「何だ?これ‥」
休憩時間。机に広がった紙を覗いてハボックはその持ち主を伺った。もっとも、おおよその見当はついていたので、読ませてもらう切っ掛けづくりとも言えた。
「”ああ、新作ですよ。」
案の上の答え。待ってましたとばかりファルマンのまわりにブレダとフュリーまでもが集まってくる。
「ふぁいやぁえんぶれむ?」
「ええ。ゲーム‥といっても我々には理解しがたい作りになっていますが、手っ取り早く言えば戦争将棋にシナリオがあるみたいなモンです。」
「チェスみたいなもんか?」
「そうとも言えますね。エドワード君が門の向うから持ち帰って来たのを、ウィンリィさんが使えるように改造したらしいんです。これなんですが。」
ドでかいトランクケースから取り出されたソレ。どうみてもテレビに手足がついた出来の悪いロボットのようだった。
「もともとはテレビに接続して遊ぶゲームらしいんですが。」
「ああ、それでこんなカタチなんですか。」
機器に詳しいフュリーも怪訝な顔で、ロボットの手に触れてみた。途端に音楽が鳴り響く。
「あー、スミマセ」
「ああ、始っちゃいましたね。ゲームのシナリオ自体はまぁその辺の恋愛小説のようですが、面白いのは特定の登場人物同士を隣接させて置くと親密度が増し、会話を始めるんです。」
「会話?恋愛小説風って‥これ、戦争モンなんだろ!?」
「ええ。戦闘中にでも発生しますよ。そうですね、エドワード君を例に取ってみましょうか?」
「「「エドワード?」」」
「彼のリクエストは主人公、双子の兄妹を自分達に置きかえる事、です。」
「リクエストって、そんな事考える前に元に戻る研究を‥って、おい、もしかして他にも?」
「ええ。作り直したウィンリィさんのリクエストは、主人公兄と主人公達の隣国王女で幼馴染の姫でしたし」
「え?ウィンリィちゃんって、やっぱ大将が好きだったの?」
「違いますよ。主人公兄の名前にアルフォンス君を振り替えて、主人公妹の方にエドワード君を‥」
「うわっ、きもっ!」
「全くです!そのセリフをゲームを進めながら書き写す苦労は」
「お前‥書き写したの?これ全部?」
ブレダの手からひらひらとレポートがこぼれる。
「丁寧に扱って下さい!私の84時間分なんですから。」
「「「84時間!?!」」」
「勤務が終わってからこの1週間、毎日徹夜でしたよ。このゲームの酷いところは会話に回数制限があってワンペアにつき3回まで、合計として5回しか出来ないところです。エドワード君とアルフォンス君を最高レベルの3回会話させると、ウィンリィさんは5-3で2回しか会話できず、また最初から親密度を上げ直して」
「も、いい。」
ブレダとハボックがファルマンの肩に手を置く。
「聞いて下さいよ。全登場人物の会話を記録する為に私は‥」
ファルマンの叫びも虚しく、ブレダとハボックは其々興味のありそうな組み合わせを手に取った。
太線:意識あり(先端矢印だけ太線は意識し始め)
紺直線:ゲーム上の繋がり
青曲線:会話により発生する繋がりで身分が関係するもの
橙曲線:会話により発生する繋がりで家族愛傾向
桃曲線:会話により発生する繋がりで恋愛模様
翠曲線:会話により発生する友情傾向
赤曲線:会話により発生する‥解読不能な会話(笑)
7月竜
<エドのリクエスト> <ウィンリィのリクエスト> <ロイのリクエスト> <ラッセルのリクエスト>
<フレッチャーのリクエスト> <アルのリクエスト> <リライト1 2 3 4 5 6> <リライトep>
prologue