会話レベル下
霧煙る森。数メートルしか効かない視界。ただ戦闘の音が、悲鳴が彼らを包んでいた。
「大丈夫か?アル。」
前に立つエドワードは後ろに庇うアルフォンスを振り向いた。
「ええ。大丈夫です。」
「俺が傍にいる!何かあったら俺を呼べ。いつでも駆け付けるからな。」
「はい。兄さん。‥あ、なにを?」
突然抱締められ、アルフォンスは動揺した声をあげた。
「沈んだ顔をしていたからな。安心させたかったんだ。」
「兄さん、場と言うものを考えて下さい。皆に見られたらなんと噂されるか‥」
「済まない。嫌がる事をするつもりはなかった。」
「いえ、嫌というわけでは‥」
「なんだ。やっぱして欲しかったのか?」
「そう言うわけでは‥」
頬が熱くなってアルフォンスが俯くと、くすっと、エドワードが笑う気配がして、アルフォンスは兄を見上げた。
「赤い顔をして。可愛いトコは昔から変らんな。」
「もう。怒りますよ!?」
エドワードの胸をひとつ叩くと、アルフォンスは兄の胸に顔を隠した。
霧煙る森。視界が数メートルしか効かないとは言え仲間は其処彼処におり
「戦わんかー、鋼の!!」
「状況を考えろ〜ッ!」
怒声が彼ら二人を取り巻いていた。
会話レベル中
魔物に占拠された塔。地上8階まであるその塔を放っておけず、彼らは無謀な戦いに望んでいた。
「だいぶ腕を上げたな、アル。」
「兄さんの指導の御かげです。でも、まだまだ遠く兄さんには‥。早く上達して兄さんの役に立ち、この愚かな戦いに終止符を打ちたい。ヒトは何故、このような悲しい錬成を繰り返し、魔物を作ってしまうのでしょう。」
「ああ。‥だが、少しだけ俺にも分るかな。」
「兄さん?」
アルフォンスは側で自分の肩を抱く兄を見上げた。
「何所まで自分に力があるか、どこまで錬成できるのか試してみたくなる。俺が男だからかな。軽蔑するか?」
アルフォンスは首を振った。柔かな髪がエドの上着に当ってパサパサと音を立てた。
「兄さんは、ご自分の行動に責任を持ってみえます。ですが、もしお力を試される時はお願いします。決して無理は、愚かな錬成だけはしないで下さい。」
「ああ、分ってる!お前の泣き顔は見たくないからな。それに、お前に成敗されそうだ。」
「ふふ、きっとですよ。」
まだこの先5階も討伐が残っている塔。巨大蜘蛛やらミノタウロスもどきやらゾンビやマミーが取り巻く中、ふたりは再び錬金術の稽古に励むのだった。
「仕事しろよ〜!」
会話レベル上
最上階8階。塔の屋上では風が吹き荒れていた。
「この戦いが終わっても、兄さんはどこかへ行ってしまったりしないで下さい。どうか、ずっと‥」
「どこへも行かないさ。俺がお前を放って置くはずが無いだろう?」
「兄さん。」
「お前の気持ちは俺が一番よく分っている。生まれた時から、いや産まれる前から。俺達はずっと一緒だったんだからな。これからも、いつまでも一緒だ!」
吹き荒ぶ風に仲間が飛ばされようと、目の前にバシリスクがとぐろを巻いていようと、二人の抱擁は終わらない。
「「「‥‥l‥‥ 」」」
ハボック・ブレダ・フュリーの3人はテレビゲームと交互に見ていた原稿から顔を上げると、ゲンナリと溜息をついた。
「おや、どうしました?3人とも。」
「いやぁ、なんというか‥、どこに突っ込んだら」
「取敢えずは大将がアルより背が高いところか」
ハボックとブレダは顔を見合わせた。
「何事も脚色は必要です。」
しれっと答えるファルマン。
「それにしても‥」
3人はテレビに映し出される会話とファルマンの原稿を見比べた。
「ホントにこんな会話してるぜ。兄妹だよな、コイツら‥」
「兄妹というより恋人の会話みたいですね、コレ。彼ら結婚しても一緒に住むつもりなんでしょうか?」
「王族ですから。」
ファルマンの答えを3人は平手で遮った。
「エルリック兄弟がヘンだと思っていたが、これ見ると当たり前な気がしてくるな。過剰な愛情表現‥」
恐るべし、ふぁいやぁえんぶれむ!!
エドワードxアルフォンス編(主人公兄x妹編) ファルマン
注:これはエドワード君のリクエストに基づくものです