3つのパワー

運動神経が筋を刺激すると電気化学反応が起こり、
ATPADPリン酸に分解され、
エネルギーが発生して、筋の収縮を引き起こします。

しかし筋肉中のATPの存在量は少ないので
それを新たに作るシステムが体にはあります。
これは運動の強度に応じてそれぞれあります。

  1. ATP−CP::ハイパワー
  2. 乳酸系::ミドルパワー
  3. 酸化系::ローパワー
3つのパワーをそれぞれ具体的に書いていきます。


1.ATP−CP(ハイパワー)

筋肉中に存在するATPとCP(クレアチン)から得られるものです。
ATPが分解されてエネルギーを発生させるとADPができます。
ADPはCP(クレアチン)によりATPに再合成されます。

CP自体も体内では一定量しかないので、再合成する量も決まっています。
理論的に大体8秒持続させることができます。

ATP−CPは無酸素エネルギー系であり、
3つのエネルギー供給システムでは最も強度の高い運動を可能にします。

クレアチンローディングをすることで
ハイパワーの持続時間が長くなることが分かっています。


2.乳酸系(ハイパワー)

筋肉中に蓄えられたグリコーゲンが主材料です。
グリコーゲンを分解してATPを作ります。

酸素が必要なくても作られるが、強度の高い運動だと生産が追いつかないので、
無酸素的解糖となり乳酸を生じます。
乳酸は疲労物質です。

乳酸が過剰に増えるとそれから発生する筋肉中の水素イオンにより、
筋肉中のpHが酸性になり、
エネルギー生産を制限し、筋肉を動けなくしますが動かなくなります。

ハイパワーの次に高い運動強度を可能にしますが、
30秒から2分くらいしか運動を持続できません。

クレアチンにはこの乳酸の発生を抑える働きがあるので
クレアチンを摂ることはいいと考えられます。


3.酸化系(ハイパワー)

糖質と脂肪を使って有酸素的にATPを生産することができるシステムです。
すばやくATPを作ることはできないが、
運動強度を調節すれば長時間生産することができます。

ATPは糖質と脂肪から作られるので、運動中に糖質の補給が必要です。
脂肪は単独では使われず、糖質と共に使われます。

ATPを生産する最期の段階ではコエンザイムQ10
というビタミンが働いていることが分かっているので、
コエンザイムQ10をサプリとして摂る人もいます。





クエン酸サイクル

クエン酸サイクルとはATPを作り出す回路のことをいいます。
グルコース1個からATPは2個しか作られません。

ローパワーが持続するのはこのサイクルが重要な役割をしているのです。
1サイクルで12個のATPを作ります。

まず糖質代謝から見ていきます。
糖質つまりグルコースは解糖系によりATPを作った後、
ピルビン酸もしくは乳酸になります。

酸はアセチルCoAに変わり、
クエン酸回路の最期の物質のオキサロ酸と水によりクエン酸を生成します。

生成されたクエン酸はいろんな物質に変化して最終的にオキサロ酸になり、
またサイクルされます。

代謝の回路はいくつかあるが、難しいので省きます。
知りたい方はリンクの分子生物学のページを参考にしてみてください。

次に脂肪代謝とクエン酸回路の関係について述べます。
脂肪は中性脂肪として蓄えられていますが、リパーゼによって加水分解され、
脂肪酸になります。

この脂肪酸がβ酸化というものでアセチルCoAになり、
クエン酸回路で二酸化炭素と水に変えられます。

β酸化を含めて、脂肪酸が体内で利用される場合には、
脂肪酸は高エネルギーをもつアシルCoAに変換され、利用されます。

最期にアミノ酸(タンパク質)代謝とクエン酸回路について述べます。
一部のアミノ酸はアセチルCoAになってクエン酸回路に組み込まれます。
他のアミノ酸もクエン酸サイクルで生じる物質に変換されてクエン酸回路に組み込まれています。

例としてBCAAのロイシンはアセチルCoAに、
バリンはスクシニルCoAに、
イソロイシンはスクシニルCoAとアセチルCoA
になります。

クエン酸回路の概略図


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