いつもの視線に君が居て呼吸が出来る
なのに
ちっぽけな僕は繰り返す 過ちばかりで
だけど あの日失った愛情をもう1度手にできるなら
消せない罪背負ってこの手にした愛を抱きしめて、迷わずに生きてゆくよ
処何にも成らなくたって それでも必ず君をこの手で守り続ける
手を結ぶ体温がずっと溶け合うように
<7>
ファルマン
純粋にエドアルを読みたい方はファルマンの書いた奇数頁(内容文色赤表記)のみお読み下さい。なお、ぶっらくぶらっく仕立てとなっております。お気をつけて。
「アルっ待ッ」
「どうしたの?エド!?」
俺の声を聞き付けた母さんは、悲鳴を上げると息も絶え絶えに壁に縋る俺へと駆け寄った。そのまま抱き上げるように俺をベッドへと連れて行こうとする。
「母さん、アルを止めてよっ」
心配そうに伸びてくる優しい手を逆に俺は母掴んだ。
「アルって?」
問いかけが意味を成すのに時間がかかった。その間に、アルは自室へと姿を消してしまった。
「アルフォンスだよ、母さん。弟の‥。母さん、大丈夫?俺の事、分る?」
考え込む母さんに不安がこみ上げて、問い掛けると母さんは笑って頷いた。それに、俺はひと息をつく。
「じゃ、アルは?覚えて、いるよね?」
「お前のひとつ下だったわね。それが?」
「それがって‥」
「エド以外の事なんて、どうでもいいじゃない。さ、貴方はベッドに横になって休みなさい。酷い顔色よ。」
「母さん‥?」
「ん?」
「‥父さんは?」
「ホーエンハイムがどうかしたの?」
「‥‥っ、じゃあ、ばっちゃんやおじさん達は?」
「どうしてそんな事言うの?元気になったなら、エドの話をして?あなたの話が聞きたいわ、可愛いわたしの坊や。」
この人は母さんだけど、母さんじゃ、ない!
「エドォ?」
母さんの形をした、俺の作り物‥。俺の望んだ、だけど決して母さんじゃない錬成物
「どうしたの?エドワード。どうしてあとずさるの?エド!?エド!」
俺はアルの部屋に逃げ込んだ。
アルの部屋は、わずかの荷物と不要物とに分けられて、ガランとしている。
「アルフォンス‥」
搾り出すように出た声に振りかえりもせず、アルは事務的に今後を告げる。
「父さんの文献や研究は、兄さんが要らないなら僕が貰うけど?僕はこれからセントラルへ出て国家錬金術師になるつもり。国家錬金術師なら生活に困らないからね。今までの教育費の返還分が必要なら、試験に合格後仕送りするよ。」
「国家錬金術師だって?そんなものになれるわけ‥おい、どこ行く‥話は終わってないぞっ」
アルは自分の持ち物だった物を抱えると今の暖炉に火をつけた。
「どうすんだよ、それ。」
「要らないから、燃やす。大丈夫。燃やしても害は出ないから。」
「止めろよ!」
アルの手を取ると、アルは無表情に俺を眺めて
「じゃ、悪いけど、ゴミに捨てて下さい。」
アルは俺の手に持っていたものを乗せると、身軽に家を出た。
「アルっ、アルフォンスっ!」
俺の呼び声に、その背は決して振りかえらなかった。
俺の声を聞きつけて、また母さんが騒いでいるけど、宥める気も起きない。
アルに渡された物に目をやり、その中からノートを見つけた。
頁を捲る。1枚、1枚。
どうしようもなく手が震えて、立ってられ無くて。文字がこれ以上涙で滲まないように、胸に抱え込むのが精一杯だった。
何かを得る為には同等の代価が必要。等価交換の原則
「アル‥フォンス‥‥」
俺は理想の母さんを作る為に、アルフォンスの想いを引き換えにしてしまった。
【兄ちゃん】
純粋な想い。
俺が母さんに持っていたのと同じ。母さんが俺達に持っていたのと同じ。
「アルっ」
当たり前に存在しいたから。当然のように持ってたから、失くすまで気付かなかった。
兄弟でも家族でも、水より濃い血ですら決別は訪れるのだと
【お前なんか、とっくに嫌いだぜ。】
俺が世界の中心でいられたのは、お前が居たからだ。アル。アル!