は間近に迫っていた。
「ちょっと待って下さい!全然ラブラブになってません。」
半泣きか嘘泣きか。うるうるロゼに見つめられて、ファルマンも流石にたじろぐ。
「私はゲームに忠実に、この先らぶ〜?な予感の話を書いたんですよ!?それをエドワード君が‥」
ファルマンの隣を見れば机の下、床に原稿を広げてエドが消しゴムをかけてはなにやら書き直していた。
「酷い!エド。ワタシの事が嫌いなの!?」
「あ、いや。そう言うわけじゃあ‥ただアルへの気持ちが無いと俺じゃないから‥はは」
「ははって‥どうやって戻ってきたんだーっ?お前を連れ出したフュリーとフレッチャーはどうしたんだよ(涙)」
「細かい事はきにするな。」
「するわ!」
「それにしても、流石はロゼね。良い選択だわ。わたくしが見込んだだけの事がある。」
「ライラもそう思ってくれる?」
「あなたの望み、わたくしが叶えて上げるわ。邪魔者すべてを排除し、思う存分ホーエンハイムの息子とラブロマンスを繰広げなさいな。」
「あんた達も自分世界を繰広げてんじゃねーよ。」
「あ〜でも、それだったら、俺、主人公と絡まないけど、傭兵同士のラブロマンスとか、敵国竜騎士と隣国王女のラブロマンスとか。とにかくラブロマンス‥いやそれのみならずほのぼの全て俺とアルで読みたいかも。なぁ、ファルマン准尉〜、書いてくれよ。あんたが書くとリアルでさv。それに、使うキャラで同じ設定がこんなに違うって、あんたの腕の見せ所になるしさ。」
「そう言われると、書きたくなりますねェ。」
「主人公と絡まないキャラは書かないんじゃないのかよっ!」
エドの猫かぶりごますりにファルマンの口元が弛むのへ、ブレダがチョップを放つ。
そこへ
「あ、兄さん。探したよ!?」
「アル、俺を探して!?v‥‥‥っていうか、やべっ」
ハートマークでアルを迎えたエドだったが、自分の書いていた原稿を思いだし、慌てて背中に隠した。
「‥‥‥、こんなところで何をしていたの!?」
エドの慌て振りに、ずず〜んとアルの影が大きくなる。
「お前こそ、どうやってここが‥」
「や、鋼の。それにお前達。」
アルの後からロイが片手で挨拶する。
「「「「大佐!?」」」」
「裏切ったんですか〜大佐〜〜〜っ」
「アルに頼まれたら断れなくてなぁ、はっはっはっ」
「「「爽やかに笑ってんじゃねーっ」」」
「ファルマン准尉、また何か書いてるんですか?」
「これはいいところに、アルフォンス君。はい、どうぞ。読んで見て下さい。」
「「「ファルマン!お前もか」」」
「アルフォンス君を敵に回すと、もれなくウィンリィさんやホークアイ中尉まで敵に回りそうなので。スミマセンね、皆さん。私も自分が大事ですから。」
これまた爽やかに笑ってファルマンはアルを伺った。
「‥‥‥‥ 」
個々のリクエストとファルマンの資料を読み終えると、アルは原稿をファルマンに返した。
「どうです?アルフォンス君?」
アルの後ではエドが、そして笑顔の下でロイもビクビクと反応を見守っている。
「僕もリクエストして良いですか?准尉!?」
「もちろん!歓迎しますよ。」
「じゃあ、これでお願いします。」
フレッチャー君のリクエストに邪魔が入った為
ファルマンと7月竜のミックス仕様となっております