会話レベル
リオールの街でスカーがしている事。
エドは偵察名目で単独リオールの街へ行く許可を得ると、東方司令部を後にした。
人質として残していくアルフォンスをロイ・マスタングに託して

「大佐‥」
「どうかしたかね?」
「あの、大丈夫ですか?」
「エドの事なら心配いらんだろう。」
「いえ兄さんの事ではなく。大佐は僕を庇ってお怪我を‥」
ロイはアーチャーとのやり取りを思い返した。
「ああ、あの時は‥見苦しいところを見せてしまったね。もう、大丈夫だ。次は遅れをとりはしないよ。」
傷を負った腕と肩を軽く動かしてみせると、ロイは笑った。
「待って。見せて下さい。本当はご無理をされているのではないのですか。」
「アル‥」
「ホークアイ中尉や他の人にも‥大佐は変り無く振舞っておられますが、でも、本当は‥」
「何も心配する事は無い。」
ロイはアルの肩を掴むと安心させるように微笑んだ。
「君の身は私が守る。エドにも約束したらかな。」
アルは揺れる瞳でロイを見つめた後、小さく息をついて頷いた。
「出過ぎた真似をして済みませんでした。でもどうか。どうか僕の為なら無理はなさらないで下さい。大佐は国家にも、兄さんにも無くてはならない人なのですから。」
「ありがとう。君に言われるのが何より嬉しいよ。」
言葉を言い終っても。二人は互いから目を逸らせずに、でも近寄りも出来ずにただ、見詰め合っていた。ロイの部下が、彼を呼びに来るまで。




会話レベル
ロイは東方司令部に詰めている大総統の指令を片付けると、足早に臨時の彼の執務室へと向かった。
かつての彼の部屋は、今の東方司令官が詰めている。大総統が使われている部屋の近辺は他の大将達が使用している為、ロイにあてがわれたのは裏庭に面した北側だった。

寒さがます夜更けの裏庭に小さな錬成光が灯る。
「随分と腕を上げたな。」
「大佐?」
エドがひとりリオールに向かい、その間せめて錬金術の練習でもと地面に錬成陣を描いていたアルは、背後からかかった声に飛びあがった。
「済まない。驚かせてしまったね。」
「いいえ‥大佐もこんな遅くまでお仕事ですか?」
汚れた手を恥ずかしそうにはたくと、アルは後手に隠した。
「大佐という地位を担うからには致し方ない事さ。そう言う君は錬金術の練習かい?なにもこんな夜更けまでしなくても良いだろう!?」
「はい。ですが役には立てなくても、せめて足手纏いには成りたくなくて‥。守られてばかりでは申し訳ありません。」
「足手纏いどころか、君は充分役に立っているよ。だが、エドと違い君は軍属ではない。守られていても良いんじゃないかな!?」
「いいえ、いいえ!僕の為に誰かが傷付くのは嫌です。守られているばかりは嫌なんです。今度は!これからは僕が皆を、兄さんを‥大佐を守りたいんです。」
「‥アル!」
ロイはアルが、アーチャーから庇って自分が負傷し他事を思いの他気に病んでいることを知る。
「アル‥‥」
再び地面に手をついて錬成を始めるアル。
ロイは夜空を見上げると、きつく拳を握り締めた。




会話レベル

立ち去らないロイの気配。自分の意地に付き合せているようで、アルは錬成の手を止めた。
その背にかかる温かな重み。
「大佐?」
着ていた上着を自分にかけてくれたのだと、アルは焦って立ちあがった。
「大佐が風邪を引いて仕舞います。」
軍服を返そうとして、自分の手が汚れている事に気付き、アルは悲しそうに眉を寄せた。
そんなアルの途惑いを無視し、ロイは上着ごとアルを抱締めた。
「この先‥」
「大佐?」
「エドの、君達の探している事」
「賢者の石‥」
「私は君達の敵にまわらなければ成らなくなるかもしれん。」
「済みま‥せん‥‥でも‥」
「研究は止められない。」
「はい‥」
「君は私を守りたいと言った。」
「はい。大佐が僕を庇う為その胸に抱締めて、アーチャー中‥アーチャー大佐の暴力を受けられた時、僕は‥すごく恐かった。大佐が‥死んでしまうのではないかと‥」
「私も。抱き込んで改めて君がまだ子供なのだと気付いたよ。君も、そしてエドもじゅうにぶんにその実力を持っているから、‥いや、気付きたくなかっただけかもしれん。君と‥」
ロイの腕に力が篭る。
「だが、この先私とエドは道を分かつだろう。そして。」
ロイはアルの背から上着を引き上げると、自分とアルの頭上に被せた。
分け合った吐息の余韻を噛み締めると、ロイはアルを放した。
「君はエドに付いて行く‥」
「はい‥その通り‥です‥‥」
「済まない。無作法をしたね。」
「いいえ‥いいえ、大佐。僕‥」
「この先、袂が分かれるまで、いや、袂を分っても!君を守ることを誓うよ。その時々の立場を利用してでもね。だから、安心して自分の道を行きなさい。」
「大佐‥」
ロイはアルの頬を拭うと上着を拾った。
「さあ、もう戻りなさい。アルフォンス・エルリック。子供は寝る時間だ。」
ロイはアルの背を押すと、自分も執務室を目指す。
そして、もう。
小さく自分の名を呟くアルの声にも振り返ったりはしなかった。




「美味しいですね。」
「美味しすぎないか!?」
「流石に大佐、選びまくってたからなぁ。取敢えず、突っ込んどくか、なんで人に戻ってんの?アルフォンスの奴。」
「細かい事は気にするな。」
「ゲゲッ大佐、どうしてここに‥」
「上官である私がお前達の動向を把握して無くてどうする。うむ、ファルマン、いい仕事をしてくれた。」
ロイは原稿を読むと、頷いてファルマンに返した。
「お褒め頂いて恐縮です。」
「ちょっと分らないんですが」
「なんだ、フュリー。言ってみろ。」
「アルフォンス君が人に戻ってるのは良いとして、だったら何故賢者の石を探してるんですか?」
「‥、そ・それはアレだな。あー、うん、鋼の方がまだ機械鎧だからだ。」
閃いたロイの笑顔に、すかさず次の爆弾が投下される。
「なるほど。ところで、無作法って、何したんです?」
「何って‥ナニだろう。」
「ナニって言われても‥10から14歳ぐらいの男の子に対する無作法だから‥えっと、えっと?そういえばアルフォンス君て、どんな顔してるんでしょうか。やっぱりエドワード君に似てるんですかね?」
「「「‥‥‥‥」」」
改めてエドで小説を想像してしまった彼らは誰一人、ヒュリーの問いに答えられなかった。

『アルフォンスの顔、アルフォンスの顔、アルの顔‥‥』
「うがーーっ」
ロイは枕を扉に投げつけると、毛布を被った。
「早く思い出さねば!悪夢をみそうだ」
リゼンブールでただ1度垣間見た写真。
ロイは必死で記憶の引出しをかき回している。

「ぅぎゃーっ●×▲■★〜〜〜っ」
良い眠りはまだ当分訪れないようだ。

リライト

ロイxアルフォンス編(騎士隊隊長主人公王女編) ファルマン

              
注:これは大佐のリクエストに基づくものです

リライトpr> <エド> <ウィンリィ> <ラッセル> <フレッチャー> <アル

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